抄録
虫様筋-骨間筋比較法(2L-INT法)は,簡便さと高い感度により手根管症候群診断検査として推奨されている。しかし,複合筋活動電位(CMAP)導出に用いられる第2虫様筋(2L)は手掌表面からは確認し難く,決定しやすい導出電極位置が求められる。今回我々は2L-INT法における導出電極位置の検討を行った。導出電極位置は第2指と第3指の間から手根部中央までの線上で中手骨頭の高さをa,母指球筋境界の高さをd,その間を3等分しそれぞれb,cとし,各電極位置における2L-CMAP,INT-CMAP各々の①潜時 ②CMAP振幅 ③CMAP立ち上がり値と④2L-INT潜時差(2L-INT値) ⑤検者間差を検討した。導出電極位置が中手骨頭の高さ及び母指球筋境界線上では振幅が低い例や立ち上がりが陽性になる例があり,また2L-INT値が延長する例もあるため偽陽性になる可能性があると推察され,導出部位としては適さないと考えられた。一方,第2指と第3指の間から手根部中央までの線上で手掌中央部付近は振幅が高く電極位置の違いによる2L-INT値の変動が少なかったため,導出部位に適していると考えられた。