医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
症例報告
消化管原発びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫に対する化学療法に伴う骨髄壊死部のClostridium haemolyticum感染の一例
松本 いつか松尾 龍志久保田 緑
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 64 巻 2 号 p. 186-190

詳細
抄録
今回,我々は骨髄壊死部からClostridium haemolyticumC. haemolyticum)を検出するというまれな症例を経験した。生前に骨髄壊死と診断された症例の報告は非常に少なく,また本菌は牛や馬などの家畜に対して細菌性血色素尿症を起こすことで知られている。症例は発熱と腰痛を主訴として当院を受診し,消化管原発びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DCBCL)およびBurkittリンパ腫疑いとの診断で化学療法を実施した。その後,小腸潰瘍および出血により小腸の部分切除を行った後の骨髄検査にて骨髄壊死が判明した。3回の培養では陰性だったが,4回目の培養にてClostridium sp.を検出した。当院で行っている嫌気性菌同定法ではC. tetaniの可能性も否定できなかったことからpenicilin G(PCG),破傷風トキソイド,テタノブリン投与の治療と並行し,菌の特定に苦慮したため他施設の協力を得て同定に至った。症例は抗菌薬の投与,骨髄洗浄後を継続した結果,増強していた腰痛が改善し,骨髄培養は陰性化した。菌の同定率を向上させるためには他法を利用し,判断材料となる生化学的性状を増やすことが効果的である。今後,嫌気性菌の同定に苦慮する場合に備えて,別法を検討する余地がある。
著者関連情報
© 2015 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top