医学検査
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透析患者のプロカルシトニン(PCT)基準値とその意義について
阿部 桃子長屋 聡美駒井 啓吾石川 勲中川 卓近澤 芳寛中澤 哲也
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2015 年 64 巻 3 号 p. 350-355

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抄録
透析患者を対象に細菌感染がない群である177例と,細菌感染がなくかつ急性炎症がない群である143例について,プロカルシトニン(PCT)の基準値を推定し,その意義を検討した。その結果,対数変換を行って得られたPCTの上限は前者で0.76 ng/mL後者では0.72 ng/mLであった。また,透析患者のPCTの中央値は透析前0.26 ng/mLで透析後では0.21 ng/mLに低下した。この結果を透析膜ごとに検証したところ,PCTの除去率はPS膜とPMMA膜で差がなく,Lixelle®併用で増大することが確認された。PCTと他の検査項目の関連性は,対数変換を施したPCT値の重回帰分析では,寄与率は低いものの年齢,β2マイクログロブリン(β2MG),C反応性蛋白(CRP),網状赤血球数が有意な説明変数として残った。これらの結果から,わが国の透析患者のPCTの基準値は,これまでの外国の報告に近く0.7 ng/mL以下として良いのではないかと考えられた。また,感染のない透析患者のPCT基準値が健常人より高いのは,透析膜による除去が不完全であることに加えて,透析患者では慢性微小炎症が続いているからという可能性が考えられた。
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© 2015 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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