抄録
可溶性フィブリン(SF)は凝固亢進状態を反映し,血栓症および血栓準備状態を推測する凝固系分子マーカーとして注目されている。我々はSFの深部静脈血栓症(DVT)の診断および治療効果判定における有用性について検討を行った。下肢静脈エコー実施前後1日以内に採取されたクエン酸血漿の残余検体53検体を対象にSFとD-dimerを測定,これらとエコー所見の関連性について検討した。その結果,D-dimerはDVTの陰性的中率が100%であり,除外診断に有用であった。一方,SFは新鮮血栓に対する陽性的中率が90%以上でありDVTの急性期を鋭敏に捉えていると考えられた。症例検討では血栓発見から再発,器質化までのSFとD-dimer値の推移を観察し,過凝固状態が改善されるとSFが速やかに低下することが確認され,治療効果判定におけるSFの臨床的有用性が示唆された。