医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
技術論文
尿中Cペプチド検査における安定化剤含有濃度の影響
村上 麻里子浅田 高至小澤 かざみ野上 毅初田 和由佐野 道孝
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 64 巻 5 号 p. 576-582

詳細
抄録

尿中Cペプチド(以下,尿CPR)検査は,インスリン産生量の間接的な測定法として用いられている。検査材料として24時間蓄尿を用いるが,酸性下で不安定であることや,細菌の増殖に伴う分解を受けるため,国立循環器病研究センターでは炭酸ナトリウム(Na2CO3)を主成分とした安定化剤を使用している。しかし,蓄尿量に対する安定化剤の含有濃度が測定値にどのような影響を及ぼすのかは明らかにされていない。そこで今回,安定化剤含有濃度や,保存温度,細菌の存在が測定値に影響を及ぼすか否かについて検討を行った。その結果,室温下で安定化剤1包あたり尿量が4,000 mLを超えると安定化剤含有濃度が低下し,細菌増殖によるCPRの分解により,尿CPR値が低下した。冷蔵保存下では安定化剤含有濃度が低い場合でも安定していた。また,安定化剤1包あたり尿量300 mL未満の場合でも尿CPR値は低下した。その原因として,pH及び塩濃度の影響を検討した結果,Na2CO3濃度が高い場合,pHよりも塩濃度の影響をより強く受けると考えられた。これらの結果より,検査前におよその蓄尿量を把握し,適切な安定化剤含有濃度を確保することが求められる。

著者関連情報
© 2015 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top