抄録
種々のセルブロック(CB)作製方法の短所を改良したパラフィン・寒天サンドイッチ法を考案し,フィブリンクロット法および,寒天法,アルギン酸ナトリウム法と比較した。検討方法として,7症例の体腔液の残余検体を用いて,3種類の分量の沈渣(10 μL,50 μL,100 μL)を使用し,各々4種類のCB標本を作製し,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を施行後,細胞数および染色性を比較した。その結果,各CB作製方法における細胞数の比較において,沈査量10 μLおよび50 μLでは,パラフィン・寒天サンドイッチ法および寒天法は,フィブリンクロット法と比較してそれぞれ有意に高値であった。沈査量100 μLでは,パラフィン・寒天サンドイッチ法は,フィブリンクロット法およびアルギン酸ナトリウム法と比較して細胞数がそれぞれ有意に高値であった。各CB作製方法における染色性(背景)の比較では,フィブリンクロット法およびアルギン酸ナトリウム法では背景の共染を認めたが,その他の方法では背景の共染は見られなかった。したがって我々が考案したパラフィン・寒天サンドイッチ法は他のCB標本作製方法よりも細胞回収に優れており,背景の共染もないため様々な目的に応用可能であると思われる。