医学検査
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症例報告
コリンエステラーゼ活性が極低値だった1症例の遺伝子解析
城尾 可奈荒川 裕也野口 依子岡崎 葉子佐藤 伊都子中町 祐司林 伸英河野 誠司
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2016 年 65 巻 1 号 p. 64-69

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抄録

コリンエステラーゼ(ChE)はコリンエステルをコリンと有機酸に分解する酵素で,アセチルコリンのみを加水分解するアセチルコリンエステラーゼ(AChE)とブチリルコリン等に作用しコリンと有機酸に分解するブチリルコリンエステラーゼ(BChE)の2種類がある。BChEは肝細胞で産生される蛋白で,肝臓の蛋白合成能の指標として肝機能検査に用いられているが,BChEのみ低値となる先天性BChE欠損症が報告されている。遺伝性BChE欠損症では手術時に使用される筋弛緩薬サクシニルコリンの分解が遅れて麻酔後長時間無呼吸を起こす危険性があり注意が必要である。今回我々はBChEが極低値な1症例を経験し,その遺伝子を解析した結果,エクソン2のコドン315でのアデニン(A)の挿入(S型)ホモ接合体を認めた。そのため,下流のコドン322にストップコドンが形成されることが判明した。また,エクソン4のコドン539での遺伝子置換ホモ接合体(K-variant)も認めた。

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© 2016 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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