抄録
中枢神経系感染症は大きく髄膜炎と脳炎に大別され,初期治療が患者の転帰に大きく影響するため,迅速かつ正確な診断が重要である。我々は同時スクリーニング検査のMultiplex PCR法(M-PCR法)とPCRラテラルフロー(PCR-LF法)法を用いて,髄液から8種類の細菌のS. pneumoniae,H. influenzae,N. meningitides,L. Monocytogenes,Group B Streptococcus,S. aureus(SA),Coagulase-negative staphylococci species(CoagNS),methicillin-resistant Staphylococcus aureusと7種類のウイルスのVZV,HSV-1,HSV-2,EBV,CMV,HHV-6,Enterovirusについて臨床的評価を検討した。その結果,M-PCR法とPCR-LF法を用いた123例の髄液から原因細菌が14例(11.4%),ウイルスが23例(18.7%)検出された。しかし,細菌培養が陰性のSAとCoagNSが5例認められ,偽陽性が起こる可能性があるために検査結果の解釈には注意を要する。M-PCR法とPCR-LF法は,専用のPCR装置を必要とせず,従来法と比べて検出率が高く,短時間で報告が可能なため,中枢神経系感染症の迅速診断に有用と考えられた。