抄録
目視で行われるHER2-FISH検査のシグナルカウントは,観察者によって結果に差が出る可能性がある。当院では自動カウント装置を採用しており,このシステムによる判定結果は,客観性や同一検体における再現性の面では,目視よりも優れていると考えられる。当院にて2014年4月から2015年3月においてHER2-FISH検査が行われた乳癌198例を対象とし,検体の採取法別(生検材料,手術材料),ホルマリン固定時間別(16~27時間,64~75時間,88~99時間),乳癌の組織型別(Papillotubular carcinoma, Solid-tubular carcinoma, Scirrhous carcinoma)の自動カウントの能否について検討した。全症例中,71.7%(142/198)で自動カウント可能であった。検体の採取法別では,手術材料(63.6%, 56/88)に比べて生検材料(78.2%, 86/110)の方が自動カウント率が有意に高かった。一方で,生検材料と手術材料ともに,ホルマリン固定時間別および乳癌の組織型別による自動カウント率に有意な差は認められなかった。自動カウント困難であった症例は,目視による判定は可能であった。今回の結果から,ホルマリン固定時間や乳癌の組織型の条件が異なる検体においても,画像解析装置により自動カウント可能であることが示唆された。