医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
技術論文
遊離グリセロール未消去による総グリセライド測定の検討―中性脂肪測定国際標準化を見据えた基礎検討―
山本 肇佐竹 奏一二本栁 洋志石幡 哲也折笠 ひろみ小熊 悠子高田 直樹齋藤 市弘
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 65 巻 2 号 p. 209-215

詳細
抄録
中性脂肪測定系は,本邦では遊離グリセロール(FG)消去法であるのに対し,国際的には総グリセライド定量(FG未消去法)が日常検査に採用されている。国際標準化の観点から総グリセライド定量への将来的な移行が議論されつつある。消去法は投与ヘパリンが血管内皮細胞由来のリポ蛋白リパーゼ(LPL)活性を惹起し,中性脂肪測定に影響を及ぼすことが明らかとなっている。我々は,FG消去法およびFG未消去法による中性脂肪測定とヘパリン投与の影響の検討を行った。健診受診者111例を対象とした2法の差より求められるFG推定量はトリオレイン換算で4.56 ± 3.48 mg/dLであった。次に2法における保存の影響を検討した。健診受診者15例を対象とした検討では,保存条件によらず2法とも経時変化を認めなかった。一方でヘパリン治療患者12例(のべ17検体)を対象とした検討では,FG消去法において24時間後に冷蔵(4℃)保存93.3 ± 7.1%,室温(25℃)保存69.4 ± 16.1%と経時的な減少を認めた。維持透析患者33例(低分子ヘパリン使用18例,ヘパリンNa使用15例)を対象とした検討では,透析前採血であってもFG消去法で室温保存では24時間後に有意な低下を認めた。同様の傾向は透析後採血でも認められた。一方で,FG未消去法では保存による経時的影響を認めなかった。FG未消去法はヘパリン惹起性LPL活性の影響を認めず,ヘパリン治療患者や維持透析患者の中性脂肪評価において有用であると考えられる。
著者関連情報
© 2016 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top