医学検査
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症例報告
尿沈渣が診断の端緒になった膀胱破裂の1例
松岡 拓也杉野 佳澄木下 史暁近藤 妙子中川 美弥田上 圭二神尾 多喜浩
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2018 年 67 巻 2 号 p. 249-253

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抄録

中皮細胞は体腔穿刺液ではしばしば認められるが,通常の尿沈渣で認めることはない。今回われわれは,尿沈渣で中皮細胞を検出したことが診断の端緒となった膀胱破裂の1例を経験したので報告する。症例は80代女性で,高K,高BUN,高CRE血症がみられ,既往歴からも末期腎不全が疑われた。尿検査で多量の蛋白尿を認めた。尿沈渣では赤血球や白血球,円柱などはごく少数であった。また,類円形の細胞が散在性または小集塊状に出現し,細胞のつなぎ目に窓形成(window formation)を認めた。核は単核からときに多核で,核小体を認めたが,核クロマチンの増量はみられなかった。以上の所見から中皮細胞を推定し,膀胱破裂を疑って報告した。その後腹水が著明に貯留し,血清BUNとCREもさらに上昇した。しかし,導尿で多量の尿が排泄され,貯留していた腹水が消失した。尿沈渣所見とこれらの患者イベントから,尿が腹腔内に流出していたと判断され,臨床的に膀胱破裂が想定された。神経因性膀胱により排尿しにくい状態であったのでバルーンカテーテルを留置したところ,数日後に腎機能の採血データが正常化した。尿沈渣で中皮細胞を検出したことからさらなる精密検査に至り,造影CTでは破裂部位を特定できなかったが,最終的に膀胱鏡で確認された。自験例は造影CTでは確認できない程度の膀胱破裂であり,尿沈渣が診断の端緒になった点で教訓的な症例といえる。

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© 2018 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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