医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
67 巻, 2 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
原著
  • 藤原 智子, 田村 万里子, 田中 史子, 中村 友里, 野口 悦伸, 末永 詩織, 室谷 里見, 高橋 徹
    原稿種別: 原著
    2018 年67 巻2 号 p. 153-157
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    当院では,バクテックTM FXシステムを用いて,好気用レズンボトル(好気レズン)と溶血タイプ嫌気用ボトル(嫌気lytic)と嫌気用レズンボトル(嫌気レズン)の3本を1セットとして血液培養検査を実施している。今回我々は,嫌気lyticと嫌気レズンの性能を評価するために,菌検出率や分離菌頻度,菌検出平均時間を比較検討した。対象は2012年4月から2年間に血液培養検査に提出された3,217検体中,2セット以上採取の2,435検体。菌陽性となった440検体のうち抗菌薬が投与されていなかった306検体においては,嫌気lyticが258検体(84.3%),嫌気レズンが236検体(77.1%)で陽性であり,嫌気lyticの菌検出率が有意に高かった。一方,抗菌薬投与のあった134検体においては,両ボトル間に菌検出率の差はなかった。嫌気lyticと嫌気レズンとの菌検出平均時間は,抗菌薬非投与のボトルから分離されたEscherichia coliではそれぞれ7.9時間,15.8時間(p < 0.0001),E. coli を除く腸内細菌では9.9時間,22.6時間(p < 0.0001)と嫌気lyticで有意に短かった。抗菌薬投与のある場合には差はなかった。今回の検討結果から,とくに抗菌薬投与がない症例の血液培養検査において,嫌気lyticを用いることは,菌検出率の向上や検出時間の短縮に有用であると考えられた。

  • 鈴木 周朔, 渡邉 二祐子, 眞野 容子, 古谷 信彦
    原稿種別: 原著
    2018 年67 巻2 号 p. 158-163
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    緑膿菌は,びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis; DPB)等の慢性気道感染症を増悪する主な原因菌である。マクロライド系薬の少量長期低療法によるDPB患者の生存率は,既存の治療法に比べ著しく上昇した。しかしマクロライド系薬は緑膿菌に対して抗菌活性を持たない。マクロライド系薬の作用解明のために様々な検討が行われた結果,緑膿菌の病原因子を抑制することが報告された。しかし,これらの研究は短期間マクロライド系薬を緑膿菌に曝露し評価している。本研究では,マクロライド系薬(エリスロマイシン,クラリスロマイシン)を2年間緑膿菌に継続曝露することによりマクロライド系薬少量長期療法をin vitroで再現し,緑膿菌の外毒素(トータルプロテアーゼ活性,エラスターゼ活性,ピオシアニン産生量),及びマクロライド系薬曝露後の緑膿菌上清の添加がA549細胞へ与える影響について検討を行った。緑膿菌の外毒素産生性,及びA549細胞に対する障害性は,マクロライド系薬の曝露期間延長に伴い抑制が確認された。マクロライド系薬少量長期療法は,経時的に外毒素の産生を抑制することで緑膿菌の病原性を低下させ,DPB等の臨床経過を変化させるのかもしれない。

  • 田中 伸久, 上田 正徳
    原稿種別: 原著
    2018 年67 巻2 号 p. 164-169
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    当院に入院した新生児を対象に,アンバウンドビリルビン(unbound bilirubin,以下UB)値を後方視的に調査した。2011年~2015年にUBが分析された新生児は1,926名で,分析値が複数の場合には頂値を児のUB値とした。UB値は0.40~0.59 μg/dLが最多(36.6%)で,0.60 μg/dL以上は22.2%(427名),0.80 μg/dL以上は3.9%(74名)であった。UB値の日齢分布では,生後3日目が最も多かった(25.6%)。また,出生体重から分けた4群間でUB値を比較したところ,出生体重が大きい群の方が,UB値は高い傾向が認められた。得られたデータをもとに,UB値と他の検査項目との関連を検討した。その結果,間接ビリルビンの総ビリルビンに占める割合が50%以上に限定した上で,総ビリルビン/血清アルブミン比との相関が最も高かった。当比を用い,光線療法の一基準であるUB値0.60 μg/dL以上および交換輸血の一基準であるUB値0.80 μg/dL以上のカットオフ値を求めた。それぞれのカットオフ値は,前者で3.5 mg/g(感度93.1%,特異度77.6%),後者で4.0 mg/g(感度87.8%,特異度73.0%)であった。

  • 大野 智子, 山岸 由佳, 山田 敦子, 坂梨 大輔, 宮﨑 成美, 小板 功, 三鴨 廣繁
    原稿種別: 原著
    2018 年67 巻2 号 p. 170-177
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    肺炎球菌の莢膜型を判定する検査法として簡便なスライド凝集法とワクチン型別判定まで可能なMultiplex PCR法がある。今回2008年12月から2016年9月の間に愛知医科大学病院の侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease; IPD)患者から分離された肺炎球菌59株を対象にスライド凝集法とMultiplex PCR法を用いた検討を行った。スライド凝集法を用いて莢膜型を決定した後,Multiplex PCR法を用いて型別することにより,Multiplex PCR法の労力の削減および手技の簡易化が可能であった。抗原因子6dが含有されていないスライド凝集法で非凝集であった場合にMultiplex PCR法で6A/6B/6C/6D型にバンドが認められた場合は,6C型と推定することが可能であった。Multiplex PCR法で分類不能な非ワクチン型である6C型をスライド凝集法とMultiplex PCR法を併用することで推定することが可能であり,今後のワクチン効果の評価や莢膜型の疫学集積に有用である可能性が示唆された。

技術論文
  • 立澤 美咲, 小島 朋子, 鈴木 みち代, 成川 千賀子, 渡邉 俊宏, 小林 竜一, 藤原 睦憲, 藤井 博昭
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻2 号 p. 178-183
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    当施設では約50%濃度のアルコールを含む保存液を添加した検体を日常的に取り扱っているが,血液成分を多く含んだまま保存液が添加された検体に遭遇することがある。通常,血液成分が多く含まれる液状の検体を遠心分離した場合,沈渣上部にBuffy coatと呼ばれる有核細胞層が肉眼的に観察され,この有核細胞層が細胞学的検査の対象となる。しかし,保存液が添加された検体は有核細胞層の形成が不明瞭で,肉眼的な観察が困難であった。そのため,偽陰性の結果となる恐れもあり,有効なサンプリングの確証を得る必要があると考えた。そこで,保存液を添加した検体の有効なサンプリング方法を明らかにすることを目的として,有核細胞層が不明瞭な沈渣15例を対象にセルブロックを作製し,沈渣の細胞分布を検証した。その結果,当施設で使用している保存液を添加した場合,白血球や腫瘍細胞などの有核細胞は沈渣の下部に分布しやすく,特に集塊を形成する悪性細胞は最下部に集まる傾向を認めた。したがって,保存液を添加した細胞診検体は,沈渣の下部からサンプリングすることが有効であることが明らかとなった。今回の検証では,約50%濃度のアルコールを含んだ保存液を使用したが,保存液には様々な種類があり,固定作用,溶血能なども理解して検体を取り扱うことが重要であると考える。

  • 三島 由祐子, 曽根 伸治, 岡崎 仁
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻2 号 p. 184-188
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    通常,輸血の実施においては患者の血液型を確定し,同型の輸血を実施するが,近年,救命救急のための緊急O型輸血が増え,O型輸血後の血液型検査で部分凝集(mixed field agglutination; mf)となり,判定に苦慮することがある。成熟した赤血球の比重は時間の経過とともに大きくなるため,輸血赤血球は遠心した検体の下層部に分布し,検体のサンプリング位置が部分凝集の検出に影響することが考えられた。そこで,2種類の自動血液型判定装置およびスライド法について,検出できる混入赤血球濃度,技量の差による判定の違い,混入赤血球の採血後日数とサンプリング位置,異型赤血球の混入を部分凝集として検出する再現性について検討した。いずれの方法でも2単位輸血相当(10%)以上の輸血で部分凝集が検出できた。しかしスライド法では輸血業務の経験が少ない場合や,採血後日数が経過している赤血球を混入した場合,部分凝集を判定できないことがあった。サンプリング位置の影響がありO型赤血球を5%混入した場合の再現性は73%だったが,一般的に,赤血球の下層からサンプリングする全自動血液型判定装置では,部分凝集を検出しやすいことがわかった。赤血球の分布に偏りがある場合はサンプリングの位置によって血液型検査の判定に乖離が生じる場合があり,予想しない反応が起こった際の再検査には,患者情報を収集し,原因をよく考慮したうえで,適切な検査方法,適切なサンプリングをこころがける必要がある。

  • 斎藤 篤, 岡田 健, 西浦 明彦, 岩上 みゆき, 松本 祐之
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻2 号 p. 189-195
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    免疫血清検査項目の外部精度評価調査では,試料のマトリックス効果の影響により機器,試薬間差の現状が充分には解明されていない。今回,試薬間差の要因分析と,調査試料の適正性の評価を目的として検討を行った。検討は日臨技精度管理調査で対象項目としている前立腺特異抗原(prostate specific antigen; PSA),フェリチン(ferritin),αフェトプロテイン(α-fetoprotein; AFP),癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen; CEA)を調査項目とし,機器メーカー4社を対象として検討を行った。試料はパネル血清30検体と,調査試料16検体を用いた。総平均値を基準としてパネル血清の測定値を回帰分析で評価した結果,PSA,フェリチン,AFPでは各法の測定値に比例系統を認めたが,解離する値は認めなかった。しかし,CEAでは各法での測定値が異なり一定の傾向を認めなかった。パネル血清での回帰分析により求めた95%信頼区間を基準として調査試料の反応性を評価した。その結果,プール血清より作製した試料が評価基準を満たし,外部精度評価調査試料として有用であると考えられた。

  • 斎藤 篤, 木下 敬一郎, 河野 久, 岡田 健, 西浦 明彦, 岩上 みゆき, 松本 祐之
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻2 号 p. 196-203
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    我々は,前立腺特異抗原(prostate specific antigen; PSA),フェリチン(ferritin),αフェトプロテイン(α-fetoprotein; AFP),癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen; CEA)を対象項目として外部精度評価調査試料の適正性の検討を行い,プール血清の有用性について第1報で報告した。今回,機器,試薬メーカー13社を対象として再検討を行った。異なる患者血清を用いて,PSA,フェリチン,AFPでは2系列,CEAでは4系列,5段階の希釈系列の調査試料を作製した。測定を行った結果,PSAでの測定値のCVは8.6~11.9%となったが乖離する値は認めなかった。フェリチンでのCVは13.5~19.5%となり,2機種で試料の由来による差を認めた。AFPでは1機種で1試料のみ乖離する値を認め,CVが10.6%となったが,他の試料でのCVは4.5~7.2%であった。CEAでは異なる臓器癌患者の血清より作製した試料を測定した結果,大腸癌患者由来の試料でのCVの平均は10.9%,乳癌患者由来の試料では19.9%となり,臓器癌の違いにより反応性に差を認めた。

  • 滝澤 旭, 佐々木 文雄, 大沢 伸孝, 奥田 舜治
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻2 号 p. 204-209
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    我々は簡易紫外線ランプ(ブラックライト)を用いた方法で12種類の尿中蛍光物質を検出,確認した。今回,ろ紙を使った蛍光スポットテスト及び薄層クロマトグラフィー(TLC)分離により,さらに12種類の蛍光物質を検出,確認した。今回使用したブラックライトの主励起波長は350 nm,370 nmであるが,300 nm以下の紫外線も放出しており,300 nm以下に励起波長を持つ蛍光物質の検出が可能であった。ろ紙を使った蛍光スポットテスト及びTLC分離により,アミノ酸(トリプトファン,ヒスチジン),フラビン化合物(FMN, FAD),芳香族アミノ酸代謝物(ゲンチジン酸,トリプタミン,セロトニン,5-ヒドロキシインドール酢酸,スカトール,インドール),ヘモグロビン代謝物(コプロポルフィリン,ウロビリン)など12種類の蛍光物質を尿中に検出,確認した。

  • 友田 美穂子, 高橋 ひろみ, 上東野 誉司美, 都築 京子, 海原 和己, 小松 京子, 三宅 一徳, 中山 耕之介
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻2 号 p. 210-216
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    脳脊髄液検査において詳細な細胞鑑別を行うためには,集細胞法による塗抹標本の作製が推奨されている。我々は汎用スウィング型遠心機を用いて,自動細胞収集装置と同様の塗抹標本作製を行う方法を考案し,その妥当性の検討を行った。その作製法はサクラファインテック社の標本作製用キットと汎用スウィング型遠心機を用い,さらに大型遠心機ではアダプターを併用して800 rpm,3分間遠心し標本を作製する方法である。検討方法は,白血球浮遊液を用いて本法とオートスメア法で集細胞塗抹標本を作製し,塗抹面の細胞数,細胞分画,崩壊細胞数を写真上で算定し比較した。その結果,本法で大型遠心機を用いた場合は塗抹細胞数が増加する傾向を認めたが,崩壊細胞数および単核球と多形核球の比率には有意差を認めなかった。同様の方法で白血球浮遊液の細胞数と分注量の変化による塗抹標本の評価を行ったところ,分注細胞数が1万~5万個の範囲で鏡検に最適な塗抹標本が得られた。また,実際の脳脊髄液検体でも良好な塗抹像が得られた。本法は専用装置を用いないため安価で手技も容易であり,迅速な標本作製を必要とする髄液塗抹標本に有用であると考えられる。

  • 前原 純, 秋田 豊和
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻2 号 p. 217-220
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    当院では現在,プロカルシトニン(procalcitonin;PCT)の測定にイムノクロマト法を用いているが,テストラインの色調の判定が3段階と煩雑で,個人差が生じやすくなっている一方,この判定を標準化することは困難と考えていた。また月検体数が100検体未満の当施設から考えると,専用の免疫分析装置を導入するにはコストがかかりすぎるため,断念していたのが現状である。今回,測定が簡便で,かつ定量測定ができるAQT90FLEXを検討する機会を得たため,基礎的検討を行った。結果は,同時再現性のCVは3.1~6.3%,日差再現性のCVは2.5~5.2%で,イムノクロマト法との一致率は88.0%であったが,不一致例は目視判定の個人差に依存するものと考えられた。また血液培養との一致率は75.0%で,PCT値が高いと血液培養の陽性率も高くなる傾向であった。AQT90FLEXによるPCT測定は,個人差の生じないかつ定量測定ができ,オンライン運用することも可能なため,入力間違いなどのヒューマンエラー防止も期待できる。また検査依頼件数が少ない施設でも,試薬の無駄がなく測定できることから,検査室の収益にも貢献できると考えられる。

  • 鳥居 洋祐, 大西 崇文, 長友 忠相, 佐藤 元, 中村 純子, 鳥居 良貴, 森井 英一, 廣田 誠一
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻2 号 p. 221-227
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    グロコット染色は一般に,銀液の温度や反応時間の設定が難しく,施行者間での染色性に差が生じやすい。特にメセナミン銀液を用いる従来法ではその傾向が強いことから,銀液の反応時間の許容範囲が大幅に広く,また塩化金液による菌体の染色性を調節することができるクロム酸アンモニア銀法を用いることで施行者間での相違が少なくなることが期待される。しかし,これまでには温熱下での銀液反応時間の設定や,真菌ごとの至適条件の検討は十分には行われていない。今回我々は,従来法とクロム酸アンモニア銀法における各種真菌での溶融器と温浴槽を用いた銀液の反応時間および塩化金液の反応時間を比較検討した。検討した真菌はアスペルギルス,クリプトコッカス,ニューモシスチス・イロベチーの3種類で,いずれの真菌でも溶融器を用いた場合に,良好な染色性を示す銀液の反応時間の幅が最も広いことが確認された。また,いずれの真菌においても塩化金液の反応時間を変えることで菌体の色の濃さが調節でき,いずれも1~5分で十分な染色が行えることが明らかになった。溶融器を用いたクロム酸アンモニア銀法によるグロコット染色は,塩化金液での染色時間を真菌ごとに調節することで,施行者間の差の少ない安定した結果が得られるものと考えられる。

  • 川端 直樹, 堀内 美里, 高島 和佳, 小野 早織, 東 正浩, 窪田 映里子, 安藤 徹
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻2 号 p. 228-232
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    近年,小児を中心にマクロライド耐性Mycoplasma pneumoniaeが増加しており,内科領域においてもその報告が増えている。当院小児科にてマイコプラズマ肺炎を疑い,ジーンキューブ マイコプラズマ・ニューモニエにて測定し得た患者を対象とし,イムノクロマト法との比較,マクロライド耐性遺伝子変異保有率およびマクロライド耐性遺伝子変異検出の臨床的効果について検討を行った。今回の検討ではイムノクロマト法の感度は14.7%と,判定結果に大きな差が認められた。また,マクロライド耐性遺伝子変異保有率は20.6%と既報よりも低く,地域差および施設機能差と考えられた。さらにマクロライド耐性遺伝子変異の有無を報告することが,抗菌薬の変更に繋がっており,結果の運用方法には今後更なる検討が必要と思われる。ジーンキューブ マイコプラズマ・ニューモニエはM. pneumoniae検出だけでなく,マクロライド耐性遺伝子変異の有無についても迅速に検出でき,M. pneumoniae感染症診断において有用と考えられた。

  • 土手内 靖, 森岡 薫乃, 大野 綾, 尾﨑 牧子, 西山 記子, 清家 康子, 西山 政孝
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻2 号 p. 233-237
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    ダラツムマブ(daratumumab; DARA)は多発性骨髄腫(multiple myeloma; MM)の治療のために開発されたCD38に対するIgG型ヒトモノクローナル抗体薬である。CD38は骨髄腫細胞だけでなく赤血球にも発現しているため,DARA投与患者において間接抗グロブリン試験(indirect antiglobulin test; IAT)が偽陽性となる問題がある。今回,DARAによると推測されるIAT陽性例を経験し,DARAのIATへの干渉期間,および赤血球のジチオトレイトール(dithiothreitol; DTT)処理によるDARA干渉の回避法を検討した。対象はDARAを使用したMM患者4例。赤血球のDTT処理は3~5%赤血球浮遊液100 μLをリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline; PBS)(pH 7.0)で4回洗浄し,0.2 mol/L DTT(pH 8.0)を400 μL加え,37℃30分加温,PBSで4回洗浄した。DARAのIATへの干渉期間はDARA投与開始3日目にはIAT陽性となり,調べ得た1例では投与終了後137日目に陰性となった。DARAによるIAT陽性反応は赤血球のDTT処理により陰性化した。赤血球のDTT処理はK以外の血液型抗原を失活させず,不規則抗体同定検査も可能であり,DARA使用患者の輸血検査に有用であると考えられた。

  • 近藤 崇, 淺沼 康一, 山田 暁, 山田 浩司, 盛合 亮介, 遠藤 明美, 升田 好樹, 髙橋 聡
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻2 号 p. 238-242
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    今回我々は,尿中NGAL測定試薬『ARCHITECT urine NGAL assay』の基礎的検討を行った。その結果,再現性と希釈直線性は良好であった。また,測定機器に搭載後,14週目まで測定値は安定していた。2SD法による検出限界は0.42 ng/mLと十分な感度を有していた。L(+)-アスコルビン酸,D(+)-グルコース,NaCl,尿素および溶血ヘモグロビンは,測定値に影響を及ぼさなかった。従来法であるELISA法との相関係数はr = 0.990と高く,回帰式もy = 0.855x + 13.025と両法は近似した測定値であった。以上より,本試薬は基本性能が良好で,日常検査に有用と考えられた。

症例報告
  • 藤村 裕美, 二本柳 伸, 小幡 進, 安達 譲, 棟方 伸一, 狩野 有作
    原稿種別: 症例報告
    2018 年67 巻2 号 p. 243-248
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    Mycobacterium abscessus complexによる慢性中耳炎の症例を経験したので報告する。患者は耳痛,耳漏を主訴とする72歳女性。前医でofloxacin(OFLX)耳科用液とgarenoxacin(GRNX)を処方されていたが,症状が改善せず当院紹介となった。来院時に採取した耳漏のグラム染色で難染性を示す陽性桿菌を認めたため,抗酸菌を疑い,チール・ネルゼン染色を実施した。その結果,抗酸菌をGaffky 4号認めた。さらに,5%ヒツジ血液寒天培地/チョコレート寒天培地とドリガルスキー改良型BTB寒天培地の培養48時間後に抗酸菌の発育を認めたため,迅速発育抗酸菌の可能性があることを主治医に報告した。培地上に発育した菌株は,DDH(DNA-DNA hybridization)法でM. abscessusと同定され,ブロスミックNTMを用いた薬剤感受性検査では,多くの薬剤が耐性,clarithromycin(CAM)は感性であった。本症例では,GRNXとCAMの併用療法により,1ヶ月後には症状は改善傾向を示した。その後,後者のみの内服治療に変更となり,耳漏は消失して伝音性難聴もほぼ改善した。本症例から,詳細なグラム染色標本の観察および48時間培養後の培地と臭気観察の重要性を再認識した。

  • 松岡 拓也, 杉野 佳澄, 木下 史暁, 近藤 妙子, 中川 美弥, 田上 圭二, 神尾 多喜浩
    原稿種別: 症例報告
    2018 年67 巻2 号 p. 249-253
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    中皮細胞は体腔穿刺液ではしばしば認められるが,通常の尿沈渣で認めることはない。今回われわれは,尿沈渣で中皮細胞を検出したことが診断の端緒となった膀胱破裂の1例を経験したので報告する。症例は80代女性で,高K,高BUN,高CRE血症がみられ,既往歴からも末期腎不全が疑われた。尿検査で多量の蛋白尿を認めた。尿沈渣では赤血球や白血球,円柱などはごく少数であった。また,類円形の細胞が散在性または小集塊状に出現し,細胞のつなぎ目に窓形成(window formation)を認めた。核は単核からときに多核で,核小体を認めたが,核クロマチンの増量はみられなかった。以上の所見から中皮細胞を推定し,膀胱破裂を疑って報告した。その後腹水が著明に貯留し,血清BUNとCREもさらに上昇した。しかし,導尿で多量の尿が排泄され,貯留していた腹水が消失した。尿沈渣所見とこれらの患者イベントから,尿が腹腔内に流出していたと判断され,臨床的に膀胱破裂が想定された。神経因性膀胱により排尿しにくい状態であったのでバルーンカテーテルを留置したところ,数日後に腎機能の採血データが正常化した。尿沈渣で中皮細胞を検出したことからさらなる精密検査に至り,造影CTでは破裂部位を特定できなかったが,最終的に膀胱鏡で確認された。自験例は造影CTでは確認できない程度の膀胱破裂であり,尿沈渣が診断の端緒になった点で教訓的な症例といえる。

  • 宇納 英幸, 仁木 裕子, 山田 依里, 河村 佳江, 田中 佳, 森田 展代, 飯沼 由嗣
    原稿種別: 症例報告
    2018 年67 巻2 号 p. 254-258
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    尿クレアチニン(Cr)は様々な尿検査測定値の補正や腎機能評価に用いられており,検査の依頼頻度,臨床的有用性の高い検査項目の1つである。今回,我々は60代男性の膀胱癌患者において尿Cr異常低値の症例を経験した。尿Cr異常低値の原因について検討した結果,尿中から分離された細菌の中でPrebotella loescheiiおよび,Anaerococcus tetradiusがCrを分解することが示された。さらに採取直後の随時尿でも尿Crが極めて低値であったことから,患者の膀胱内で既にCrが分解されていた可能性が示唆された。また,2菌種とも106~107/μLの菌量でCrの低下を示していたことから,尿中に細菌がみられる患者では,尿Cr値の潜在的な負誤差に注意をする必要がある。

  • 大田 夏恵, 永江 隆幸, 浅香 淳, 福島 良明
    原稿種別: 症例報告
    2018 年67 巻2 号 p. 259-264
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    ファブリー病は加水分解酵素α-ガラクトシダーゼA(α-galactosidase A; α-GAL)の活性が欠損または低下しているため,グロボトリアオシルセラミド(globotriaosylceramide; GL-3,Gb3)(別名セラミドトリヘキソシド(ceramide trihexoside; CTH))などの糖脂質が血管内皮細胞や心筋細胞をはじめとする様々な細胞に蓄積する糖脂質代謝異常症で,指定難病に登録されているライソゾーム病の1つである。ファブリー病はX連鎖性遺伝性疾患であり,X染色体を1つしか持たない男性に多く発症する。男性の場合,小児期から四肢末端の疼痛・被角血管腫・発汗低下などがみられる古典型と,成人期以降に心臓または腎臓を中心に症状が現れる遅発型に分類される。古典型には酵素活性がほとんど認められないのに対し,遅発型はわずかに認められると言われている。女性では無症状から重い症状まであり多様性を呈す。ファブリー病の尿沈渣中にはマルベリー小体(渦巻状の脂肪成分)やマルベリー細胞(上皮細胞にマルベリー小体が蓄積したもの)が出現し,両成分の表面構造はいずれも均一で渦巻状~円状の層を示す脂肪の粒が特徴的であると言われている。今回著者らは,渦巻状構造を呈さないマルベリー小体が出現した2症例を経験したので報告する。

  • 星 紫織, 松本 竹久, 植村 彰, 有吉 英二, 田中 美穗
    原稿種別: 症例報告
    2018 年67 巻2 号 p. 265-269
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/27
    ジャーナル フリー HTML

    単純性膀胱炎患者の尿培養からCO2依存性Escherichia coliを分離した症例を経験した。塗抹検査で多数の腸内細菌様形態のGram陰性桿菌と白血球によるGram陰性桿菌の貪食像が観察されたが,好気培養で菌の発育は観察されず,追加培養として5% CO2培養と嫌気培養を行ったところ,105 CFU/mLのGram陰性桿菌のコロニーが観察された。MicroScan Neg IDパネルを用いた全自動同定感受性装置MicroScan WalkAway96SI(ベックマン・コールタージャパン)による同定試験を実施したところ,菌の発育不良のため結果が得られなかったが,同時に行ったrapid ID 32 E(シスメックスビオメリュー)での同定結果はE. coli(同定確率99.9%)となった。その後,5% CO2ガス環境下で生化学的性状試験や質量分析計MALDI Biotyper,16S rRNA遺伝子配列を用いた同定検査結果も併せて,培養環境中にCO2ガスを必要とするE. coliであることが判明した。患者の治療経過は経口抗菌薬cefdinirの服用で症状が改善されたが,その後再び症状が出現し,経口抗菌薬fosfomycinの服用で軽快した。

訂正
feedback
Top