免疫比濁法(turbidimetric immunoassay;TIA法)による免疫グロブリン測定においてエラーコードが付かず測定結果が偽低値であったIgM-κ型M蛋白血症例を経験した。血清蛋白分画で明確なMピークがあり,免疫固定法でIgM型M蛋白と同定されたにもかかわらず,IgM定量値が400 mg/dL程度であった。整合性を確認したところ,原倍で420 mg/dLに対し,5倍で1,890 mg/dL,10倍で2,180 mg/dL,20倍で2,660 mg/dLであった。反応曲線を確認すると原倍から10倍希釈まで第一反応において濁りの影響があることが判明した。さらにIgGやIgAも影響を受けて偽低値であった。ネフェロメトリーでは問題なく測定できた。希釈直線性の検討でも,患者検体では全希釈系列でエラーコードが付かなかった。我々は,以前にも発生機序は異なるが同様にエラーコードが付かず誤報告されたIgM-λ型M蛋白の偽低値例を報告しており,今回2例目を経験したことから,TIA法ではIgM型M蛋白の偽低値を頻繁に見逃している可能性が示唆された。検査室側では,とくにIgM型M蛋白の定量では,反応曲線のチェックやA/G比の確認等を行い,検査システム側では,再検ロジックの構築,測定試薬の改良および異常反応検出機構の設置が望まれる。