2020 年 69 巻 1 号 p. 125-129
今回我々は,非常に稀な疾患である慢性NK細胞増加症(chronic lymphoproliferative disorders of NK cells; CLPD-NK)の1例を経験したので報告する。症例は80代,男性。息切れ,咳嗽,胸水貯留を認め,精査加療目的に当院入院。入院時の末梢血液検査では,WBCがやや高値であった。白血球分画では,リンパ球数増加を認め,リンパ球の91.0%が大顆粒リンパ球(large granular lymphocyte; LGL)であった。末梢血の細胞表面抗原解析では,CD3陰性,CD56陽性とNK細胞の発現パターンを呈した。初診時の末梢血LGL数は7,024/μL,初診時から6ヶ月後のLGL数は3,365/μLであり,NK細胞増加症の定義を満たしていた。本症例とT細胞大顆粒リンパ球性白血病T-LGLL(T-cell large granular lymphocytic leukemia; T-LGLL)症例のLGL長径を比較したところ,T-LGLL症例より本症例のLGL長径が有意に大きかった(p < 0.01)。しかし,両者のLGL長径の差は約1 μmであり,形態学的に鑑別することは困難である。CLPD-NKを見逃さないためには,リンパ球数の増加を認めた際に,鏡検により形態学的に特徴的なLGLを確認し,フローサイトメトリーによりLGLの細胞表面マーカーの解析を行うことが重要である。