北関東医学
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原著
群馬県農村部における抑うつ状態とライフスタイル要因との関連
- 共分散構造分析を用いた「こころのチェックシート」の解析 -
村山 侑里山本 林子山口 実穂山崎 千穂中澤 港小山 洋
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2012 年 62 巻 1 号 p. 41-51

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抄録
【背景・目的】 日本の農村部においては自殺が大きな社会問題となっており, それに関連する抑うつ状態への対応やうつ予防が重要な健康問題となっている. 原因となるライフスタイル要因は性別や年齢層によって大きく異なるものと考えられ, 本研究では, 性・年齢別に抑うつ状態とライフスタイル要因との関連について解析を行い, 性・年齢別の関連構造の特異性および共通性を明らかにすることを目的とした. 【対象と方法】 群馬県K村の住民健康診断受診者 (男性144名, 女性217名, 平均年齢58.5歳) を対象に質問紙による調査をおこなった. 質問紙は健康チェック票THIからの抑うつ尺度10項目 (THI-D) を含む自記式質問票「こころのチェックシート」を用いた. 男女それぞれを60歳未満・60歳以上に層化し, 層ごとにライフスタイル要因の変数と抑うつ尺度の関連性を順位相関係数によって検討した後, Rの拡張パッケージsemを用いて共分散構造分析を行った. 【結 果】 抑うつ尺度と関連性が認められたライフスタイル要因は, 仕事上の心配, 対人関係の悩み, 幸福感, 同居人数, 通院, 疾病苦, 親戚友人数, 睡眠, 飲酒, 運動であった. 性・年齢層ごとの4群別々に共分散構造分析を行い, 各群とも十分な説明力をもつモデルが得られた. 全ての群で共通して抑うつ状態と関連が認められた因子は「対人関係の悩み」と「仕事上の心配」であった. これらの要因は潜在因子「社会的機能不全」を介して抑うつ尺度の高さに影響を与えていた. 「社会的機能不全」と抑うつ尺度の高さは正の相関関係にあることが示された. 各群の特徴的な潜在因子および関連構造としては, 1) 60歳未満の男性についてのモデルでは飲酒頻度や適切な睡眠時間が潜在因子「生活上のゆとり」を介して抑うつ尺度の低さと関連, 2) 60歳以上の男性では非独居であることと親戚友人数の多さが潜在因子「対人良好性」を介して抑うつ尺度の低さに関連, 3) 60歳未満の女性では「通院」していることと「疾病苦」を有することが潜在因子「有病状態」を介して抑うつ尺度と関連, 4) 60歳以上の女性では「親戚友人数」の少なさと「疾病苦」の高さが潜在因子「内向性」を介して抑うつ尺度と正の関連を有することが示された. 【結 語】 抑うつ状態に共通して関連するのは対人関係の悩み・仕事上の心配であるが, 関連するライフスタイル要因の構造は性・年齢群によって異なることが示された. 抑うつ状態に対する支援やうつ病予防対策は性・年齢ごとに適した対応が求められると考えられた.
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© 2012 北関東医学会
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