2021 年 70 巻 3 号 p. 465-474
5類感染症に分類されるEntamoeba histolyticaは,非病原種であるE. dispar,E. moshkovskiiと鑑別する必要があるが,顕微鏡検査では難しい。しかし,PCR法はE. histolyticaを特異的・高感度に検出することが可能で,その技術は従来のPCRからリアルタイムPCRに推移している。今回,我々はリアルタイムPCRを更に展開させたPCR-HRM解析を用いてEntamoeba complexの高感度検出を検討し,今まで数多く報告されているマルチプレックスPCR,アレル特異的PCR,アレル特異的リアルタイムPCR,2段階リアルタイムPCRと比較した。その結果,増幅産物のサイズが大きくなるとPCRの増幅効率が低下するため,マルチプレックスPCRの検出感度は他法より劣った。一方,増幅産物のサイズを小さくすると,何れのPCR法でも十分な検出感度が得られ,コンタミネーションの危険性を冒してまで2段階PCRを行う必要は無かった。PCR-HRM解析とリアルタイムPCRは,リアルタイムPCR装置を使用するため反応チューブの蓋を開ける必要が無い。そのため,コンタミネーションの危険性が非常に低く,結果報告時間も短縮できた。更にPCR-HRM解析は1本のチューブで検査できるためランニングコストが安価で,Entamoeba complex 3種以外の種も検出できる優れた方法である。