医学検査
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原著
  • 山口 直則, 松居 由香, 岩﨑 雅, 井伊 庸弘, 岸本 光夫
    原稿種別: 原著
    2021 年 70 巻 3 号 p. 385-393
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    CD10の発現は一部の固形癌において予後関連因子や危険因子として位置付けられているが,原発性肺癌に関する報告は少ない。今回,原発性肺癌手術例388腫瘍におけるCD10発現の有無,割合,パターンを検討し,患者の予後予測が可能であるか検証した。免疫組織化学染色の結果,CD10は全体の31%に陽性を示し,組織型別陽性率は腺癌が23%,扁平上皮癌が48%,その他の肺癌が69%で順に増す傾向であった。主たる発現パターンは腺癌がApical Membrane,扁平上皮癌とその他の肺癌では Membrane & Cytoplasm を示した。また患者の年齢,性別,術式,組織型分類,T因子,N因子,病理組織学的分化度分類,胸膜浸潤,リンパ管浸潤,血管浸潤,EGFR遺伝子変異の11因子について各因子をロジスティック回帰分析で単変量・多変量解析し,累積生存率と比較検討したところ,単変量解析では年齢を除く,10因子が関連因子であり,多変量解析ではN因子,胸膜浸潤,EGFR遺伝子変異の3因子が独立した関連因子であった。さらにCD10陽性群では有意に5年生存率が不良であったことからCD10の発現は原発性肺癌の予後関連因子や危険因子と考えられ,予後予測を含めた患者の選別がある程度可能であった。今後は利便性や有用性の高い一つのバイオマーカーとして利用することが期待できると考えられた。

  • 伊藤 衣里子, 村上 和代, 池口 美代子, 長村 陽子, 北岡 拓也, 郡司 昌治, 湯浅 典博
    原稿種別: 原著
    2021 年 70 巻 3 号 p. 394-402
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    末梢血幹細胞採取において幹細胞数を知ることは幹細胞の採取時期および採取量を決定するために重要である。一般に幹細胞数はCD34陽性細胞数で評価される。本研究では97例167検体を対象として,自動血球分析装置XN3000で測定される造血前駆細胞(hematopoietic progenitor cell; HPC)数と,フローサイトメーターで測定されるCD34陽性細胞数の関連を検討し,その特徴を明らかにした。HPC数(X)とCD34陽性細胞数(Y)にはy = 0.597x + 5.625,ρ = 0.745,p < 0.001と良好な相関があった。CD34陽性細胞数 ≥ 20/μLを予測するHPC数の最適カットオフ値は23/μLで,感度69%,特異度93%,陽性的中率93%,陰性的中率70%であった。形質細胞性腫瘍(multiple myeloma; MM)患者以外,年齢40歳未満,HPC 50/μL未満の検体の場合,カットオフ値を23/μLとするとCD34陽性細胞数 ≥ 20/μLを良好に予測できた。しかし,MM患者,年齢40歳以上,HPC数50/μL以上の検体はHPC数とCD34陽性細胞数とに乖離を生じることが多く,HPC数によるCD34陽性細胞数の推定にあたって注意が必要である。

  • 嘉瀬 文孝, 飯田 泰明, 太田 智裕, 青山 寿美香, 原口 摩耶, 河合 由佳, 越後 柚子, 星 晴彦
    原稿種別: 原著
    2021 年 70 巻 3 号 p. 403-409
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    目的:現在,国内において数多くの新型コロナウイルス用検出試薬が使用されているが,その試薬の評価に関する報告は少ない。今回我々は,新型コロナウイルス用検出試薬であるミュータスワコーCOVID-19とSARS-CoV-2 Direct Detection RT-qPCR Kitの2試薬において比較を行った。方法:対象検体はCOVID-19と診断された入院患者のうち,同時に2本の鼻咽頭ぬぐい液が採取されたものを対象とした。比較方法は①両法における結果の一致率 ②陽性一致群と結果不一致群における比較項目の検討 ③両法で得られたCt値の比較を行いミュータスワコーCOVID-19の評価を行った。結果:①結果の一致率において,陽性一致率は58%(15/26),陰性一致率は100%(13/13),全体一致率は72%(28/39)であった ②陽性一致群と結果不一致群の比較項目の検討では,検体採取時の患者病日に有意差(p = 0.002)が認められた ③Ct値の比較では,Ct値の差の中央値は6.5であり,ミュータスワコーCOVID-19のCt値が有意に高く測定されることが示唆された(p < 0.001)。結論:ミュータスワコーCOVID-19はSARS-CoV-2 Direct Detection RT-qPCR Kitよりも感度が低いことが示唆された。そのため,スクリーニング検査における偽陰性に注意しなければいけない。また,ミュータスワコーCOVID-19で得られたCt値を参考にウイルスの感染力の推測を行う際は,他法よりも高く測定される可能性があることに留意する必要がある。

技術論文
  • 谷 侑美, 垣本 信幸, 瀧口 良重, 小川 智寿美, 橋本 安貴子, 森井 眞治, 大石 博晃, 赤水 尚史
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 3 号 p. 410-415
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    肺高血圧症(pulmonary hypertension; PH)は先天性心疾患の予後を左右する重要な合併症の1つで,PHを伴う心室中隔欠損症(ventricular septal defect; VSD)の患児では早期の修復手術が求められる。PHでは標準12誘導心電図検査において右室肥大所見を認めると言われている。そこで今回導出18誘導心電図を応用しPHを簡便に予測できないかを検討した。2013年5月~2018年5月に当院を受診したVSD患児53例を対象とし,心臓カテーテル検査または経胸壁心エコー検査結果から対象をPH(+)群36例とPH(−)群17例に分類した。2群間において標準12誘導心電図のV1,V2誘導と導出右胸部誘導syn-V3R,syn-V4Rを比較したところ,PH(+)群はPH(−)群に比べsyn-V3R,syn-V4RのR波振幅,T波振幅において有意に高値であった。またガイドラインの右室肥大判定基準に基づき,標準12誘導心電図のみで判定する場合(V1, V6)と導出右胸部誘導を加えて判定する場合(V1, V6, syn-V3R, syn-V4R)の2者で右室肥大を判定した結果,右室肥大ありの時にPH(+)となる感度はそれぞれ61%,67%であった。さらに“syn-V4RのR波もしくはT波が陽性”の右室肥大に特徴的な心電図所見を示す場合,PH(+)となる感度は89%であった。これらから導出18誘導心電図を用い,より簡便にPHを予測できることが明らかになった。

  • 松重 貴大
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 3 号 p. 416-422
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    病理組織材料の固定法がホルマリン液の単独使用となった現在,膠原線維を選択的に染め出すために重クロム酸カリウムやブアン液による媒染処理を必要とする。しかし,これらの薬剤は毒性の観点から見直しが迫られている。そこで今回Gomori’s one-step trichrome染色における代替媒染剤の有用性について検討した。代替媒染剤として,ブアン液,飽和ピクリン酸水溶液,脱灰液A(プランク・リュクロ処方),0.5%過マンガン酸カリウム水溶液を用い,25℃ 30分,60℃ 60分の処理条件で原法に従って染色を行い,顕微鏡下での視覚的評価とRGB/Br(Red-Green-Blue/Brightness)解析を行った。60℃ 60分の処理条件で飽和ピクリン酸水溶液を用いた染色では重クロム酸を含む市販媒染剤や脱灰液Aと比較してB/Br値が有意に低く細胞質の青色の共染を抑制し,選択的に赤く染め,膠原線維の青色とのコントラストがより良好となった。また,0.5%過マンガン酸カリウム水溶液では染色不良が見られた。このことからピクリン酸の代替媒染剤としての有用性が示された。ピクリン酸はクロム酸やホルムアルデヒドのような発がん性は確認されておらず,飽和ピクリン酸水溶液を代替媒染剤として使用してもGomori’s one-step trichrome染色原法に匹敵する効果が得られることが証明された。

  • 海原 弘貴, 大熨 ゆうか, 井上 恭太郎, 山下 佑希子, 黒瀬 多規子, 茅田 知子, 大森 章恵, 藤井 寛之
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 3 号 p. 423-432
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    抗酸菌症診療において,結核菌群と非結核性抗酸菌群の迅速かつ正確な鑑別の方法として,遺伝子検査が利用されている。簡便で迅速化を図る目的に,ミュータスワコーg1(和光純薬工業,PCR-CE法),TRCReady-80(東ソー,TRC法),GENECUBE(東洋紡,Qprobe法)と,当院で実施しているコバスTaqMan48(ロシュ・ダイアグノスティックス,TaqMan法)および培養法で比較検討を行った。前処理後の臨床検体94検体での一致率の算出,Mycobacterium aviumおよびM. intracelullareの菌株を用いて希釈系列を作製し,検出感度を算出した。TaqMan法との陽性/陰性一致率は,PCR-CE法70.8%/98.6%,TRC法95.8%/95.7%,Qprobe法87.5%/100.0%であった。培養法との陽性/陰性一致率は,PCR-CE法61.5%/98.5%,TRC法88.5%/97.1%,Qprobe法76.9%/100.0%であった。最小検出感度は,PCR-CE法2.0 × 10~1.1 × 103 CFU/mL,TRC法およびQprobe法2.0 × 10~1.1 × 102 CFU/mLであった。以上より,PCR-CE法,TRC法およびQprobe法は,簡便かつ短時間で結果が得られるため,肺MAC症の迅速診断に有用であり,各施設の需要やスタイルに合った遺伝子検出装置を選択することが重要であると考えられた。

  • 山下 和也, 久場 樹, 坂口 忍, 吉田 功, 村雲 芳樹, 三枝 信
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 3 号 p. 433-442
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    本邦における病理検査の固定液の取り扱いに関する医療事故は,8年間で54件発生している。主なものは,ミントオイル,生理食塩水,アルコールなどの薬剤とホルマリンの誤用によるものや,未開封と開封済みを一目で差別化できる仕組みが無いため,既に検体を入れた固定液に別の患者の検体を混同してしまうというもので,何れも大きな医療事故の原因となり得る。そこで,これらの医療事故防止対策として着色ホルマリンによるホルマリンの特別化と,検体混同を防ぐための固定容器・蓋の封緘方法を試作検討し,当院における4年間の実務検証を行った。その結果,実用的なホルマリン固定液は,0.01%以下のブロモチモールブルー又はフェノールレッドを単独あるいは混合して使用することが有用であることが判明した。この色素は長期間安定で変色や退色が無く,組織細胞傷害性も低い色素であり,色調を利用してホルマリンであることを気づかせる一助となる。加えて,固定容器の蓋と容器にかけて「剥離後文字が浮き出る封緘テープ」を貼布する仕組みは,未使用と使用済みの差別化と確認が容易となる。「着色」と「封緘」を備えた試作品は,4年間に約14万件の検体で使用され,この間のホルマリン固定液に関する医療事故の発生は見られず,未対策の時期と比較して明らかな抑制効果が得られた。従って,本提案は,ホルマリン固定液の取り扱いに由来した医療事故防止の一助となる新たな手段となる。

  • 秋田 有香, 町田 邦光, 中村 一人, 坪井 五三美
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 3 号 p. 443-447
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    我々は,酵素免疫測定法を基本原理とした「Entamoeba histolytica IgG-ELISA」(以下,本試薬)を用いて,血清中赤痢アメーバ抗体価の精度,検出限界,希釈直線性,基準値の検証と対照試薬(蛍光色素標識抗体を用いた抗体測定法)との相関性試験を実施した。同時再現性は3.5%以内,日差再現性は7.5%以内と良好であった。抗体価10 GWUまではほぼ直線性を示したが,10 GWU以上では曲線となったものの28 GWU前後まで抗体過剰による抗体価の低下は認められなかった。本試薬は,対照試薬に対して陽性一致率は42.9%,陰性一致率は100.0%,判定一致率は69.2%であった。本試薬が陰性で対象試薬が陽性の14検体は,すべて対象試薬で陽性と判定される最小希釈倍数100倍であった。本試薬は,対照試薬に対して良好な相関性が認められた。

  • 小川 綾乃, 浅井 さとみ, 宮澤 美紀, 髙梨 昇, 下野 浩一, 梅澤 和夫, 宮地 勇人
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 3 号 p. 448-455
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    診療のために多用されている超音波検査は,感染対策を怠ればアウトブレイクの原因につながる可能性があり,超音波検査用ゼリー(以下,ゼリー)の衛生管理は院内感染防止のために重要である。本研究は超音波検査実施におけるゼリーとゼリーウォーマ(以下,ウォーマ)の衛生的使用状況を明らかにするため,細菌学的な環境調査を行い,結果に基づく衛生的使用方法について検討した。ゼリーボトル使用開始から終了まで,始業時と終業時にゼリーおよびウォーマから培養検査を行った。その結果,検出された細菌はいずれも環境中またはヒトの常在菌であり,著明な細菌の増殖は確認されず,衛生的な運用がなされていると考えられた。しかし,易感染患者の検査の実施ではより衛生的に使用することが望まれる。リスク低減のため検査開始時には汚染の危険性のあるボトル先端部のゼリーを破棄することや,終業時にはウォーマを清掃・消毒することも有用であると考えられた。

  • 菱木 光太郎, 秋山 優, 軽部 紀代美, 本間 隆志, 保延 美紀子, 宮後 とも子, 池田 勇一, 海渡 健
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 3 号 p. 456-464
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    今回我々は2019年にアークレイ社で開発された未染色画像解析法を原理とする尿沈渣分析装置AUTION EYE AI-4510について性能評価を行ったので報告する。1,369検体を対象として検討した結果,併行精度,室内再現精度をはじめとする基礎性能は良好であった。鏡検法との相関では,基本的な5項目の感度,特異度はそれぞれ赤血球69.0%,95.1%,白血球60.9%,99.4%,扁平上皮細胞34.1%,99.6%,硝子円柱52.6%,77.4%,細菌48.5%,93.8%であった。鏡検法との乖離理由として,類似した形状における判別が困難であることや特殊な形状の認識が不足していることが考えられ,院内導入までに2回の改良を重ねた結果,基本的な5項目の解析能は向上し鏡検法との相関も改善された。尿沈渣分析装置には業務効率の向上,検査時間の短縮,正確な尿沈渣成分の解析などが求められているが,本機器は鏡検法と比較しても遜色のない基本的性能を有しており,日常検査への導入が可能な機器であると考えられた。

  • 戸田 圭三, 中島 和希
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 3 号 p. 465-474
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    5類感染症に分類されるEntamoeba histolyticaは,非病原種であるE. disparE. moshkovskiiと鑑別する必要があるが,顕微鏡検査では難しい。しかし,PCR法はE. histolyticaを特異的・高感度に検出することが可能で,その技術は従来のPCRからリアルタイムPCRに推移している。今回,我々はリアルタイムPCRを更に展開させたPCR-HRM解析を用いてEntamoeba complexの高感度検出を検討し,今まで数多く報告されているマルチプレックスPCR,アレル特異的PCR,アレル特異的リアルタイムPCR,2段階リアルタイムPCRと比較した。その結果,増幅産物のサイズが大きくなるとPCRの増幅効率が低下するため,マルチプレックスPCRの検出感度は他法より劣った。一方,増幅産物のサイズを小さくすると,何れのPCR法でも十分な検出感度が得られ,コンタミネーションの危険性を冒してまで2段階PCRを行う必要は無かった。PCR-HRM解析とリアルタイムPCRは,リアルタイムPCR装置を使用するため反応チューブの蓋を開ける必要が無い。そのため,コンタミネーションの危険性が非常に低く,結果報告時間も短縮できた。更にPCR-HRM解析は1本のチューブで検査できるためランニングコストが安価で,Entamoeba complex 3種以外の種も検出できる優れた方法である。

  • 福満 千容, 安倍 秀幸, 貞嶋 栄司, 高瀬 頼妃呼, 篠田 由佳子, 河原 明彦, 内藤 嘉紀, 秋葉 純
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 3 号 p. 475-481
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    病理検査室における仕事量の増加に伴い,病理技師の負担軽減と医療安全の観点から,我々は2015年より全自動連続薄切装置を導入した。導入当時より,我々は全自動連続薄切装置における薄切切片の質の維持のためにブロック作製法を改良し続けてきた。今回我々は,全自動連続薄切装置の運用を報告すると共に,異なる組織における薄切切片の質の向上について評価した。対象は2017年1月から2018年6月までの間に提出された切除組織43,488ブロックである。初めにパラフィンブロックは技師による荒削りを行い,硬い組織を取り除いた。その後,パラフィンブロックは5ミクロンで自動薄切され,さまざまな臓器の薄切切片の質を評価した。切除組織43,488ブロックにおいて,全自動連続薄切装置で薄切したブロック数は,28,876ブロックであり,これらの薄切成功率は91.9%(26,541/28,876)を示した。特に成功率が高かった臓器は,卵巣・付属器と子宮であり,薄切切片の質は導入時に比べ明らかに改善した(p < 0.001)。当院における全自動連続薄切装置の薄切成功率は高く,病理技師の負担軽減に役立つ。自動薄切装置に適したパラフィンブロックの改良が,薄切切片の質の維持に重要である。

  • 鳴海 菜月, 近藤 崇, 盛合 亮介, 遠藤 明美, 淺沼 康一, 髙橋 聡
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 3 号 p. 482-488
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    今回我々は,新たに開発された「HISCLプレセプシン試薬」の基本性能評価を行った。プレセプシンは,「HISCLEプレセプシン試薬」を用い,「HISCLE-5000」で測定した。対照試薬として,「ステイシアCLEIA Presepsin」を使用した。対象は,当院の既存試料を用いた。再現性,試薬安定性,希釈直線性,検出限界,共存物質の影響,相関性および攪拌の影響を検討した。再現性と希釈直線性は良好であった。また,測定機器に搭載後,9週目まで測定値は安定していた。2SD法による検出限界は9.4 pg/mLと十分な感度を有していた。乳び,溶血ヘモグロビン,遊離型ビリルビン,抱合型ビリルビンおよびリウマトイド因子は,測定値に影響を及ぼさなかった。対照試薬との相関係数は,r = 0.997と高く,標準主軸回帰式もy = 0.91x − 89.21と良好な相関性が得られた。さらに,プレセプシン濃度が異なる5例を用いて,3つの条件下で撹拌による測定値への影響を調べた。本試薬と対照試薬を比較すると,全ての条件において対照試薬の方が上昇率はやや大きかった。過度な攪拌により偽高値となる可能性があるため,測定前の検体の取り扱いには注意する必要があると考えられた。また,本試薬は基本性能が良好で,日常検査に有用と考えられた。

  • 岩田 英紘, 恒川 佳未結, 梅村 彩, 新田 憲司, 水嶋 祥栄, 長田 裕之, 瀬古 周子
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 3 号 p. 489-496
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    〈目的〉目視法による乳癌HER2-FISH検査は,癌細胞20個以上のHER2およびCEP17シグナルを計測し,平均HER2 copy数およびHER2/CEP17比を算出して判定を行う。しかし目視法では観察者によって判定結果に差が出る可能性がある。今回,同一検体に対して複数の観察者が目視法と自動カウント法を行い,自動カウント法の有用性を検討した。〈方法〉免疫染色でHER2タンパク2+を示した乳癌8例を対象とした。自動カウント法では画像解析装置Metaferシステムを用いた。観察者は4名で,目視法,自動カウント法の順でシグナルカウントを行い,結果を比較した。〈結果・考察〉自動カウント法では1症例平均212個の癌細胞を測定した。目視法では,8例中4例で判定に不一致が認められた。これらの4例は,平均HER2 copy数の値に顕著な観察者間のバラツキを認めた。目視法で判定不一致となった4例中3例は,自動カウント法ではNegative判定で一致した。〈結語〉目視法に比して,自動カウント法はHER2-FISH検査の高い一致性を示した。自動カウント法は多数の細胞を測定可能で,客観性および再現性の高い結果が期待できる。自動カウント法は精度管理の手段としても有用であり,HER2-FISH検査の精度向上に貢献できると思われる。

  • 河野 恵司朗, 田頭 歩美, 松永 秀幸, 近見 瑛里, 小山 友香理, 落合 篤, 室井 亮磨, 東田 正二
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 3 号 p. 497-503
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)スクリーニング検査を目的として「クロモアガーmSuper CARBA」(関東化学)と「chromIDTMCARBA」(ビオメリュー)の性能評価を行った。Miles & Misra法に準拠した発育支持能試験,および糞便存在下での発育支持能試験では,CPE 20株(IMP-1型17株(内ステルス型9株),KPC型1株,OXA-48型2株)を使用した。1濃度(103 CFU/mL)での発育支持能試験では,CPE 27株(IMP-1型24株(内ステルス型11株),KPC型1株,OXA-48型2株),カルバペネマーゼ非産生-カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(non-CP-CRE)137株の計164株を使用した。mSuper CARBAは全ての試験において103 CFU/mL濃度で95%以上の高い感度を示したが,chromIDTMCARBAは30%前後となり,mSuper CARBAの有用性が示唆された。一方でmSuper CARBAは1濃度での発育支持能試験で,特異度が66.4%(91/137)となり,MEPM耐性のnon-CP-CREが偽陽性を示す傾向がある知見を得た。mSuper CARBAは,特性を把握して使用する必要があるが,ステルス型を含めたCPEを高感度に検出できるためスクリーニング検査として有用であり,適正な抗菌薬使用や院内感染対策に寄与できると考えられる。

  • 度會 理佳, 菊地 良介, 横山 覚, 鈴木 敦夫, 金 貞姫, 高居 邦友, 安藤 善孝, 松下 正
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 3 号 p. 504-510
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
    ジャーナル フリー HTML

    Electro chemiluminescent immunoassay(ECLIA法)によるCancer Antigen 72-4(CA72-4)測定は,1ステップ法であり測定時間が短い長所があるが,プロゾーンやビオチンによる影響を受けやすい短所がある。最近,chemiluminescent immunoassay(CLIA法)によるARCHITECT CA72-4試薬(アーキ試薬)が開発され,今回その妥当性評価を行った。対照試薬としてECLIA法に基づくエクルーシス試薬CA72-4(コバス試薬)を用い,試料は検査後の残血清を使用した。評価項目として併行精度,希釈直線性試験,相関性試験,検体の安定性評価とビオチン干渉試験を行った。その結果,アーキ試薬の併行精度は管理試料,プール血清ともに変動係数5%以下と良好であった。アーキ試薬は300 U/mLまでの直線性を認め,コバス試薬とアーキ試薬の相関は回帰式がy = 1.08x − 1.65,相関係数は0.974と良好であった。検体の保存安定性は,冷蔵1週間,室温24時間,そして凍結融解3回のいずれの条件下でも測定値に影響を認めなかった。また,ビオチン干渉試験から,コバス試薬はビオチン濃度依存的に測定値が低下したが,アーキ試薬は明らかな影響を受けなかった。以上より,良好な直線性とビオチンの干渉を受けにくい点を含め,アーキ試薬の性能は良好であると考えられた。

資料
  • 猪俣 啓子, 福吉 葉子, 西村 仁志, 田中 信次, 田村 馨
    原稿種別: 資料
    2021 年 70 巻 3 号 p. 511-517
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
    ジャーナル フリー HTML

    第54回日臨技九州支部医学検査学会にて,臨床検査技師を対象に,ノンテクニカルスキルを育成することを目的としたワークショップを行った。ワークショップの参加者は,九州各県から学会に参加した20歳代から50歳代の臨床検査技師95名と,医学検査学を学ぶ大学3,4年生25名の合計120名であった。ワークショップは,ノンテクニカルスキルを学び体験する第1部と,メンバーシップを学び体験する第2部の2部構成で行った。問題を解決する研修ゲームを使用したグループワークでは,リーダーシップの発揮やメンバー間の活発な情報交流により,参加グループの8割が問題解決に成功した。また,一部のグループでは,メンバー間でリーダーとフォロワーの役割交換を柔軟に行いながら,自律的な話し合いにより問題を解決に導いていた。講義とワークを組み合わせたワークショップ形式の講習は,ノンテクニカルスキルの育成手段として有効であり,対象者や目的に応じて設定内容を工夫し継続的に取り組むことにより,ノンテクニカルスキルの涵養が期待できるものと考える。

  • 上總 杏奈, 髙桑 輝人, 福山 智子, 久鍋 明莉, 中村 恒仁, 深田 恵利奈, 山村 亮介
    原稿種別: 資料
    2021 年 70 巻 3 号 p. 518-524
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    血小板輸血不応(PTR)のうち,免疫学的機序によるものは20%程度と言われており,そのうちの95%以上が抗HLA抗体によるものと報告されている。血小板輸血有効性の評価には補正血小板増加数の1時間値(CCI-1)が一般的に用いられるが,追加の採血が必要となり,日常診療では必ずしも測定されるわけではない。今回,当院で2005年7月から2018年12月までにPTRと判断され,抗HLA抗体および抗HPA抗体スクリーニングを行った50例を対象に,当院におけるPTRの背景因子を調査することを目的として後方視的検討を行った。50例中96%が血液疾患であり,抗血小板抗体陽性であったのは23例であった。免疫学的機序によるPTRの有意な因子は女性,CRP低値,CCI-1低値であった。女性かつCRP 2.2 mg/L以下であれば感度69.6%,特異度77.8%で免疫学的機序によるPTRを予測することができた。さらに血液悪性疾患に絞ると,感度86.7%,特異度75.0%と,感度が上昇した。CCI-1を用いると特異度90%以上の精度で免疫学的機序によるPTRを予測することが可能であったが,38%の症例では測定されていなかった。血小板輸血の臨床的有効性が乏しい場合は,原因疾患の特定,性別,CRP値などの背景因子とともにCCI-1の測定を主治医へ提案することで抗血小板抗体検査が速やかに実施されるのではないかと考えられる。

  • 田中 伸久, 神宮 大輝
    原稿種別: 資料
    2021 年 70 巻 3 号 p. 525-528
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    小児期は免疫グロブリン(IgG,IgA,IgM)値が大きく変化する時期であり,基準範囲の設定には細分化した年齢区分が必要である。小児期の中でも新生児期は,特に免疫グロブリンの変化が著しいため,今回,当院のneonatal intensive care unitまたは,growing care unitに入院した早期新生児期(生後0~6日)の患者データを用いて,各免疫グロブリン(IgG,IgA,IgM)の設定を試みた。基準範囲の設定は,児の在胎週数により「21~27週」,「28~36週」,「37~42週」の3群に分け行った。IgGでは在胎週数による差が明らかであり,在胎週数を考慮した基準範囲の設定は意義がある。一方,IgAとIgMは胎盤通過性がないこともあり,在胎週数を考慮する必要性は認められなかった。

  • 吉田 雅弥, 田中 希歩, 内田 有咲, 黒川 滝, 龍 正樹, 北里 浩
    原稿種別: 資料
    2021 年 70 巻 3 号 p. 529-534
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    【はじめに】低体温下胸部大動脈手術では人工心肺離脱後の止血が凝固障害などで困難となることがある。クリオプレシピテート(以下,クリオ)は少ない容量中にフィブリノゲン(以下,Fbg)などの凝固因子が濃縮され,効率的な補充が可能とされている。当院は2017年11月からクリオの院内調製および運用を開始した。今回,急性大動脈解離症例におけるクリオ投与の効果について解析した。【対象と方法】クリオ非投与群(以下,非投与群)28例とクリオ投与群(以下,投与群)22例を手術中および手術後の製剤(RBC, FFP, PC)使用量の変化,クリオの使用状況,クリオ投与前後のFbg濃度について解析した。【結果】手術中のRBCの平均使用量は非投与群10.6単位,投与群6.9単位,FFPの平均使用量は非投与群17.0単位,投与群13.4単位と減少した。手術後についてもRBCの平均使用量は非投与群10.1単位,投与群5.7単位,FFPの平均使用量は非投与群15.1単位,投与群5.7単位と減少した。投与群のFbg濃度の平均値は投与前113 mg/dL,投与後185 mg/dLで,クリオ投与により有意に上昇した。【考察】クリオは製剤使用量・業務量の削減,Fbgの効率的な補充を可能とした。更なる適正使用のため,投与前のFbg濃度の確認や院内の適正在庫数の設定が今後の課題である。【結語】クリオは製剤使用量削減,フィブリノゲン補充療法に有用であった。

  • 鳥居 裕太, 山本 剛, 菅沼 直生子, 宮川 祥治, 簑輪 和士, 奈須 聖子, 佐々木 一朗, 江藤 正明
    原稿種別: 資料
    2021 年 70 巻 3 号 p. 535-541
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)は,世界中で多数の感染者が発生しており,各医療機関において,COVID-19患者の対応に追われ,緊迫した状況が続いている。各学会からの提言では,感染対策の観点からエアロゾル発生リスクが高い生理機能検査は,緊急性が高い場合を除き,検査中止または延期するよう示されており,これを遵守している施設が多いと思われる。当院では,新型コロナウイルス患者を受け入れつつ,感染予防を十分に行い,感染対策を理解した上で検査を実施している。感染対策として,①検査前における感染予防手技の習得,②エアロゾル発生リスクの高い生理機能検査における2週間ルールの導入,③検査前の十分な問診,④検査時および検査後の感染対策(PPE,HEPAフィルターによる換気)について取り組んだ。現時点ではエアロゾル発生リスクが高い生理機能検査に従事している担当者に感染者は発生していない。感染対策が十分に行えている結果と考えるが,未だ不明な点も多い感染症であるため,今後も感染対策に留意して検査を施行しなければならない。各施設において安全に検査が行える対策ができれば,検査者にかかる身体的・精神的ストレスも軽減できるのではないかと思われる。

  • 寺山 陽史, 三池 寿明, 古賀 万観子, 齋藤 美恵子, 三苫 朝, 灘吉 幸子, 山中 麻衣, 八板 謙一郎
    原稿種別: 資料
    2021 年 70 巻 3 号 p. 542-550
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    中規模病院の微生物検査院内化への取り組みについての報告は少ない。今後の同規模病院での院内化に寄与するため,院内化に至るまでの取り組みと問題点を報告する。2018年4月より病院管理者を中心とした微生物検査室設置プロジェクトを設立し,検査室の設置場所,機器,システム,必要となる工事,行政との情報伝達,他施設見学及び外部研修,外部講師学習会について協議した。その後,感染対策チームを中心とした微生物検査ワーキンググループを設立し,検査内容や業務の流れについて協議し準備を進めた結果,2019年8月より正式に微生物検査室が稼動することとなった。血液培養ボトルは外部委託していた時は採取後検査室で保存していたため,培養開始されるまで時間を要していたが,稼働後は採取後2時間以内に培養を開始することが可能となった。しかし稼働後1か月間は多発するシステムトラブルの対応に追われた。さらに検体数が予想していた処理能力を超えてしまい,併設診療所の血液培養と至急検体以外は外部委託することとなり,救急外来と入院症例の検体のみ院内で処理することになった。また同時に人材育成が急務となった。院内化により血液培養陽性例において報告までの日数は短縮し,検査結果に関する問い合わせは増加した。

  • 白石 直樹, 木村 竜一朗, 森 樹史, 澤田 貴宏, 清水 重喜, 坂井 和子, 西尾 和人, 伊藤 彰彦
    原稿種別: 資料
    2021 年 70 巻 3 号 p. 551-559
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    近年,分子標的薬の開発が急速に進み,特に原発性肺癌においてはコンパニオン診断として保険収載が多くの分子標的薬で行われている。近畿大学では2017年6月に肺癌に特化したコンパニオン検査を行うゲノムセンターを近畿大学医学部内に設置し,PD-L1(22C3),ALK(IHC),ALK(FISH),EGFR検査の受注を開始した。ゲノムセンターは2年の稼働期間に517件の検体を受け付け,検査を行った。充分量の悪性腫瘍が検出され,検査が実施できた割合は365件/517件(70.6%)であった。検査種ごとの検査数はEGFR検査が81件(稼働期間7カ月),PD-L1(22C3)は350件(稼働期間2年),ALK(IHC)は278件,ALK(FISH)は237件であった。病理部にてホルマリン固定検体を受け付けてから,検査結果を臨床に返却した日数の平均は11.8日(土日祝日を含む)であった。EGFR検査に限っては7.73日(土日祝日を含む)であった。外注検査と比較して十分に短いturnaround timeが得られた。今回,病院内で次世代シーケンサーを用いた遺伝子検査を行う新部署を新設したため,ゲノムセンターは2年間の上記検査の受注業務を終了した。自施設での検査を導入する際に起こり得る問題を提示しながら,これらの取り組みによりわかった自施設で検査を行うメリット,デメリットを報告する。

  • 紙田 晃, 眞田 かおり, 玉井 佑弥, 川本 光江, 杉山 満美
    原稿種別: 資料
    2021 年 70 巻 3 号 p. 560-565
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    B型肝炎ウイルス外被抗原(HBs抗原)検査を行う中で,初回の検査結果と確認試験の結果が乖離する検体に遭遇することがある。そこで,我々は初検値が0.05 IU/mL以上10 IU/mL未満でありかつ最終結果として陰性で報告した検体を偽陽性,陽性で報告した検体を真の陽性と定義した。そして,偽陽性の症例を明らかにし,偽陽性例と真の陽性例との初検値,HBコア抗体(HBc抗体)とHBs抗原を比較することを目的とした。対象は12,407例である。初検で陽性となったのは162例であり,初検値が0.05 IU/mL以上10 IU/mL未満であった55例に対し確認試験として高速遠心後の再検,さらにそのうちの21例に対し中和試験を行った。偽陽性は39例,真の陽性は16例であった。偽陽性39例の内訳として,高速遠心後の再検で陰性化したのは30例,中和試験で陰性化したのは9例であった。偽陽性例と真の陽性例との間で初検値に有意差はなかった。確認試験を行った55例のうち,7例でHBc抗体の検査データが得られた。4例がHBs抗原陰性かつHBc抗体陰性,1例がHBs抗原陽性かつHBc抗体陽性,2例がHBs抗原陰性かつHBc抗体陽性であった。以上から,HBs抗原検査における偽陽性例は当院でも認められ,また初検値から偽陽性か真の陽性かの判断はできず,このことから確認試験は正確な結果報告のために重要であると考えられた。また,HBc抗体はHBs抗原偽陽性判断の一助になると考えられた。

  • 田中 伸久, 新井 菜津子
    原稿種別: 資料
    2021 年 70 巻 3 号 p. 566-570
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    交換輸血(exchange transfusion; ET)は,新生児の重症黄疸にとって有用な治療法である。2011年から2020年までに当院で行われた新生児の交換輸血事例についてまとめた。最近10年間に当院で行われた新生児のET56例のうち,重症黄疸を理由とした30例を対象に,診療録のデータから後方視的調査を行った。ET例の83.3%(25/30)が正期産児であり,86.7%(26/30)が他施設からの搬入であった。30例のうち母児間のABO不適合と診断されたのは10例で,そのうち母O型,児B型の組み合わせが8例であった。ABO不適合10例における直接抗グロブリン試験の陽性率は60.0%(6/10)であった。ETに続発して血小板減少など一時的な検査値の異常がみられたが,死亡例はもちろんのこと臨床的問題の記載は確認されなかった。

症例報告
  • 浦上 貴史, 局 朋美, 弓 友香, 浅野 美貴子, 中園 裕一, 吉河 康二, 金内 弘志, 牟田 正一
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 70 巻 3 号 p. 571-576
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    関節液は関節腔に貯留する粘稠度の高い液体で,血液滑膜関門を介して選択的に流入した血漿ろ過成分と,滑膜細胞から分泌されたヒアルロン酸や糖蛋白などにより構成された体液であり,関節が正常に機能するためきわめて重要な細胞外液である。関節液中にコレステロール結晶が検出されることはまれである。今回我々は変形性膝関節症により人工膝関節置換術が施行された患者の関節液中よりコレステロール結晶と人工関節片(チタン)がみられた1例を経験したので報告する。症例は80歳代,女性で,前医にて左膝関節の痛みを訴え,39度台の発熱を認め,抗菌薬の投与を行ったが症状が改善されず精査加療目的にて当院搬送となった。関節液の色調は黒色,細胞分類では98%が好中球であった。光学,偏光顕微鏡を用いた結晶検査にて,コレステロール結晶がみられた。人工関節の摩耗により,組織の破壊が進行しコレステロール結晶が出現したものと推定される。関節炎は診断が遅れると関節破壊が進み,予後不良となる症例もあり,早期診断は重要である。結晶誘発性関節炎や関節リウマチ(rheumatoid arthritis; RA)などの炎症性疾患は,関節液の細胞検査・顕微鏡検査が臨床検査として非常に有効であるため,今後もさらなる症例データの蓄積が必要である。

  • 尾方 美幸, 鬼塚 久充, 桑原 彩, 田中 美与, 鈴木 千代子, 中村 都英, 石川 哲憲, 岡山 昭彦
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 70 巻 3 号 p. 577-582
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    巨大冠動脈瘤を伴った冠静脈洞に回帰する冠動静脈瘻の稀な1例を報告する。症例は65歳女性。両下腿浮腫及び息切れを自覚し,うっ血性心不全と診断された。経胸壁心エコー図検査において両心室及び両心房の著明な拡大,中等度の二次性僧帽弁逆流(volumetric法による逆流量41 mL/beat)及び中等度の三尖弁逆流を認め,心室中隔の拡張期扁平化と肺高血圧所見(推定肺動脈収縮期圧67 mmHg)を認めたが,左室駆出率(biplane disk summation法)は67%と保たれていた。大動脈弁レベルでの傍胸骨短軸像で左冠動脈主幹部拡大とそれに続く蛇行血管を認め,左室側壁方向で巨大な瘤を形成し,左室後方では数珠状に拡大していた。それらの内部には血流シグナルを認めた。また,著明に拡大した冠静脈洞を認め,右房に流入する血流シグナルは連続波ドプラで1.6 m/secの連続性血流波形であった。これらの所見より冠動脈瘤を合併した冠動静脈瘻が示唆された。冠動脈CTでも同様の所見を認め,冠動脈瘤は最大50 mmであった。心臓カテーテル検査で肺体血流比≒2.4であったこと,及び冠動脈瘤の大きさから破裂の危険性があると判断され,冠動脈瘤根治術,冠動脈バイパス術及び僧帽弁形成術が施行された。経胸壁心エコー図検査で冠動脈瘤を認めた際は冠動静脈瘻の存在も念頭に入れ,右心系心腔内や肺動脈に異常な血流シグナルがないか注意深く観察することが必要である。

  • 飯島 紅祐, 山田 久美子, 和田 恭直, 稲村 昌輝, 北村 典子, 井垣 歩, 小柴 賢洋
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 70 巻 3 号 p. 583-587
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    莢膜多糖体非合成髄膜炎菌による脾臓摘出後重症感染症の症例を経験した。患者は60歳代の女性。発熱,嘔吐で近医を受診したが,呂律困難の症状がありMRI検査により急性脳梗塞が疑われたため,当院へ緊急搬送された。血液検査の結果より炎症マーカーの上昇を認め,感染症の疑いで初期治療としてメロペネム(Meropenem; MEPM)およびバンコマイシン(Vancomycin; VCM)を投与したが,その後,血液培養検査にてグラム陰性球菌が検出されたため,脾臓摘出の既往があることを踏まえて,投与抗菌薬をセフトリアキソン(Ceftriaxone; CTRX)へ変更した。さらに質量分析法および薬剤感受性試験からフルオロキノロン耐性Neisseria meningitidisと同定したが,その後は髄液中の細胞数増加を認めず培養も陰性となり,第17病日に軽快退院した。後日,他機関における本症例の検出株の血清型および遺伝子型の精査により,莢膜多糖体非合成株と判明した。

有用性検討
  • 平田 正敏, 服部 真季, 竹市 沙穂, 髙田 美早紀, 西浦 美代子, 水野 日香, 須藤 朋子, 今枝 義博
    原稿種別: 有用性検討
    2021 年 70 巻 3 号 p. 588-594
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    気流制限を有する慢性閉塞性肺疾患(COPD)にも関わらず,診断されずに見過ごされている多くの患者がいるとされる。本研究は潜在する気流制限を有する患者を見出す手術前呼吸機能検査の有用性を検討した。手術前呼吸機能検査を行った7~94歳の1,496名を対象とし,喫煙歴・既往歴・現病歴のデータを収集した。1秒率70%未満を気流制限ありと判定すると,全体の222名(14.8%),男性138名(18.1%),女性84名(11.4%)に認められた。気流制限と喫煙歴との関係では,男女ともに非喫煙者より喫煙者の方が気流制限の認められる割合が高かった。併存疾患について,全体では心疾患(p = 0.0013)と高血圧(p = 0.0207),男性では高血圧(p = 0.0449),女性では心疾患(p = 0.0019)と骨粗鬆症(p = 0.0040)に,気流制限と関係がみられ,気流制限のみならず,併存疾患との関係性にも注意が必要であった。一方,解析対象者からは除外したが,すでにCOPDと診断・治療が開始されていたのはわずか4名であった。手術前呼吸機能検査は潜在する気流制限を有するCOPD患者の早期発見・早期治療に繋がる可能性が示唆された。

基礎検討
  • 水内 裕友, 眞野 容子, 古谷 信彦
    原稿種別: 基礎検討
    2021 年 70 巻 3 号 p. 595-601
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/28
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    緑膿菌は湿潤環境中に棲息し,病原性が低く健常者には感染しても症状が出ることはほとんどない。しかし,免疫力の低下した易感染者には日和見感染症を引き起こすことがある。感染経路として,カテーテル汚染などによる外因性感染や患者腸管内に棲息する緑膿菌による内因性感染がある。緑膿菌は緑膿菌感染症の重症・難治化の原因となる種々の病原因子を産生する。漢方薬である麻黄湯は抗インフルエンザウイルス作用が報告されている。しかし,麻黄湯による緑膿菌の病原因子に対する影響についての報告はない。そこで,本研究では,麻黄湯による緑膿菌(PAO1株)の病原因子に対する影響をin vitroで検討することを目的とした。今回,増殖速度,biofilm形成能,motility(swarming, swimming, twitching),total proteaseと,ヒト結腸癌由来細胞caco-2を用いた内因性感染の確立に重要な細胞侵入性の検討を行った。増殖速度は麻黄湯添加により,4,8時間にて抑制を認めたが各検討に用いた18時間以降では抑制を認めなかった。swarming motilityでは61%,total proteaseでは15%の抑制を認め,細胞侵入性においても有意な抑制を認めた。

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