医学検査
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症例報告
巨大冠動脈瘤を合併した冠動静脈瘻
尾方 美幸鬼塚 久充桑原 彩田中 美与鈴木 千代子中村 都英石川 哲憲岡山 昭彦
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2021 年 70 巻 3 号 p. 577-582

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抄録

巨大冠動脈瘤を伴った冠静脈洞に回帰する冠動静脈瘻の稀な1例を報告する。症例は65歳女性。両下腿浮腫及び息切れを自覚し,うっ血性心不全と診断された。経胸壁心エコー図検査において両心室及び両心房の著明な拡大,中等度の二次性僧帽弁逆流(volumetric法による逆流量41 mL/beat)及び中等度の三尖弁逆流を認め,心室中隔の拡張期扁平化と肺高血圧所見(推定肺動脈収縮期圧67 mmHg)を認めたが,左室駆出率(biplane disk summation法)は67%と保たれていた。大動脈弁レベルでの傍胸骨短軸像で左冠動脈主幹部拡大とそれに続く蛇行血管を認め,左室側壁方向で巨大な瘤を形成し,左室後方では数珠状に拡大していた。それらの内部には血流シグナルを認めた。また,著明に拡大した冠静脈洞を認め,右房に流入する血流シグナルは連続波ドプラで1.6 m/secの連続性血流波形であった。これらの所見より冠動脈瘤を合併した冠動静脈瘻が示唆された。冠動脈CTでも同様の所見を認め,冠動脈瘤は最大50 mmであった。心臓カテーテル検査で肺体血流比≒2.4であったこと,及び冠動脈瘤の大きさから破裂の危険性があると判断され,冠動脈瘤根治術,冠動脈バイパス術及び僧帽弁形成術が施行された。経胸壁心エコー図検査で冠動脈瘤を認めた際は冠動静脈瘻の存在も念頭に入れ,右心系心腔内や肺動脈に異常な血流シグナルがないか注意深く観察することが必要である。

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© 2021 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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