医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
技術論文
フローチャートを用いて検者の判断の統一を図った基準嗅力検査の検討
芳田 梓細矢 慶加藤 政利中島 愛中村 利枝林 綾子秀永 陸奥子小伊藤 保雄
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2023 年 72 巻 1 号 p. 77-82

詳細
抄録

基準嗅力検査(T&Tオルファクトメトリー)は,T&Tオルファクトメーター(第一薬品産業株式会社)を用いた検査で,嗅覚障害の程度や治療効果の評価をするために重要である。近年,臨床検査は精度管理や標準化が求められているが,T&Tオルファクトメトリーは,操作が煩雑で,検者の手技や判断により検査結果が異なる可能性が指摘されている。今回我々は,日本医科大学多摩永山病院独自のT&Tオルファクトメトリーのフローチャートに準じて検査を行うことで,検査方法の標準化を試みた。2020年10月から2021年4月までに耳鼻咽喉科を受診した64名(慢性副鼻腔炎41例,アレルギー性鼻炎2例,外傷後1例,神経変性疾患4例,原因不明16例)を対象に,フローチャートを用いたT&Tオルファクトメトリー,日常のにおいアンケート,VASスコアを実施した。フローチャートを使用することで,検者は検査の際に判断に迷うことが減り,患者はかおりについて表現しやすい印象であった。また,T&Tオルファクトメトリーの平均認知域値と,嗅覚の自己評価法である日常のにおいアンケートやVASスコアとの関連性をそれぞれ比較した。その結果,T&Tオルファクトメトリーの平均認知域値と日常のにおいアンケートは強い負の相関を認めた(r = −0.715)。そして,VASスコアとも強い負の相関を認めた(r = −0.793)。フローチャートを用いたT&Tオルファクトメトリーは,検者の手技手順が標準化され,患者の主観的な訴えをよく反映する可能性がある。

著者関連情報
© 2023 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top