LIA法の抗ピロリ抗体検査試薬(H.ピロリ-ラテックス「生研」)は,カットオフ値が10.0 U/mLに設定されているが,実際は抗体陰性例中にもピロリ菌現感染症例が少数存在することが報告されている。今回,抗体価陰性高値例と低値例における現感染疑い症例の存在について,同時期に実施された内視鏡所見の再評価により検証した。対象は,過去に除菌歴,胃がんの既往がなく,当院の検査で抗ピロリ抗体陰性(< 10.0 U/mL)と判定され,かつ同時期に施行された内視鏡検査で慢性萎縮性胃炎疑いと診断されていた53例。そのうち,抗体価陰性低値(< 3.0 U/mL)は31例(58%),陰性高値(3.0–9.9/mL)は22例(42%)であった。53例について内視鏡専門医が所見の再評価を行ったところ,ピロリ菌現感染が疑われ,「要精査」と判定された症例が23例存在し,陰性低値群8例(8/31, 25.8%),陰性高値群15例(15/22, 68.2%)と,陰性高値群で有意に高かった。今回の検討で,陰性高値群では陰性低値群に比べ,ピロリ菌現感染を疑う症例が有意に多く存在したが,抗体検査を実施した検診受診者の中には,内視鏡検査を受けない人も少数見られ,これらは抗体陰性の場合,精査されることはない。しかし,今回の結果からは,陰性高値群も精査の対象とし,呼気試験等他のピロリ検査や,内視鏡検査の実施も検討する必要があると考えた。