医学検査
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原著
頸動脈内膜剥離術における術中モニタリング波形と頭部MRA所見の関係
橋本 光弘近藤 規明井澤 和美柴田 一泰高須 俊太郎
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2023 年 72 巻 1 号 p. 55-60

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抄録

頸動脈内膜剥離術(CEA)中の頸動脈血流遮断時には脳虚血による合併症を生じるリスクが避けられない。術側の内頸動脈血流遮断時の脳虚血の程度は,非術側の血管系からの血流供給の程度に依存すると考えられている。本研究では,頭部磁気共鳴血管撮影(MRA)で描出されるWillis動脈輪前方の画像所見と術中モニタリングとして実施された体性感覚誘発電位(SEP)および運動誘発電位(MEP)の波形との関連について検討した。対象は,CEAの際にSEPおよびMEP術中モニタリングを行った患者205例とした。対象者をMRAでの前大脳動脈起始部(A1)と前交通動脈(A-com)の描出パターンで分類し,術中での内頸動脈血流遮断後のSEPあるいはMEPモニタリング波形の振幅が,遮断前と比較して50%以上低下した症例の割合を群間比較した。モニタリング波形の振幅が低下した症例の割合は,MRA上で両側のA1が描出された群で6.1%,非術側のA1だけが描出不良の群では21.1%,術側のA1だけが描出された群で50.0%,両側のA1は描出されるがA-comが描出不良の群で100%であった。Willis動脈輪前方における非術側から術側への血流供給の有無が,内頸動脈血流遮断時の脳虚血の要因の一つであると考えられた。非術側のA1あるいはA-comの低形成や欠損が存在すると,内頸動脈血流遮断による術側大脳半球の脳虚血が生じるリスクが高くなることが示唆された。

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© 2023 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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