2023 年 72 巻 2 号 p. 256-263
今回,1971年のFFPE検体から腫瘍症例を選びp53免疫染色を施行,強陽性例の検体からDNA,RNAを抽出し,濃度及び分解度を測定した。さらに,PCR法にてp53遺伝子のExon 4~7領域で増幅の有無を確認した。増幅の認められた症例についてはシークエンス解析を行った。DNAは濃度60~330 ng/μL,OD比260/280で1.4~1.8,RNAは濃度450~1,145 ng/μL,OD比260/280で1.8~1.9で抽出することができた。DIN値は1.1~1.7,RIN値は1.4~2.4であった。PCRは200~300 bpでは増幅することができなかったが,おおむね170 bp以下に分けることでExon 5-1,5-2は6/6症例,Exon 7-1で6/6症例,7-2で5/6症例増幅が認められた。サンガー法にて,増幅を認めたすべてのサンプルで塩基配列を解読することができ,複数個所で変異を確認することができた。50年前のFFPE検体からでもある程度のDNA,RNAが抽出できたが,品質的には経年による核酸の分解がより進んでいたことがわかった。それでも,条件次第でPCRによる増幅,さらにはシークエンス解析も可能であったことから,長期保管FFPEブロックの分子病理学的有用性は大きいと考える。したがって,FFPE検体は長期保管(半永久的)することが望まれる。