医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
資料
ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed, paraffin-embedded; FFPE)検体アーカイブス―50年前のFFPE検体を用いた遺伝子解析―
斎藤 彩香五十嵐 久喜北山 康彦石川 励山田 英孝椙村 春彦
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2023 年 72 巻 2 号 p. 256-263

詳細
抄録

今回,1971年のFFPE検体から腫瘍症例を選びp53免疫染色を施行,強陽性例の検体からDNA,RNAを抽出し,濃度及び分解度を測定した。さらに,PCR法にてp53遺伝子のExon 4~7領域で増幅の有無を確認した。増幅の認められた症例についてはシークエンス解析を行った。DNAは濃度60~330 ng/μL,OD比260/280で1.4~1.8,RNAは濃度450~1,145 ng/μL,OD比260/280で1.8~1.9で抽出することができた。DIN値は1.1~1.7,RIN値は1.4~2.4であった。PCRは200~300 bpでは増幅することができなかったが,おおむね170 bp以下に分けることでExon 5-1,5-2は6/6症例,Exon 7-1で6/6症例,7-2で5/6症例増幅が認められた。サンガー法にて,増幅を認めたすべてのサンプルで塩基配列を解読することができ,複数個所で変異を確認することができた。50年前のFFPE検体からでもある程度のDNA,RNAが抽出できたが,品質的には経年による核酸の分解がより進んでいたことがわかった。それでも,条件次第でPCRによる増幅,さらにはシークエンス解析も可能であったことから,長期保管FFPEブロックの分子病理学的有用性は大きいと考える。したがって,FFPE検体は長期保管(半永久的)することが望まれる。

著者関連情報
© 2023 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top