腎針生検検体の病理診断には,種々の特殊染色,蛍光抗体法,免疫組織化学,透過型電子顕微鏡(transmission electron microscope; TEM)などの多彩な解析が必要となる。しかし,症例によってはTEM用検体に糸球体が含まれていないなど,確定診断が困難な場合も少なくない。近年,特別な固定処理を必要としない低真空走査型電子顕微鏡(low-vacuum scanning electron microscopy; LVSEM)を用いた解析法が開発され,腎病理診断への応用が模索されている。我々は,腎組織のパラフィン包埋切片に対し,既報で用いられている白金ブルー染色とチオセミカルバジド-PAM(thiosemicarbazide-periodic acid-methenamine silver; TSC-PAM)染色に加えて,血管内皮マーカーとして用いられるCD31およびCD34に対する免疫組織化学を行い,3,3'-ジアミノベンジジン四塩酸塩水和物(DAB)発色後に塩化金増感を加えた検体のLVSEM観察を行った。CD31やCD 34のLVSEM観察では,白金ブルーやTSC-PAMでは観察が困難であった,糸球体血管内皮細胞,傍尿細管毛細血管網,小動脈などが明瞭に描出された。これらは,炎症性疾患や腫瘍浸潤の評価に有効である可能性が示唆された。また,DAB発色後の塩化金増感は,免疫組織化学全般に対して応用が可能であり,腎生検検体中の免疫複合体の沈着を確認する他,種々の免疫組織化学に適応することで,微細構造の観察が可能になると考えられた。
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