2023 年 72 巻 2 号 p. 272-280
症例は70歳代男性。肺炎で前医通院中に肝腫瘤を指摘され,4か月後のCT検査で急速な増大所見を認めたため精査目的で当院紹介となった。腹部超音波検査では,肝S4を主座に最大径8 cmの充実性腫瘍を認め,境界明瞭で,辺縁に切れ込みを有する分葉状を呈していた。内部は低輝度均一で,高輝度領域が混在していた。後方エコーは増強し,腫瘍内部を既存の末梢脈管が走行していた。造影超音波検査では動脈相優位相で腫瘤全体に微細な早期濃染を認めた。門脈優位相では周囲肝実質より造影効果が減弱し始め,Kupffer相では明瞭な欠損像を呈した。MRIでは腫瘤はT1強調画像低信号,T2強調画像高信号,拡散強調画像高信号,ADC低値を呈した。Gd-EOB-DTPA造影MRIのdynamic studyでは,腫瘍の造影効果は乏しく,内部には徐々に増強される隔壁様の構造がみられた。肝細胞相では腫瘍は周囲肝実質に比べて低信号を呈した。その他の部位に明らかな腫瘤性病変は指摘できず,PET-CTでも肝腫瘤以外に異常集積は認めなかった。腫瘍生検により肝原発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma;以下DLBCL)と診断された。DLBCLの肝原発病変は非常に稀であり未だ報告数が少ないのが現状である。今回,造影超音波検査が診断に有用であったDLBCLの症例を経験したので報告する。