2023 年 72 巻 3 号 p. 339-348
PML-RARAを伴う急性前骨髄球性白血病(以下,APL)の一部には微細顆粒や核異型を伴うmicrogranular type(以下,M3v)が存在するが,典型的なAPLに比べ形態学的所見からの病型推測が難しいとされる。また,CBFB-MYH11を伴うAML(以下,M4Eo)は,顆粒球および単球系細胞に加え異常好酸球が骨髄中に増加する。今回我々は汎T細胞抗原であるCD2が上記2病型の早期発見に有用であるか検討した。対象:当院で骨髄検査及び造血器腫瘍細胞抗原検査(以下,FCM)を実施した①APL:16症例,②M3v:5症例,③急性骨髄単球性白血病(以下,M4):13症例,④M4Eo:10症例を対象とした。方法:各症例で普通染色・特殊染色による形態観察と,FCMを用いたCD2を含む各細胞表面抗原の解析,造血器腫瘍キメラ遺伝子および染色体検査を実施した。結果:FCM解析ではAPL全症例でCD2は陰性であったが,M3v4症例・M4Eo8症例においてCD2の発現が認められ,その陽性率は上記2つを除いた他病型AMLと比較し有意に高値であった(p < 0.001)。またAPL・M3v全症例でPML-RARA・t(15;17)染色体を認め,M4Eo症例でもCBFB-MYH11・inv(16)染色体は全症例で検出された。これよりCD2抗原は,形態学的所見による病型推測が困難な症例でも上記2病型の早期診断を可能にする有用な指標になると考えられた。