Streptococcus pneumoniaeは免疫機能が低下した小児や高齢者に重症感染症を引き起こす。本研究は,その侵入門戸となり得る呼吸器材料に限定して,本菌の血清型と薬剤感受性をワクチン導入前後で比較した。2007年から2009年をワクチン導入前,2016年から2018年をワクチン導入後とし,それぞれ375株と150株について解析した。その結果,沈降13価結合型ワクチンに含まれる19型,14型,9型は顕著な減少が認められたが,23価ポリサッカライドワクチンに含まれる型は変化がなかった。一方,非ワクチン型である35型,34型,Non type(NT)は増加した。薬剤感受性検査では,ワクチン導入後にPCG,CTX,CFPMの感性率に有意な上昇が認められた。また,PRSP(pbp1a・pbp2x・pbp2b変異)の頻度が32.4%と高かった。これは,PRSPが高率に出現する23型や35型,NTが減少していないことに起因した。呼吸器材料ではNTや非ワクチン型が多く,PRSPの出現率が高いことが明らかになった。NTは非典型集落を形成することが多く,検査室での釣菌や菌種同定において注意が必要である。さらに,PRSPは依然として高率に出現していることから,検査室での適正な薬剤感受性検査の実施とこれを踏まえた抗菌薬の選択が重要である。