2023 年 72 巻 4 号 p. 513-521
目的:オキシトシンは,精神的な安らぎを与え,ストレス反応を抑え,人と交わったりする社会的行動への不安を減少させることが知られている。本研究では,大学生を対象として,発達面の特性およびストレスの状態と唾液バイオマーカーとの関連について分析し,発達障害の早期発見やストレス状態の把握のためのバイオマーカーとなる可能性を探った。方法:大学生の男女56人(年齢21~23歳)を対象とした。唾液採取を12:00–13:10に実施後,同日に質問紙調査を実施した。唾液バイオマーカーは,唾液オキシトシン濃度,唾液αアミラーゼ活性および唾液コルチゾール濃度をELISA法で測定した。自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動性障害(ADHD)といった発達面の特性の傾向およびストレスの状態について,3種類の質問紙を用いて評価した。質問紙調査を数値化し,バイオマーカー測定値との関連について分析した。結果:ASD傾向において対人関係の問題があると唾液コルチゾール濃度が高い傾向があり,また想像力の問題があると唾液αアミラーゼ活性が低い傾向があることが見いだされた。そして,ASD傾向のうちコミュニケーションに関する困難があると唾液オキシトシン濃度は低いという関連性が見いだされた。結論:唾液バイオマーカー測定は,他者から気付かれにくい大学生の発達障害やストレス状態の早期発見につながる可能性が示唆された。