医学検査
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原著
ストーマ装具の皮膚保護剤混入が尿沈渣判定に及ぼす影響
富永 美香伊藤 富佐子古谷 裕美岡山 直子西岡 光昭
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2024 年 73 巻 1 号 p. 18-24

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抄録

尿沈渣中には尿路に由来する成分以外に混入物も認めることがある。尿路変向術後に装着するストーマ装具に付着している皮膚保護剤も混入物の一つとして知られているが,その成分の報告については少ない。今回,当院で使用されているCPGFb系,CPGbs系,CPbh系,CPGHbs系の4種類の皮膚保護剤が尿沈渣判定に及ぼす影響について検討した。4種類の皮膚保護剤を生理食塩水で溶解し,共通して出現した成分として無構造の円柱状成分と類円形成分を認めた。皮膚保護剤の種類による特有成分としてCPGFb系では繊維状成分を,CPGHbs系ではカプセル状成分を認めた。皮膚保護剤由来の円柱状成分は尿沈渣の硝子円柱やろう様円柱と類似し,皮膚保護剤由来のカプセル状成分は糞便中の食物残渣と類似していた。尿沈渣中に糞便を認めた場合は採尿時の混入か腸瘻孔を疑うが,尿路変向術後尿では採尿時の混入は考えにくい。そのため皮膚保護剤由来のカプセル状成分を糞便と誤判定し,臨床に腸瘻孔を疑った報告をする可能性が考えられる。皮膚保護剤由来のカプセル状成分と糞便との形態学的鑑別は困難であるが,皮膚保護剤由来のカプセル状成分は無染色で色調を有さない点,カプセル状成分以外の多彩な糞便成分を認めない点,さらにCPGHbs系皮膚保護剤を使用しているという患者情報が鑑別に有用であった。尿沈渣検査を行う際にはストーマ装具の装着も念頭に入れ,皮膚保護剤の混入も考慮する必要がある。

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