医学検査
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原著
当院における脳波検査の緊急報告について
津藤 有子若杉 志穂杉山 嘉史海老名 俊明廣瀬 春香
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2024 年 73 巻 2 号 p. 205-214

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抄録

臨床検査室は,患者の予後に影響を与える可能性が高い異常値・異常所見を早期に検査依頼医師に連絡することが求められている。しかしながら脳波検査における緊急報告は,各施設に委ねられているのが現状であり,検査室からの調査報告は少ない。我々はISO 15189(国際標準化機構 臨床検査室―品質と能力に関する特定要求事項)の認定取得を機に神経学的予後への影響を考慮した緊急報告値(波形)を定めた。2015年4月~2022年3月までの緊急報告事例を調査した結果,143件の緊急報告があった。緊急報告の割合は,外来患者が多く含まれる検査室実施に比して病棟実施が高かった。緊急報告値は非けいれん性てんかん重積とけいれん性てんかん重積が半数以上を占め,これらを報告した診療科は,重症患者を扱う高度救命救急センター,脳神経内科,心臓血管センターが大半であった。非けいれん性てんかん重積56症例のうち21例で意識障害の改善が確認されたが,死亡が12例であり,23例に改善はみられなかった。加えて,設定した緊急報告値以外にも医師が予測していなかった患者の状態や波形を報告したことで,患者のQOLが維持された事例があった。今回の調査により脳波検査の緊急報告は,患者への早期治療介入および神経学的予後改善に貢献できる可能性があると考えられた。

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© 2024 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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