2024 年 73 巻 2 号 p. 258-270
馬鈴薯が有する自然毒成分α-ソラニン(SO)およびα-チャコニン(CHA)はしばしば食中毒の原因となる。我々は以前,SOとCHAに結合するポリクローナル抗体(anti-Sold antibody)を作製し,それを使用した酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を構築した。このELISAはSOとCHAの検出感度が低いという弱点があるため,本研究ではその改善を図った。試料中のSOおよびCHAをELISAプレートにコーティングし,そこにビオチン標識したanti-Sold antibodyを添加,さらにペルオキシダーゼ標識したストレプトアビジンを添加するELISAを試みた。本法により,10 mMリン酸緩衝液で調製したSOとCHAを含む試料の吸光度は,従来のELISAの約5倍に増強した。さらに,ヒトの血清および尿で調製したSOとCHAを含む試料の吸光度は,従来のELISAのそれぞれ約2.5倍と約1.6倍に増強した。本ELISAを用いて,馬鈴薯の塊茎,皮,芽の成分抽出液からもSOとCHAの含有量を測定することが可能であった。一方で,本ELISAは,SOやCHAと化学構造が類似する物質であるソラニジンやソラソジンと交差反応を示し,血清中のコレステロールとも反応することがわかった。本ELISAはヒトの生体試料にも適応可能な検出性能を有するが,結果の判定には交差反応を充分に考慮すべきである。