医学検査
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呼吸器疾患患者から分離されたAspergillus属菌の種類と抗真菌薬感受性―アスペルギルス属における抗真菌薬耐性の検討―
佐子 肇羽月 香子吉川 裕之斎藤 晴子
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2025 年 74 巻 1 号 p. 124-132

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抄録

近年,肺非結核性抗酸菌(NTM)症を背景として発症する慢性肺アスペルギルス症(CPA)の合併例が増加傾向にある。今回我々は,2012年から2016年の5年間に当院で分離したAspergillus属菌について,簡易同定法で同定した菌種の種類,およびこれらの抗真菌薬感受性を検討した。分離菌はA. fumigatusが102株(44.9%)と最も多く,次いでA. niger 66株(29.0%),A. flavus 21株(9.3%),Aspergillus属(同定不能)21株(9.3%),A. terreus 13株(5.8%)およびA. nidulans 4株(1.8%)であった。A. fumigatusを分離した患者は70歳代高齢の男性に多く,同時に分離したNTMは,Mycobacterium aviumが多かった。一方,A. nigerを分離した患者は70歳代高齢の男女共に多く,M. aviumおよびM. intracellulareが多かった。これらを疾患別に見ると肺NTM症を背景にAspergillus属菌を分離している患者に多く認めた。抗真菌薬感受性は,ほとんどが良好な感受性を示したが,肺NTM症治療後にCPAを発症した患者で,ITCZおよびVRCZに耐性化したA. fumigatusの1例を経験した。その主な耐性機序はcyp51A遺伝子のM220の変異であった。アゾール系抗真菌薬の長期使用例では耐性株の出現を考慮し,定期的な感受性試験が必要と考えられた。

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