2025 年 74 巻 2 号 p. 317-324
【目的】血液透析患者血清を検体としたアルカリフォスファターゼ(ALP)測定において,IFCC標準化対応法(IFCC法)と旧JSCC標準化対応法(JSCC法)による試薬基礎性能試験を行い,さらに血液型や糖尿病の有無での活性値の特徴をみた。【方法】対象検体は2023年8月の血液透析患者の残余血清,試薬はIFCC法のLタイプワコーALP・IFCCとJSCC法のLタイプワコーALP・J2を使用した。検討内容は試薬性能試験として,併行精度,室内再現精度,正確さ,希釈直線性,定量限界,共存物質の影響,相関性試験を行い,血液型がA/AB型群,B/O型群との活性値の差や糖尿病の有無での活性値の差をみるために,ALPアイソザイム検査を行った。【結果】基礎性能試験において,IFCC法は全て試験で良好な結果であったが,JSCC法は共存物質の影響試験の溶血ヘモグロビンにのみ,高ヘモグロビン濃度で負誤差があった。血液型での特徴として,IFCC法ではA/AB型群とB/O型群とに活性値差はなかったが,JSCC法ではA/AB型群に比べB/O型群の活性値が高値傾向であった(p = 0.022)。また,アイソザイムでは,A/AB型群に比べB/O型群は小腸型の割合が高値傾向であった(p < 0.001)。糖尿病有無での特徴として,IFCC法,JSCC法ともDM群と非DM群に活性値に差がなく,アイソザイムに差がなかった。【結語】血液透析患者血清でのLタイプワコーALP・IFCCは良好な試薬性能を有し,A/AB型とB/O型とのALP値の差はJSCC法に比べると小さくなることが示唆された。