2022 年 26 巻 1 号 p. 94-103
本研究の目的は,外来化学療法室に勤務する看護師の経験を記述的に明らかにすることである.総合病院外来化学療法室に勤務する2名の看護師を研究参加者とし,非構造化面接を行った.それぞれの看護師の語りに注目して経験を記述し,その経験がいかに外来化学療法室という場を成り立たせているのか,それぞれの看護師の経験に埋め込まれた看護の拠りどころは何か,外来化学療法室に勤務する経験を自身のキャリアにどう位置づけているのか現象学的な態度を手がかりに探求した.
その結果,外来化学療法室は「じっくり関われる場」「きちんと話をする場」として経験されており,その経験は長期にわたって個々の患者と関わるという外来化学療法室固有の状況に支えられていた.それぞれの看護師の経験には「頑張っている患者の力になりたい」「がんを生きる患者の生活をどう支えていくのか」という各々の看護師の看護の拠りどころとなるものが埋め込まれていた.また,外来化学療法室に配属され働き続ける中で,それぞれの看護師は,配置転換や患者との関わりを節目としながら,「一皮むけた経験」を積み重ね,それぞれの看護師固有の物語を紡ぎ,「一皮むけた経験」を意味づけ,看護師としての自身の存在価値に気づき,キャリアの課題を乗り越え発達させていた.