2005 年 15 巻 1 号 p. 59-71
大学における看護実践能力のうち、援助的対人関係能力の育成は重要な課題である。この技術の基盤となるのは思いやり行動である。看護学生の思いやり行動はどのような因子により構成されているのか、また、思いやり行動は学習進度によりどのように変化するのかを明らかにすることを目的に調査・分析を行った。対象は大学看護学科2年生である。その結果、思いやり行動は、「相手の立場に立つ」「相手の態度・表情を読み取る」「相手の気持ちを察する」の3因子で構成されていた。この3因子と授業前と授業後、実習後の学習進度にあわせた3時点の間には有意差があった。「相手の立場に立つ」は、授業前から実習後にかけてやや上昇し、「相手の行動・表情を読み取る」は、授業前から実習後にかけて下降した。「相手の気持ちを察する」は、授業前から実習後にかけ急激に下降した。得点を高中低の3群に分割し学習進度との関係をみると、低得点群の平均値が3因子とも急激に高値へと上昇した。高得点群は3因子において下降した。これらのことから学習進度に伴う学習方法や臨地実習は思いやり行動に影響を与える因子であることが明らかになった。特に授業前に評価得点の低かった学生の場合ほど、学内演習や臨地実習は思いやり行動獲得への有用な教育方法であるといえる。