日本看護学教育学会誌
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15 巻, 1 号
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原著
  • 藤野 ユリ子
    原稿種別: 原著
    2005 年 15 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2005/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     本研究は、看護学生がグループワークで感じる困難を明らかにし、終了後の満足との関係や、教員の関わり・課題・グループ人数の違いとの関係を明らかにすることを目的としたものである。看護系大学2年生452名に研究者が直接自作の質問紙を配布し、238名から有効回答を得た。その結果、グループワークにおいて困難を強く感じる学生ほど終了後の満足が低かったが、この事実から、①自分の意見を発言すること、②メンバーと合意を得ること、③メンバーと協調して進めること、④グループワークの目的把握と進め方に対する困難を軽減することの必要性が示された。また、教員が能動的に関わった場合の方が、メンバー間の相互作用に関する困難は少なく、終了後の満足も有意に高かった。課題では、抽象的なテーマの時にメンバーとの協調性や目的把握に関する困難が高かった。また、グループワークが有効に行われるための1グループあたりの人数は7-8人であることが示された。よって、教員はグループワークにおいて目的を明確に伝え、メンバー間で協力できるように能動的に関わることの必要性が示唆された。

研究報告
  • 宮脇 美保子
    原稿種別: 研究報告
    2005 年 15 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2005/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、新人看護師の1年目の体験とその意味を明らかにすることである。研究デザインは質的帰納的とし、6人を対象とした半構成的面接ガイドに基づいて実施した。データ分析には継続的比較分析法を用いた。

     コアカテゴリーは、『看護師として存在することの意味を見出す』ことであり、新人看護師が、看護専門職を目指す自分と向き合うプロセスであった。それは、〈看護師として存在することの危機)〈周囲からの支援〉(看設師としての仲間入り〉〈看設師としての展望〉という4つの局面から成っていた。

     新人看護師は、入職当初、リアリティショックによる自信喪失と自尊心の低下から〈看護師として存在することの危機)を経験していた。その後、経験を重ねて仕事が1人でできるようになることで、〈看護師としての仲間入り〉ができたと感じていた。ここに至るまでには〈周囲から支援〉が鍵となっていた。

     最終的に、新人看護師は、専門職としての環境の中で看護師として存在することの意味を見出していた。

  • 風岡 たま代
    原稿種別: 研究報告
    2005 年 15 巻 1 号 p. 25-39
    発行日: 2005/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     この研究の目的は、看護学生に医療事故防止のための教育をするために作成した誤薬のシミュレーションが、教育に必要な内容を備え、教材として妥当なものであるか否かを検証することである。

     方法は、このシミュレーションにあるリスクを枠組みにし、それにそって医療事故に関する文献に記載された事故の要因と比較した。

     枠組みの結果、ルール違反には与薬の際のルール違反と与薬を依頼する際のルール違反があった。エラーの要因は、当事者、エラーの対象(関与者、薬剤、患者)、心理的背景(エラーの種類と心理的要因)、コミュニケーションの問題に枠組みされた。文献との比較の結果、シミュレーションのリスク以外に、盛り込むことのできる要因が数多くあったが、教育的に必要かつ基本的なリスクは選ばれて盛り込まれていることが分かった。また、このシミュレーションにはコミュニケーションと心理的要因に関する内容があり、シミュレーションの教材としての要件を備えた適切なものであることが示された。

  • −心臓カテーテル検査・治療のオリエンテーション場面の関わり−
    見城 道子, 野村 志保子, 飯田 澄美子
    原稿種別: 研究報告
    2005 年 15 巻 1 号 p. 41-58
    発行日: 2005/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     本研究は、患者が不安や危機感を持つことが予測される場面に焦点をあて、そこで生じる看護師と患者の相互作用の構造を明らかにすることを目的として行なった。心臓カテーテル検査・治療を受ける患者へのオリエンテーション場面8事例を対象とし、参加観察法と半構成的質問による面接法を実施した。

     その結果、看護師の発言には[患者の検査に対する認識を知る][患者の認識を検査に向けて整える]の2カテゴリー、患者の発言には[患者が自分の思いや考えや状況を看護師に伝える][患者自身が知識を求め思いや考えや状況を整える][患者が看護師と認識を共有する]の3カテゴリーがみられた。また相互作用には、〈看護師と患者両者で進める〉〈看護師と患者両者が消極的〉〈看護師主導〉〈患者主樽〉の4パターンがあった。

     これらのことから、患者が不安や危機感を持つことが予測される場面で実施するオリエンテーションは、単に説明・指導の場として捉えるのではなく、患者自身が検査・治療を受け入れられるように援助する面接場面と位置づける必要があることが示唆された。

  • −作成した思いやり行動尺度を使用して−
    尾原 喜美子
    原稿種別: 研究報告
    2005 年 15 巻 1 号 p. 59-71
    発行日: 2005/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     大学における看護実践能力のうち、援助的対人関係能力の育成は重要な課題である。この技術の基盤となるのは思いやり行動である。看護学生の思いやり行動はどのような因子により構成されているのか、また、思いやり行動は学習進度によりどのように変化するのかを明らかにすることを目的に調査・分析を行った。対象は大学看護学科2年生である。その結果、思いやり行動は、「相手の立場に立つ」「相手の態度・表情を読み取る」「相手の気持ちを察する」の3因子で構成されていた。この3因子と授業前と授業後、実習後の学習進度にあわせた3時点の間には有意差があった。「相手の立場に立つ」は、授業前から実習後にかけてやや上昇し、「相手の行動・表情を読み取る」は、授業前から実習後にかけて下降した。「相手の気持ちを察する」は、授業前から実習後にかけ急激に下降した。得点を高中低の3群に分割し学習進度との関係をみると、低得点群の平均値が3因子とも急激に高値へと上昇した。高得点群は3因子において下降した。これらのことから学習進度に伴う学習方法や臨地実習は思いやり行動に影響を与える因子であることが明らかになった。特に授業前に評価得点の低かった学生の場合ほど、学内演習や臨地実習は思いやり行動獲得への有用な教育方法であるといえる。

  • −面接調査による看護者の認識−
    大見 サキエ
    原稿種別: 研究報告
    2005 年 15 巻 1 号 p. 73-87
    発行日: 2005/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     患者-看護者間における相互の自己開示(看護者の患者に対する自己開示、看護者に対する息者の自己開示)について看護者の認識を明らかにすることを目的に、30名の看護者を対象に半構成的面接調査を実施した。その結果、看護者の自己開示についての認識は乏しく、開示内容は表面的で浅く、患者に聞かれて開示するという消極的なものであった。一方、患者からの自己開示は多彩で深いものであり、それに対して看護者は傾聴しており、患者との関係が促進されたと認識していた。また、看護者の自己開示を促進・抑制する要因が抽出され、これらを考慮した援助の必要性が明らかとなった。今後は、この結果について患者の認識を調査し、追認する必要がある。また、自己開示について看護者の認識を高め、相互の自己開示が促進されるように看護者への教育が必要である。

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