2013 年 13 巻 2 号 p. 47-58
様々な情報や技術,創作物を社会の共有財つまり社会の“知的資本”として,広く一般に利用可能なものにし,個人や組織が自由にアクセスできるようにする事の有益性が世界的にも注目されている.しかし,そのような知的資本の共有に際しては,既存の法的枠組みや制度がその共有・流通を妨げる場合がある.社会の共通の利益のために知的資本の流通を制度的に整え,管理しようとする主体としては,NPOのような非営利セクターが,より先導的にその役割の一翼を担う事が期待される.本研究では,独自のライセンスシステムによって国際的に知識資本の管理・流通を整備しているNPOであるクリエイティブ・コモンズの取り組みを取り上げると共に,我が国のNPO法人である,“クリエイティブ・コモンズ・ジャパン”について,統計資料とインタビュー調査を通して,彼らの実践を分析,考察した.そして,本事例を通じて,NPOの組織的課題や,知識資本の管理・流通を担うインフラとしてのシステムを提供する一つの社会装置としての役割について明らかにした.