抄録
SROI評価は日本において近年,大きく脚光を浴びている.SROI評価は社会的事業のアウトカムを貨幣価値換算する評価方法であり,アメリカで誕生したのち,イギリスで発展を遂げ,日本で注目を浴びるようになった.SROIはステークホルダーを巻き込み,アウトカムをインパクトマップの形で表すなどのユニークな特徴があるが,一方で難解さや信頼性の面での批判も存在する.本研究では,実際に埼玉県においてSROI評価を実施し,その経験の中から課題を抽出することとした.その結果,ステークホルダーはSROIが誘発するコミュニケーションの価値を高く評価したが,その信頼性については十分な評価がなされなかった.今後,SROIは財務プロキシの標準化を進めるなどの信頼性向上の策をとるとともに,コミュニケーションツールとしての利用価値に光をあて,発展させていく必要がある.