抄録
ソーシャル・キャピタルと市民活動の相互関係は広く認識されているが,どのような形態の市民活動がどのような効果を及ぼすのかを分析した研究はまだ多くない.このため本論では,ソーシャル・キャピタルを構成するネットワークとして,現代的で自律型の市民活動であるNPO法人と,伝統的で地縁型の市民活動である地縁団体や行政系ボランティアに注目し,治安,健康,教育,少子化,雇用などの社会経済・生活環境面でのパフォーマンスの良好さとの関係及び,またソーシャル・キャピタルの要素である信頼や互酬性との関係を,都道府県別パネルデータを用いて実証分析した.その結果,地縁型の市民活動は,治安,健康,教育,少子化,雇用の広範な分野のパフォーマンスの良好さと関係していることが示唆された.一方,NPO法人の影響は限定的であったが,現代社会の多様化した課題を改善する可能性が示唆された.