関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 129
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左下肢前面の痛みにより長距離連続歩行困難になった症例の長距離連続歩行獲得に向けて
冨岡 大智
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抄録

【はじめに】
今回、5年前に腰部脊柱管狭窄症の手術を施行し、その後、徐々に左膝関節、下腿前面に歩行時痛を有し、痛みにより長距離歩行困難になった症例の理学療法を行う機会を得た。歩行時の左下肢のknee-in toe-outに着目し、股関節と足部からのアプローチにより連続歩行距離の向上がみられたため、以下に報告する。
【症例紹介】
 60歳代男性。5年前に腰部痛、右下肢の痺れ、痛みにより歩行困難になり手術(椎弓切除術、L2.3脊椎後側方固定、L4.5後椎体間固定)。3、4年前より長距離歩行時に左膝関節内側、左下腿前面に痛み。駅まで休まずに歩くということが目標であった。
【説明と同意】
患者に使用内容を十分に説明し、同意を得た。
【理学療法評価】
 初期評価は、痛み:約200メートルの歩行で下腿前面に痛み。反復スクワッティングテスト(knee-in toe-out)で左膝関節周囲、左下腿前面に痛み。下肢アライメント:左股関節内旋、下腿外旋、踵骨回内、足部外転、左右内側縦アーチ低下。歩行:右股関節伸展低下、左下肢墜落歩行、knee-in toe-out、左踵骨回内、足部外転。関節可動域(右/左):股関節伸展(‐15°/‐10°)足関節背屈(0°/-5°)。MMT(右/左):大殿筋(3/3)中殿筋(3/3)。
 現在は、歩行時の右股関節伸展の動きが少し出てきており、左下肢墜落歩行、knee-in toe-outもやや減少している。足部アライメントは著名な変化はない。
【治療経過】
 股関節周囲へのアプローチにより連続歩行約500メートル可能。足関節、足部へのアプローチ。徒手的アライメント修正、動作学習により約1000メートル連続歩行可能。現在、左右インソール使用中。約1500メートル連続歩行可能。インソールは踵骨の直立化、下腿内旋誘導、内側、横アーチのサポートを行った。
【考察】
 本症例の長距離連続歩行時の痛みの原因として、左下肢knee-in toe-outにより、前脛骨筋の過剰収縮、前脛骨筋への牽引ストレスが増強し下腿前面に痛みが出ていると考えられる。本症例は、股関節の可動域向上や殿筋群の筋力向上、歩行動作は改善しているが、足部機能や足部アライメントの著名な改善はしてなく、1キロ以上の連続歩行は獲得されていない。そのため、インソールを用いての足部からの動的アライメント修正も行うことでさらなる連続歩行距離の改善がみられたと考えられる。
【おわりに】
 本症例のように股関節周囲の可動域制限や筋力低下、下肢アライメント不良が著名な場合の連続長距離歩行獲得には、股関節周囲の機能向上とインソールを併用し、足部からの動的アライメント修正を同時に行うことが必要であったと考えられる。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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