日本看護科学会誌
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原著
看護を通してみえる片麻痺を伴う脳血管障害患者の身体経験
――発症から6週間の期間に焦点を当てて
山内 典子
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2007 年 27 巻 1 号 p. 1_14-1_22

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抄録

本研究は,片麻痺を伴う脳血管障害からの回復過程における患者の身体経験とその意味を,発症から6週間の期間に焦点を当て,日常の看護を通して明らかにすることを目的とした.本研究は,Heideggerの存在論とMerleau-Pontyの身体論を前提的立場とし,テーマ分析は,Bennerの解釈的現象学に基づいて行った.結果,患者は,《よそ者の身体》,《目覚める身体》,《向き合う身体》,《自分自身の身体》という4つの段階を踏んで回復していくことが明らかとなった.なかでも,《目覚める身体》は,《よそ者の身体》の中で,表立たずに芽生えはじめ,《向き合う身体》への架け橋となっていると捉えられた.これらの過程は,“心身分離状態からの解放”を表しており,そしてこの意味は,世界から閉ざされた身体が過去と現在を統合させながら,動作や道具を獲得し,それを習慣化させていくという仕方で,親密性をもって再び世界に開かれるようになることであると解釈された.

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© 2007 公益社団法人 日本看護科学学会
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