抄録
わが国においては心不全に特異的なQOL尺度が存在しないため,海外で多用されている心不全特異的QOL尺度の日本語版を作成し,その信頼性と妥当性を検討した.
日本語版作成のプロセスは原著者の指示に従い,翻訳は医療者と非医療者によるチームによって行われ,A県内の3医療機関の外来に通院する慢性心不全患者204人を対象に,調査を行った.結果は,理論的関連があると考えられるSF-36およびHospital Anxiety and Depression Scaleのすべての下位尺度間において有意な相関を示し,基準関連妥当性が確認された.また,因子分析により原版と同じ3因子構造が確認され,心機能の分類(NYHA)によるMacNew平均得点の比較から,重症者では軽度・中等度の患者よりもQOL得点が5%水準で有意に低くなることが明らかとなり,構成概念妥当性が確認された.さらに,すべてのCronbach α係数は0.7以上であり,十分な内的整合性をもつことが確認された.よって,19項目のMacNew日本語版「MacNew心疾患健康関連QOL尺度(日本語版)」の信頼性および妥当性が確認された.