抄録
目的:本研究は,日中両国において,看護師の離職行動の心理的メカニズムを「組織コミットメント」(以下OCとする)および「組織市民行動」から検討し,日中間の違いを明らかにすることである.
方法:日本の5施設180名,中国の8施設257名の看護師を対象に,自記式質問紙調査を行い,合計368名の有効データを得,Allen & Meyerモデルを参考に設定した概念枠組みに基づいて仮説の検証を行った.
結果:OCおよび組織市民行動の尺度得点および下位次元得点のすべてにおいて,有意差が認められた.OCでは,国別および経験年数の交互作用はみられず,それぞれの主効果はみられた.日本・中国・日中全体のいずれにおいても,「離職意思なし」群の看護師のOC平均値は「離職意思有」群の看護師のOC平均値より有意に高くOCが組織市民行動に有意な影響を与えていることが示された.
結論:OCは国別および経験年数によって異なり,現在のところ離職意思をもっていない看護師の方が,離職意思をもっている看護師よりOCが高いことが示唆された.さらにOCの高い看護師ほど,組織市民行動を行う傾向が確認された.