日本看護科学会誌
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32 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 野川 道子
    原稿種別: 原著
    2012 年 32 巻 1 号 p. 1_3-11
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,療養の場を問わず使用できる病気の不確かさ尺度(UUIS)を開発し,その信頼性と妥当性を検討した.研究は2段階からなり研究1では,53項目のUUIS原案を患者手記やインタビューデータを元に作成した.
    研究2では,2つの調査を行った.調査1では,様々な疾患の外来・入院患者535名のデータを元に探索的因子分析を行い26項目6因子構造(【生活予測不能性】【情報解釈の複雑性】【病気意味の手がかり欠如】【病気性質の曖昧性】【病気回復の予測不能性】【闘病力への自信の揺らぎ】)のUUISを採択した.UUIS全項目および6下位尺度ともに十分な内的整合性が得られた.併存的妥当性ではUUISとSTAI,POMSの抑うつ,マスタリー尺度と1%水準で有意な相関が認められた.なお,確認的因子分析によりUUISは容認できる適合度を有していた.
    調査2では,2型糖尿病患者で再現性を検討したところUUIS総得点では相関係数が0.74であった.
    以上の結果から,UUISは更なる検討が必要であるが,臨床での使用基準を充たしていると判断できた.
研究報告
  • ─人口6万人規模の自治体における母子保健活動の実践を通して─
    本田 光, 當山 裕子, 宇座 美代子
    原稿種別: 研究報告
    2012 年 32 巻 1 号 p. 1_12-20
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
    母子保健推進員(以下,母推とする)は地域における保健師活動の協力者である.本研究では,保健師が地域から要支援者を発見して支援につなげた際に用いた,母推とのパートナーシップを構築する保健師の技術を明らかにすることを目的とした.
    研究調査地は,農漁村地域と市街地の両方をもつ人口約6万人のA市とし,母子保健活動を担う保健師と母推を対象とした.データはインタビューおよび筆者がA市の保健師として参加観察してデータを収集し,質的分析を行った.研究期間は2009年4月~2010年3月である.
    保健師が母推とのパートナーシップを構築する際に用いた技術は次の5つであった.母推担当保健師が用いた技術は【母推の活動を共につくる】【母推との信頼関係を構築する】であった.地区担当保健師の技術は【母推によるサポートの有効性を判断する】【母推にサポートを依頼する】【母推の活動意欲を支える】であった.
  • ─ランダム化比較試験によるセルフマネジメントの検討─
    上星 浩子, 岡 美智代, 高橋 さつき, 恩幣 宏美, 原 元子, 村瀬 智恵美, 茶円 美保, 宮下 美子, 柿本 なおみ
    原稿種別: 研究報告
    2012 年 32 巻 1 号 p. 1_21-29
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
    目的:慢性腎臓病(CKD)対象者に非盲検ランダム化比較試験におけるEASEプログラムを実施し,血圧,血圧測定実施率およびセルフマネジメント行動や自己効力感が向上するかどうかを検証した.
    方法:介入群(n=19)はEASEプログラムを12週間実施し,対照群(n=12)は従来の教育を実施した.介入の効果指標は,4週ごとの平均血圧値および血圧測定実施率,セルフマネジメント行動,自己効力感である.
    結果:2群間における効果指標に有意差は認められなかったが,介入群のセルフマネジメント行動は介入前後で有意に向上した.自己効力感の中央値は介入群で上昇し,対照群は低下した.血圧測定実施率は両群とも1~4週に比べ,9~12週が有意に低下した.とくに対照群における測定実施率の低下は大きかった.
    結論:ランダム化比較試験の結果,効果指標に有意差は認められなかった.しかし介入群のセルフマネジメント行動は向上した.よってEASEプログラムはセルフマネジメント行動に効果があることが示された.
  • ─母親から子どもへの「愛着」「養育」の構成因子の抽出─
    武田 江里子, 小林 康江, 加藤 千晶
    原稿種別: 研究報告
    2012 年 32 巻 1 号 p. 1_30-39
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
    目的:母親から子どもへの「愛着」「養育」の構成因子を抽出し,項目の信頼性と妥当性を検討することである.
    方法:構成因子として「適応」「敏感性」「親密性」をあげ,それぞれに愛着的因子・養育的因子の定義づけを行い計6因子とした.文献および自己で作成した244項目を,定義に則って母性・助産の専門家と検討し60項目まで絞り込みを行った.1か月児,1歳6か月児を持つ母親344名への自記式質問紙による調査の結果から,項目の信頼性と妥当性の検討を行い,項目を絞り込んだ.
    結果:項目分析の結果を照らし合わせ,項目を入れ替えながらクロンバックのα係数を比較し,30項目を選出した.30項目のクロンバックのα係数は0.882であり,探索的因子分析では6因子が抽出された.
    結論:抽出された6因子は想定したものと完全に一致はしなかったが,愛着的因子・養育的因子には想定通り分かれており,項目の信頼性と妥当性は支持された.
  • 中西 美千代, 志自岐 康子, 勝野 とわ子, 習田 明裕
    原稿種別: 研究報告
    2012 年 32 巻 1 号 p. 1_40-49
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
    目的:ターミナル期の患者に関わる看護師の態度に関連する要因を明らかにすることを目的とした.
    方法:関東圏内のがん診療に携わる医療機関に所属する臨床経験3年以上の看護師586名を対象に自記式質問紙調査を実施した.ターミナル期の患者に関わる看護師の態度を測定するために,Frommeltのターミナルケア態度尺度を用い,「個人属性」「ターミナルケアに関する看護師の特性」,及び「看護師を取り巻く環境特性」との関連を分析した.
    結果:ターミナル期の患者に関わる看護師の態度と有意に関連がみられた要因は,「個人属性」の中で年齢や臨床経験であり,「看護師を取り巻く環境特性」の中では,看護組織のチーム力や医師との考えの共有,医療施設におけるターミナルケア提供体制において患者や家族を支援する取り組みに関する項目,インフォームドコンセント時に看護師が同席し,患者に関わる項目などであった.
    結論:看護師が組織のチーム力を高いと認知し,多職種を含めた理念の共有化を目指す組織のあり方がターミナルケアに携わる看護師を支えることにつながることが示唆された.
  • ─養育期の家族を対象とした信頼性と妥当性の検討─
    神崎 光子, 大滝 千文, 前田 一枝, 堀 妙子, 竹 明美, 大塚 弘子, 野口 多恵子, 前原 澄子
    原稿種別: 研究報告
    2012 年 32 巻 1 号 p. 1_50-58
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
    目的:FFS(Family Functioning Scale)日本語版の信頼性と妥当性を検討する.
    方法:作成したFFS日本語版を用いて予備調査の後,3歳以下の乳幼児を養育中の母親501名を対象にFFS日本語版と属性からなる質問紙調査を行い,信頼性と妥当性を分析した.
    結果:FFS日本語版はFamily APGAR Scoreとの有意な正の相関(Spearman's ρ=0.63,p<0.001)が見られた.因子分析の結果,6因子構造であることが確認され「情緒的絆と結束」「外部との関係」「家族規範」「役割と責任」「経済的資源」「コミュニケーション」と命名した.また全項目でのCronbach's α信頼性係数は0.90,下位尺度別でも0.70~0.86であり,内的一貫性が確認された.
    結論:FFS日本語版の家族機能尺度としての基準関連妥当性が確認された.また尺度の構造と信頼性が確認され,養育期家族の家族機能測定用具としての有用性が示唆された.
  • ─日中看護師の特徴─
    郭 智慧, 作田 裕美, 坂口 桃子
    原稿種別: 研究報告
    2012 年 32 巻 1 号 p. 1_59-68
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2012/03/30
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,日中両国において,看護師の離職行動の心理的メカニズムを「組織コミットメント」(以下OCとする)および「組織市民行動」から検討し,日中間の違いを明らかにすることである.
    方法:日本の5施設180名,中国の8施設257名の看護師を対象に,自記式質問紙調査を行い,合計368名の有効データを得,Allen & Meyerモデルを参考に設定した概念枠組みに基づいて仮説の検証を行った.
    結果:OCおよび組織市民行動の尺度得点および下位次元得点のすべてにおいて,有意差が認められた.OCでは,国別および経験年数の交互作用はみられず,それぞれの主効果はみられた.日本・中国・日中全体のいずれにおいても,「離職意思なし」群の看護師のOC平均値は「離職意思有」群の看護師のOC平均値より有意に高くOCが組織市民行動に有意な影響を与えていることが示された.
    結論:OCは国別および経験年数によって異なり,現在のところ離職意思をもっていない看護師の方が,離職意思をもっている看護師よりOCが高いことが示唆された.さらにOCの高い看護師ほど,組織市民行動を行う傾向が確認された.
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