抄録
本研究は,先天性心疾患をもつ子どものターミナルケアにおける看護師の体験の本質とは何かを明らかにすることを目的とした.小児専門医療施設のICUに勤務する看護師“A”に面接し,語られた内容をGiorgiによる現象学的方法を参考に分析した.その結果,不変的意味の集合体として「子どもがいつ急変するか分からない状況に巻き込まれる」「子どもの生命に直結する家族の意思決定を見守る」「子どもに積極的治療を続ける中でターミナルケアを行う」「救命現場において子どものターミナルケアのための環境を整える」「生まれながら生命危機をもつ子どもと家族の関係を支える」「遺族を気遣いながら亡くなった子どものことを語り合う」の6つの意味群が形成された.さらにすべての不変的意味から,『Aは生命に直結する心臓に障害をもって生まれた子どもの不確かなターミナル期において,子どもの身体状態の急変を予測する中で絶えず葛藤を抱えながらも家族の思いに常に寄り添い,家族が子どもとの絆を強められるように限られた条件の中で最善の環境を保障しようとしていた』というAの個別的な体験の本質が導かれた.