2021 年 41 巻 p. 373-381
目的:本研究は熊本地震後の看護職のうつ/PTSR悪化予防介入プログラムを評価した.
方法:介入群230名と質問紙調査の対照群270名を対象とした.介入群に2時間のセルフケア強化に関する心理教育と3時間の力動的集団精神療法,合計5時間を実施し,介入前後,介入1・3・6か月後に評価を行った.評価はうつ,PTSD陽性率,災害後反応,SF-8で行った.
結果:熊本地震1年7か月後の介入群のうつ,PTSD陽性率は高かった.しかしうつ/PTSR悪化予防介入プログラムでうつ,PTSD陽性率,震災後反応に変化がみられた.
考察:今回介入群のうつとPTSD陽性率は対照群と比較すると高かったが,プログラムの実施で,介入3か月後にうつは最も下がり,PTSD陽性率も6か月後に下がっていた.しかしうつは依然として強く,介入群はストレスを受けて震災後の生活を送っていた.
結論:被災後,被災者兼支援者のうつ/PTSR悪化予防を行うことでPTSD陽性率は軽減し,震災反応が変化した.
Purpose: The purpose of this study was to evaluate an intervention program designed to prevent the worsening of depression and Post-Traumatic Stress Response (PTSR) among nurses who were victims of the Kumamoto Earthquake themselves and provided care to others.
Method: This study carried out a quasi-experiment among two groups: an intervention group (n = 230) who participated in a preventive intervention program for depression and PTSR, and a control group (n = 270) to whom questionnaires were administered. The preventive intervention program comprised a two-hour psychoeducation session on self-care and a three-hour dynamic group psychotherapy session intended to promote self-care, totaling five hours. Evaluation was conducted before and after the intervention, one month later, three months later, and six months later. The evaluation indicators were depression scores, PTSD positive rates, DCTR (Dynamic Change for Trauma Response), and SF-8 (Health-related Quality of Life).
Results: One year and seven months after the Kumamoto Earthquake, depression scores and PTSD positive rates were high in the intervention group. However, after the intervention program, improvement was observed in the depression scores, PTSD positive rates and DCTR scores.
Discussion: The implementation of the preventive intervention program, depression levels and the PTSD positive rates also decreased. However, depression was still persistent, suggesting that the intervention group was leading a life under stress after the earthquake.
Conclusion: Preventive intervention program brings change PTSD positive rate and DCTR, even if it had passed one year and seven months after disaster.
地震・水害・台風など災害後の健康状態は,被災後一ヶ月前後で五大慢性疾患が増加・悪化すること,大規模災害後にうつ・心的外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder,以後PTSD)が7%~12%発生し(Stoddard, 2010),被災者兼支援者の行政職や支援職の離職・休職が増える(宇佐美,2018).Brooks et al.(2016)の調査によると,被災者兼支援者の災害後のうつ/PTSDは通常の被災者より2~3倍高く離職・休職が多くなる.災害後の被災者のうつ/PTSDに関する報告では,被災者のうつ/PTSDには年齢,性別,被災状況,ソーシャルサポート,同居の有無,健康状態が関連している(山田ら,2013;山﨑・丹野,2009;高橋,2013).しかし被災者で被災者支援を行っている自治体事務職,消防士,警察官,看護職・医療職のうつ/PTSDに関する研究は少なく,さらにうつ/PTSD予防介入プログラムは明らかではない.
うつ病は抑うつ気分や意欲の減退,不眠や過眠,食欲不振などがおこる精神状態であり,PTSDは,実際に心的外傷的出来事に遭遇しそれにまつわる苦痛な記憶,夢,フラッシュバック,心理的苦痛や生理的苦痛を生じさせる不安障害である(American Psychiatric Association, 2013).心的外傷後ストレス反応(Post-Traumatic Stress Response,以後PTSR)は予期せぬ出来事がおこった時におこる強い不安反応で災害後に通常おこる反応である.災害後急性期に出現し適切な対処で軽快していくが,一部はトラウマ体験が繰り返されることでPTSDへと移行する(兵頭,2014).災害後急性期におこりやすいうつ病の先駆状態としてのうつ,PTSDの先駆状態としてのPTSRに注目して悪化を防ぐことでうつ病,PTSDへの精神障害への移行を抑制できる(宇佐美,2017,2018;重村,2018).そこで本研究は,熊本地震の被災者で支援者である看護職のうつ/PTSR悪化予防介入プログラムを作成しその評価を行うことを目的とした.本研究を行うことで,大規模災害後の中・長期的におこるうつ/PTSR悪化を防ぎ,うつ病/PTSDの精神障害へと移行することを予防し,離職予防が可能となるだろう.
1)うつとは,気分のおちこみ,意欲の減退,不眠や過眠,食欲不振や過食,思考・行動の停止がおこる精神状態をさし,うつ病と診断される前の状態像で適切な対応によって改善する(Locke & Putnam, 1977).うつ状態をうつと表現し,うつ病とは区別する.
2)PTSRとは,予期せぬ出来事に遭遇しておこる不安反応(動悸,めまい,手に汗をかく,不眠,パニックなど)で,正常な反応であり適切な対応で改善する.災害後の急性期の反応だが一部はPTSDへと発展する(兵頭,2014).
3)うつ/PTSR悪化予防介入プログラムとは,災害後のうつ/PTSRに対し,セルフケアに関する心理教育とセルフケア推進の力動的集団精神療法を指す.
本研究は,被災者兼支援者のうつ/PTSR悪化予防介入プログラム実施群(介入群)と質問紙調査群(対照群)との比較および介入前後の比較を行う準実験研究デザインである.本研究前に予備調査を行い,うつ/PTSR悪化予防介入プログラムに参加する対象者は,精神状態に特徴があると考え,対照群を設定し介入群の介入前の状態と比較した.
2. 調査期間2017年11月20日から2019年3月30日に行った.
3. 調査方法 1) 対象者介入群は災害のあったK県のA町,B市,C市など被災の大きかった地区の被災者兼支援者で22歳から60歳で,研究参加の同意を得た人を対象とした.K県看護協会ホームページで参加者を募集した.254名の参加希望者だったが,うつ病,PTSDと診断された対象者は除外し,介入前後すべてに回答した対象者は230名だった.また対照群は介入群と同じ地区で被災者を受け入れ研究協力の得られた2つの総合病院の被災者兼支援者の看護師とした.
2) 実施方法介入群には,うつ/PTSR悪化予防介入プログラムとして,2時間の災害後のセルフケアに関する講義と3時間の力動的集団精神療法を8~10名ずつ実施した.倫理委員会で承認が得られた後,毎月1回実施した.また対照群には介入群の介入が始まった同時期に(熊本地震から1年7か月)質問紙調査を実施した(図1).介入群の予防介入プログラムは下記内容である.

フローダイヤグラム
①災害後のセルフケアに関する講義:文献検討からうつ/PTSR悪化予防を目的としたセルフケア促進に関する心理教育を2時間実施した(Brooks et al., 2016;宇佐美,2018).その内容は,普遍的セルフケア要件すなわち,食事,睡眠,活動・仕事,活動と休息のバランス,一人の時間,うつやPTSRへの対応,部下・同僚・家族との関わり方,意欲において自分の攻撃・性衝動/欲求をみつめセルフケアを意図的に展開するというものであった.
②力動的集団精神療法:災害後のうつ病/PTSD予防に関するガイドライン・文献をもとに(Ulman, 2004;Leichsenring & Klein, 2014;Kotani, 2018),セルフケアの意図的過程を展開するための力動的小集団精神療法を3時間実施した.最初の1時間は,地震と地震後の仕事,生活の変化に伴う疲労や苦しみ,悲しみに触れ,メンタライジング(考え・気持ち・行動をたどり介入者が参加者にかわって表現すること)とモザイクメイトリックス(参加者がほかの参加者の発言に左右されず自分のペースで自分を表現できるよう時間・空間を作ること)を用いて心的安全空間を作った.心的安全空間をもとに,自分の欲求からセルフケアを展開する時間・空間を作った.次の1時間はグループの心的安全空間に基づき,自我機能を起動させた.地震に関する怒り・悲しみの衝動に触れ,衝動を自己のエネルギーとし,意欲の低下,うつを認められるようにした.さらに地震を契機とする死への恐怖,地震後の生活上・仕事上の変化に伴う戸惑い,不安,心配を表現し,他者の話も聞きながら自分の状態を確認し自分だけが恐怖を感じているわけではないこと,問題の普遍性を共有した.さらに最後の1時間は,自分の衝動から欲求をもとにセルフケア上のニーズを見直し,自分の仕事,生活,家族・人との関係,生活の再構築を検討し,地震後のセルフケア能力を高め,セルフケア行動を推進した.
災害後のセルフケアに関する講義およびセルフケアの意図的過程を促進する力動的集団精神療法は,東日本大震災で実績のある小谷英文博士(PAS心理教育研究所理事長)が主実施者,精神看護専門看護師が共同実施者だった.
4. 評価指標評価は,介入前後,終了1か月後,3か月後,6か月後に行った.評価指標は①PTSDプライマリケア評定用紙,②うつ病(うつ)自己評価用紙,③震災反応の変化用紙,④健康関連QOLのSF-8を用いた.
①PTSDプライマリケア評定用紙:PTSDナショナルセンターで開発され世界的に災害後のPTSDスクリーニングに用いられ,悪夢,回避,警戒,麻痺(孤立)の4項目から構成される.4項目は「はい」「いいえ」で答え,3項目以上が「はい」だとPTSD陽性と判断する.PTSD陽性率はPTSDであることを示すものではなくPTSDへの移行の可能性,PTSD・トラウマの精査の必要性を示す(Stoddard, 2010).
②うつ病(うつ)自己評価用紙(The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale, CES-D)
うつ病を発見するためのスクリーニング用紙のCES-Dを用いた.信頼性係数は0.8,他のうつ病尺度との併存妥当性も高い.素点を用い合計得点は60点でカットオフポイントは16点,点数が高くなればうつが強い.16点以上はうつ病の可能性が高く精神医学的精査が必要である.Locke & Putnam(1977)の報告では男性10.0 ± 6.9,女性7.7 ± 7.1である.
③震災反応の変化用紙(Dynamic Changing for Trauma Reaction,DCTR)(小谷,2016)
この質問紙は震災後のセルフケアの意図的過程の変化を示す.小谷英文博士により開発され,普遍的セルフケア要件における自分のセルフケアを自分で確認する質問紙である.普遍的セルフケア要件の点数が高いと,セルフケアが高く災害後の獲得あるいは再発見が多いことを示す.点数が低いほどセルフケアが低く災害後,喪失感が強いことを示す.普遍的セルフケア要件の安眠,食欲,性欲,余暇欲,仕事への情熱,身体への自信,家族・友人・地域社会・パートナー・子への信頼・愛情,生きる意欲,プライド,自分への信頼,愛着物,地元愛,歓喜する自分,沈思する自分,希望において行動の変化を記載する.予備調査では信頼性係数0.84だったが妥当性の検討は行っていない.
④SF-8日本語版(SF-8 Health Survey)
健康状態による生活の満足度を示す質問紙としてSF-8を用いた.SF-8TMは,すでに日本でも広く使用され信頼性・妥当性も高い健康状態に関連したQOL尺度である.身体的健康サマリースコアと精神的健康サマリースコアおよび8つの下位尺度(身体機能,身体―日常役割機能,身体の痛み,全体的健康観,活力,社会生活機能,精神―日常役割機能,心の健康)から構成される.日本人国民標準値は平均得点50以下の場合には健康関連QOLが低いと判断する.
介入群においては①③④を介入前に記載してもらい②を介入前後,①②③④を介入1・3・6か月後に記載を依頼した.対照群には①から④までの質問紙記載を依頼し郵送法にて回収した.②については今の状態を記載してもらった.
5. 研究の倫理的配慮研究助成機関(WHO-ERC, ERC.0002954),熊本大学人を対象とする医学系研究倫理委員会で承認を得た(先進2209号).介入群においては対象者に研究の趣旨,目的,意義,方法,研究参加の利益と不利益,自由意志での参加,研究辞退による不利益を受けないこと,対照群との比較,個人・施設が特定されないことを伝え同意を得た.また対照群においては介入群と介入前の状態を比較するためであること,研究意義,目的,方法,研究の利益と不利益,自由意志での参加,個人や施設が特定されないことを文書で伝え,返送をもって同意とみなした.
7)分析方法:統計学パッケージSPSS,Ver.25を用いノンパラメトリック検定を行った.対照群と介入群の比較にはマン・ホイットニーの U検定とグループ間の中央値の比較を,介入群の介入前後の比較にはウイルコクソンの符号付順位和検定を,介入前・介入後・1か月後・3か月後・6か月後の比較にはフリードマン検定を用いた.
2群間には,年齢,看護師経験年数,性別で有意な差がみられた(P < .01).介入群は230名,年齢の中央値は38.0歳(22~64),看護師経験年数19.0年(4~31),CES-Dは20.0(7~49),SF-8の身体的健康42.9(21~60),精神的健康42.7(19~56),DCTRにおける介入変化–2.0(–19~16)だった.対象者は軽度から中等度のうつであり,SF-8の身体的健康,精神的健康はShibataら(2007)が報告している結果すなわち成人の男性は身体的健康得点が50.1,女性は49.0,精神的健康得点は男性が47.6,女性が47.1と比較すると低かった.またPTSD陽性率は39%と高かった.対照群は270名で,年齢の中央値28.0歳(22~63),看護師の経験年数6.0年(1~40),CES-D12.0(0~37),SF-8身体的健康49.3(19~60),SF-8精神的健康50.4(21~63),DCTRは0.0(–10~20)だった.PTSD陽性率は6%だった.
2. 介入群と対照群の比較(CES-D,SF-8,DCTR,PTSD陽性率)CES-Dについては,介入群20.0,対照群12.0で2群間で有意差が認められた(P < .01).SF-8については,身体的健康ならびに精神的健康は介入群が42.9,42.7で対照群は49.3,50.3,2群間で有意な差が認められた(P < .01).DCTRについては,2群間で有意差が見られた項目は,仕事への情熱,友人への信頼・愛情,地元愛,沈思する自分だった.PTSD陽性率については,介入群39%,対照群6%で,2群間に有意な差がみられ介入群に多かった(P < .01)(表1).またPTSD陽性率は,介入群は1か月後31%,3か月後29%,6か月後19%と低くなっていた(表2).
| 介入群 | 対照群 | Mann-Whitney U検定, χ2検定 |
介入群 | 対照群 | Mann-Whitney U検定, χ2検定 |
||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 年齢 | 38.0(22, 64) | 28.0(22, 63) | P < .01 | DCTR家族への信頼・愛情 | BL | 2.0(1, 3) | 2.0(1, 3) | NS | |
| 性別 | 男性61名(24%) | 男性21名(7.8%) | P < .01 | ||||||
| 女性193名(76%) | 女性249名(92.2%) | 直後 | 2.0(1, 3) | ― | |||||
| 看護師経験年数 | 19.0(4, 31) | 6.0(1, 40) | P < .01 | 1M | 2.0(1, 3) | ― | |||
| 3M | 2.0(1, 3) | ― | |||||||
| 6M | 2.0(1, 3) | ― | |||||||
| CES-D | BL | 20.0(7, 49) | 12(0, 37) | P < .01 | DCTR親族への信頼・愛情 | BL | 2.0(1, 3) | 2.0(1, 3) | NS |
| 1M | 20.0(7, 49) | ― | 直後 | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| 3M | 19.0(7, 44) | ― | 1M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| 6M | 20.0(7, 40) | ― | 3M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| 6M | 2.0(1, 3) | ― | |||||||
| SF-8身体的健康 | BL | 42.9(21, 60) | 49.3(19, 60) | P < .01 | DCTR友人への信頼・愛情 | BL | 2.0(0, 3) | 2.0(1, 3) | P < .01 |
| 1M | 42.9(21, 58) | ― | 直後 | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| 3M | 42.7(24, 56) | ― | 1M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| 6M | 42.7(24, 55) | ― | 3M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| 6M | 2.0(1, 3) | ― | |||||||
| SF-8精神的健康 | BL | 42.7(19, 56) | 50.4(21, 63) | P < .01 | DCTR地域社会への信頼・愛情 | BL | 2.0(1, 3) | 2.0(1, 3) | NS |
| 1M | 42.7(23, 55) | ― | 直後 | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| 3M | 42.6(29, 55) | ― | 1M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| 6M | 42.9(30, 50) | ― | 3M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| 6M | 2.0(1, 3) | ― | |||||||
| DCTR*** | BL | –2.0(–19, 16) | 0.0(–10, 20) | P < .01 | DCTR生きる意欲 | BL | 2.0(1, 3) | 2.0(1, 3) | NS |
| 直後 | 4.0(–17, 20) | ― | 直後 | 3.0(0, 3) | ― | ||||
| 1M | –2.0(–14, 16) | ― | 1M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| 3M | –2.5(–12, 10) | ― | 3M | ― | ― | ||||
| 6M | –2(–10, 10) | ― | 6M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| DCTR安眠 | BL | 2.0(1, 3) | 2.0(1, 3) | NS | DCTRプライド | BL | 2(1, 3) | 2.0(1, 3) | NS |
| 直後 | 2.0(1, 4) | ― | 直後 | 2(1, 3) | ― | ||||
| 1M | 2.0(1, 3) | ― | 1M | 2(1, 3) | ― | ||||
| 3M | 2.0(1, 3) | ― | 3M | 2(1, 3) | ― | ||||
| 6M | 2.0(1, 3) | ― | 6M | 2(1, 3) | ― | ||||
| DCTR食欲 | BL | 2.0(1, 3) | 2.0(1, 3) | NS | DCTR自分への信頼 | BL | 2(1, 3) | 2.0(1, 3) | NS |
| 直後 | 2.0(1, 3) | ― | 直後 | 2(1, 3) | ― | ||||
| 1M | 2.0(1, 3) | ― | 1M | 2(1, 3) | ― | ||||
| 3M | 2.0(1, 3) | ― | 3M | 1(1, 3) | ― | ||||
| 6M | 2.0(1, 3) | ― | 6M | 2(1, 3) | ― | ||||
| DCTR性欲 | BL | 2.0(1, 3) | 2.0(1, 3) | NS | DCTR愛着物 | BL | 2.0(0, 3) | 2.0(1, 3) | NS |
| 直後 | 2.0(1, 3) | ― | 直後 | 2.0(0, 3) | ― | ||||
| 1M | 2.0(1, 3) | ― | 1M | 2.0(0, 3) | ― | ||||
| 3M | 2.0(1, 3) | ― | 3M | 2.0(0, 3) | ― | ||||
| 6M | 2.0(1, 3) | ― | 6M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| DCTR余暇欲 | BL | 2.0(1, 3) | 2.0(1, 3) | NS | DCTR地元愛 | BL | 2.0(0, 3) | 2.0(1, 3) | P < .01 |
| 直後 | 2.0(1, 3) | ― | 直後 | 2.0(0, 3) | ― | ||||
| 1M | 2.0(1, 3) | ― | 1M | 2.0(0, 3) | ― | ||||
| 3M | 2.0(1, 3) | ― | 3M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| 6M | 2.0(1, 3) | ― | 6M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| DCTR仕事への情熱 | BL | 2.0(0, 3) | 2.0(1, 3) | P < .01 | DCTR沈思する自分 | BL | 2.0(0, 3) | 2.0(1, 3) | P < .01 |
| 直後 | 3.0(1, 3) | ― | 直後 | 2.0(0, 3) | ― | ||||
| 1M | 2.0(1, 3) | ― | 1M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| 3M | 2.0(1, 3) | ― | 3M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| 6M | 2.0(1, 3) | ― | 6M | 2.0(1, 2) | ― | ||||
| DCTR身体への信頼 | BL | 2.0(1, 3) | 2.0(1, 3) | NS | DCTR希望 | BL | 2.0(1, 3) | 2.0(1, 3) | NS |
| 直後 | 2.0(1, 3) | ― | 直後 | 3.0(1, 3) | ― | ||||
| 1M | 1.0(1, 3) | ― | 1M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| 3M | 1.0(1, 3) | ― | 3M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
| 6M | 1.0(1, 3) | ― | 6M | 2.0(1, 3) | ― | ||||
* P < .05 ** P < .01 記載は中央値(最小,最大),DCTRについてはグループ間の中央値の比較
BL:BASE LINE(介入前),1M/3M/6M:1か月後,3か月後,6か月後
NS:Non Significance(有意差なし)
***:DCTRにおいて災害後の生活における発見と再獲得したものから喪失を引いた値
| 介入群(N = 230) | 対照群(N = 270) | χ2検定 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 陽性 | 陰性 | 陽性 | 陰性 | ||
| BL時 | 39% | 61% | 6% | 94% | 90.2** |
| 1か月後 | 31% | 69% | |||
| 3か月後 | 29% | 71% | |||
| 6か月後 | 19% | 81% | |||
** P < 0.01
BL:BASE LINE(介入前)
介入前後,介入前と介入1か月後,介入前と介入3か月後において,介入前と介入3か月後のうつの改善はみられたがそれ以外の区間で有意な改善はみられなかった.6か月後も22.3とうつを持ちながら仕事を継続していた.またPTSD陽性率は介入後少なくなっていた.しかしSF-8は身体的健康も精神的健康も介入前後で有意な改善はみられなかった.さらにDCTRでは,安眠,食欲,性欲,余暇欲,仕事への情熱,身体への自信,家族への信頼・愛情,親族・友人への信頼・愛情,地域社会への信頼・愛情,生きる意欲,プライド,自分への信頼,愛着物,地元愛,沈思する自分,希望において介入前後,介入前と1か月・3か月・6か月後との間に変化がみられていた.また介入後は獲得が増えるものの月数がたつにつれ喪失を体験していた(表3).

介入群におけるうつ状態,PTSD,SF-8,DCTRの変化
対象者2群は,年齢,経験年数とも差がみられていたが,介入群のうつは16点をこえ,うつ状態からうつ病へと移行している可能性が高くうつ病の精査が必要な段階にあった.介入群では3か月までは改善がみられていたが,うつは6か月後には元に戻っていた.SF-8については,身体的健康は経過とともに低くなっており,精神的健康は改善がみられていたがどちらも有意な改善は見られなかった.DCTRは介入直後に最も改善しその後も獲得を体験していた.さらにPTSD陽性率は介入後に減少していた.
災害後のうつの変化ならびに介入方法を述べた研究は少ないが,災害後4か月後にうつ病が発症した報告がみられている(新福・原田,2015).また50歳代になるとうつが増え,特に女性,自分の健康や介護・病気に関するストレスを有しているもののうつ病有病率が高いことが報告されている(梶ら,2011).今回,対象者は40歳前であり災害後1年半がすぎていたがうつは強いながらも仕事をしていた.また山田ら(2013)の研究報告と比較すると今回の看護師のうつは強く,うつ病が疑われたが,災害後のPTSD陽性率,DCTRは介入とともに改善がみられていた.
今回,うつ,DCTR,PTSD陽性率に対する介入評価,対象者の精神状態に応じた介入,本研究の限界と今後の研究への示唆という視点で考察を行う.
1. うつ,DCTR,PTSD陽性率に対する介入評価今回の介入群の対象者はうつが強く,うつ病も疑われた.また対照群と比較してもうつが強かった.看護職は煩雑な業務,多職種連携での調整のストレス,短期間で解決しないといけない大きなストレス,患者・家族の治療経過において曖昧なまま仕事をしないといけない状況が多く,燃え尽きやうつが強く,看護職の6割が日本では燃え尽き,そのうち3割がうつ状態に移行していることも報告されている(鶴田・前田,2013).新潟県中越地震後の看護師のストレスについて山﨑・丹野(2009)は,地震後の看護師のストレスは22か月後も高く,16%が離職を考え,IES-R(Impact of Event Scale-Related,改訂出来事インパクト尺度)の再体験と回避症状を継続していたことを報告していた.さらに東日本大震災での山田ら(2013)の調査によると,震災後のストレスは仕事と家族の優先度,責任感,リーダーとしての立場が関連し,燃え尽き得点が高いとうつも強いことが報告されていた.今回,介入群のうつはカットオフポイントをこえる中等度のうつであった.また介入群の特徴として,対照群に比して有意に年齢が高く,看護師経験年数も長く,家庭や仕事での責任が増える年代にあることが理解できる.これは山田ら(2013)の調査とも同様の結果で,仕事のストレスに加え災害後のストレスが加わったことでうつが強くなったと考えられた.さらにPTSD陽性率も高かったことから被災者で支援者の看護職のストレスは災害後から1年7か月を経過した時期でも高く,継続したストレスがうつ,PTSDの可能性を強めていると考えられた.しかし今回の予防介入プログラムによりPTSD陽性率とDCTRの変化がみられていた.
災害後のうつやPTSD予防にはサイコロジカル・ファースト・エイド,セルフケアや休息の推進,ストレスマネジメント,力動的集団精神療法の効果が報告されている(Généreux et al., 2019).さらに災害後の衝動や欲求に焦点をあてたセルフケアの意図的過程への看護介入は患者のPTSRを改善することも報告されている(宇佐美,2017,2018).今回特に災害後抑圧される衝動に焦点をあて,衝動から欲求,欲求からセルフケアの意図的過程を辿ることに関する心理教育とセルフケア強化を意図した力動的集団精神療法を実施した.
災害においては怒りや悲しみを抑圧し他者への配慮から言語化することが困難となる.そのため日常生活においても衝動をもとに欲求を探し欲求からセルフケア上の目標をたて目標に対する行動の選択肢,行動の決定と実施,評価までのセルフケアの意図的過程の展開が困難になる(宇佐美,2017).従って怒りや愛情の求めに現れる衝動への介入と衝動を元にした欲求の探索,欲求からセルフケアへの意図的過程を支援することは災害後のうつ病やPTSDを予防すると考えられた.さらに,力動的集団精神療法でグループに基づく心的安全空間を生成し,集団で安全に自分の怒りや悲しみを表現しながら災害後のセルフケアを再獲得することは,うつ病・PTSDの精神障害への移行を予防し,離職予防を可能にすると考えられた(Kotani, 2018;宇佐美,2018)
今回,介入群のうつとPTSD陽性率は,対照群と比較すると高かったが,予防介入プログラムの実施で,介入3か月後にうつは最も下がり,PTSD陽性率も6か月後には下がっていた.しかしうつは依然として強く,介入群はストレスを受けながら震災後の生活を送っていると考えられた.
一方,対照群ではうつ・PTSD陽性率も介入群と比較すると低く,Iwata et al.(1989)が報告している一般的な日本人労働者のCES-D,男性10.5点,女性11.1点と同様だった.しかし日本人労働者は諸外国に比べるとうつ得点が高いことが報告され,被災者兼支援者でも1年7か月以降は日本人労働者と同じ点数であった.しかし対照群の年齢,臨床経験年数は介入群と比較すると低く,これは災害後のうつに関連する要因である仕事と家族とのバランス,リーダーとしての責任などが低い可能性も考えられた.また今回うつ病/PTSDの関連要因としての同居の有無,ソーシャルサポート,被災状況が不明であり今後これらの変数を加味していく必要性が示された.
2. 対象者の精神状態に応じた介入今回の予防介入プログラムは,災害後1年7か月後の被災者兼支援者には,うつ,DCTR,PTSD陽性率の変化を促進すると考えられた.また対照群は一般の労働者と同様のうつであり,PTSD陽性率は災害後の国際比較データと類似していた.今回のプログラムは被災者兼支援者のPTSD予防,DCTRの変化に関連していたが,うつの改善には至らなかった.被災者兼支援者のうつの改善には生活や仕事のストレスを減らす別の介入プログラムが必要と考えられた.
3. 本研究の限界と今後の研究への示唆今回,対象となった2群の特徴が異なり,特徴の違いが精神状態に関連していたと考えられた.また介入群は意図して研究に参加し,自分の精神状態を改善したいと考えていた対象者たちであったため,精神状態の変化を意識しやすい対象者とも考えられた.今回,被災者兼支援者のうつ・PTSD陽性率に影響を与える要因である被災状況の大きさ・同居の有無・ソーシャルサポートについて検討をしていないため,今後対象者の特徴を考慮した介入プログラムが必要である.さらに,PTSD陽性率とDCTRの変化を促進する介入プログラムとうつを積極的に改善していく介入プログラムを対象者の特徴に応じて実施していく必要性が示された.そして無作為化比較試験を行い,介入群と対照群の特徴を類似にした上で介入効果をみていく必要があると考えられた.また被災者兼支援者のうつ/PTSR悪化予防介入プログラムを実施できる人材育成を行い,災害後のメンタルヘルス支援活動を充実する必要性があると考えられた.
本研究は熊本地震後の被災者兼支援者である看護職のうつ/PTSR悪化予防介入プログラムを実施し評価を行った.
1)災害後1年7か月が経過しても,被災者兼支援者である看護職のうつ,PTSD陽性率は高かったが,うつ/PTSR悪化予防介入プログラムによってうつ,PTSD陽性率,震災反応は変化していた.
2)うつはプログラムによって一時的に改善したが,依然として高かった.
付記:本研究の一部は 第39回日本看護科学学会学術集会において発表した.
謝辞:本研究において災害後お忙しく余裕のない中,研究にご協力戴きました方々に感謝いたします.本研究は,世界保健機関健康開発総合研究センター(WHO神戸センター・WKC:K18005)の研究助成を受けて実施した.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:SUは研究デザイン,データ収集,分析,考察,原稿作成すべてに,SMは原稿作成,研究プロセス全体に貢献した.