日本看護科学会誌
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原著
心不全患者のアドバンス・ケア・プランニングにおける看護師の取り組み測定尺度の開発と関連要因の検討
山本 美保, 吉岡 さおり
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2021 年 41 巻 p. 723-732

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Abstract

目的:心不全患者のアドバンス・ケア・プランニング(ACP)における看護師の取り組み測定尺度の開発とその関連要因を検討する.

方法:循環器科勤務の看護師に質問紙調査を実施し,尺度の信頼性と妥当性を検討した.重回帰分析により関連要因を分析した.

結果:572名を分析対象とした(有効回答率:29.9%).因子分析の結果【対話を継続するための取り組み】【心不全と共に生きていくことを支える取り組み】【病の軌跡を共有する取り組み】【患者の意思をつむいでいく取り組み】【患者の価値を知ろうとする取り組み】の5因子が抽出された.確認的因子分析の結果,仮説モデルの適合度が確認された.信頼性はCronbach’s α = .77~.90 で,基準関連妥当性は看護師の自律性尺度との関連で確認された.重回帰分析の結果,認知能力,ACPに対する自信・知識,心不全の緩和ケアに関する知識が主な関連要因として示された.

結論:本尺度の信頼性と妥当性が検証された.関連要因に基づく教育プログラムの開発が今後の課題である.

Translated Abstract

Objective: To develop a scale of nurses’ efforts in advance care planning (ACP) for heart failure patients and to examine the factors related to nurses’ ACP efforts.

Methods: A questionnaire survey was conducted with nurses working in cardiology wards, and the scale’s reliability and validity were examined. Multiple regression analysis was performed to explore the factors associated with the nurses’ ACP efforts for heart failure patients.

Results: Data obtained from 572 participants were analyzed (valid response rate: 29.9%). Five factors and 32 items were extracted from an exploratory factor analysis. The five factors were “Efforts to continue dialogue,” “Efforts to support life with heart failure,” “Efforts to share the patient’s illness trajectory,” “Efforts to share the patient’s hopes,” and “Efforts to explore patient values.” A confirmatory factor analysis was conducted and the hypothesized statistical model was found to fit the actual data. Reliability was confirmed by Cronbach’s alpha coefficient for the subscales; its value ranged from .77 to .90. Validity was confirmed by the correlation coefficient between the scale of nurses’ ACP efforts and the scale for professional autonomy in nursing. Multiple regression analysis was performed with nurses’ ACP efforts as the dependent variable. The main factors related to the nurses’ ACP efforts were determined to be cognition (a subscale of the scale for professional autonomy in nursing), confidence in ACP, knowledge of ACP, and knowledge of palliative care of heart failure patients.

Conclusion: The reliability and validity of this scale were verified. Future challenges include developing an educational program for nurses that is based on these results.

Ⅰ. 緒言

心不全は増悪と寛解を繰り返しながら徐々に身体機能が低下していく進行性の疾患である.突然死や予測できない急性増悪がある一方で,小康状態が長期間続く場合もあり,予後予測が難しく,終末期への移行も不明瞭である.そのため終末期を含めた将来の状態変化に備えるためのアドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning,以下,ACP)が重要とされており,急性・慢性心不全診療ガイドラインにおいても,心不全が症候性となった早期の段階からのACPが推奨されている(日本循環器学会/日本心不全学会,2018).さらに循環器疾患における緩和ケアについての提言では,ACPの概念の整理の必要性や心不全患者を想定したACPの実施方法が提案されている(日本循環器学会/日本心不全学会,2021).

心不全患者のACPに関する近年の研究を概観すると,心不全患者のACPの概念分析により,その定義や特徴について検討がなされている(山本・吉岡,2020;西田,2021).また,心不全患者のACPの効果に関するシステマティックレビューおよびメタアナリシスでは,心不全患者の生活の質や終末期におけるコミュニケーションの質の改善などの可能性が示されているが(Schichtel et al., 2020),その一方で実施された研究の質の問題が指摘されている(Nishikawa et al., 2020).

以上のように,心不全患者のACPに関する議論が進められている一方で,心不全の不確かな病の軌跡や併存疾患の存在などが予後やエンドオブライフに関するコミュニケーションの障壁となっていることや(Hjelmfors et al., 2014),看護師は医療スタッフがACPを行う方法を知らず,ケア目標に関する多職種メンバー間での意見の不一致を認識しているとの報告もある(Tokunaga et al., 2020).これらのことから,ACPにおける看護師の取り組みに課題があることが推察されるが,その実態は明らかにされていない.従って看護師が行うACPの取り組みの実態を把握し,さらにそれらを向上させるための方法を検討することは重要な課題であると考える.また,看護師は,心不全の予後に関する話し合いへの消極的な態度を示し,心不全の臨床経過に関する知識や患者の意思を確認するための技術不足等に困難感を抱いていることから(土肥ら,2020;渡邉ら,2020),まずはACPを行う上で必要となる基礎的な知識・技術を学ぶ機会の提供が必要であると考えた.本研究では基礎的な教育介入の示唆を得ることを目的とし,関連が予測される要因として看護師の知識,技術,ACPに対する認識に関する項目を設定した.

以上のことから,本研究ではまず,心不全患者のACPにおける看護師の取り組みの実態把握のための評価ツールを作成する.そして,その取り組みを向上させるための基礎的な教育介入の示唆を得るために,看護師の取り組みに関連する要因の検討を行うことを目的とする.

Ⅱ. 用語の定義

ACPにおける看護師の取り組みは,山本・吉岡(2020)の概念分析で示された心不全患者のACPの定義を参考に「患者が家族・医療者とともに価値を探求し,疾患管理のための生活の編み直しをしながら,最悪の事態への備えとして,病みの軌跡に関する認識を合わせることや,納得したケアゴールに向けた対話を繰り返し,患者の意思をつむいでいくプロセスにおける看護師の積極的な態度や姿勢を含む行動」とする.

Ⅲ. 研究方法

1. 尺度原案の作成

山本・吉岡(2020)の概念分析で示された7つの属性「希望を持ちながら最悪の事態への備え」「その人の価値の探求」「疾患管理を見据えた生活の編み直し」「病みの軌跡に関する認識を合わせること」「納得したケアゴールに向けた対話」「段階的で継続的な取り組み」「患者の意思をつむいでいくこと」を構成するサブカテゴリを参考に50項目のアイテムプールを作成した.さらに,文献検討(Stuart, 2007;角田,2019)と研究チーム(尺度開発に精通した研究者1名,エンドオブライフケア領域の研究者2名)で議論を重ね,項目の追加,修正を行い,尺度項目は58項目となった.

次に慢性心不全看護認定看護師(以下,慢性心不全看護CN)等,心不全患者のACPに関わる看護師3名,慢性期看護領域の研究者4名,計7名を対象に,尺度の内容妥当性を検討する質問紙調査を実施し,Content Validity Index(CVI)を算出した(Lynn, 1986).その結果,CVI = 57/58 = 0.98であった.自由記載にあった助言を参考に,再度項目の削除,追加,修正を行い,最終的に68項目の尺度原案を作成した.

2. 研究対象者

日本看護協会ホームページの慢性心不全看護CN登録者一覧に記載のある認定看護師のうち,病院勤務をしている者が所属する施設(2020年8月時点,308施設)の中から承諾が得られた123施設に所属する,臨床経験年数2年目以上,循環器科など心不全患者が多く入院する病棟に勤務する1,909名の看護師を対象とした.なお,尺度開発するにあたり,対象施設は地域に偏らず,かつ心不全看護が実践されている施設を選択するために,全国の慢性心不全看護CNが所属する施設を選択した.

3. 調査方法

対象者が所属する施設の看護部長に研究協力の承諾を得て調査を実施した.なお,各施設の対象者数は,研究実施承諾書に対象者となる看護師数を記入してもらうことで把握した.各施設の対象者数分の質問紙を研究者から施設担当者へ郵送し,対象者への配布を依頼した.回収は個別郵送法で回収した.調査期間は2020年10月~12月であった.

4. 調査内容

1) 対象者の背景

性別,年齢,臨床経験年数,循環器科での経験年数,看護師以外の認定資格の有無,ACPに関する学習経験の有無,心不全の緩和ケアに関わる多職種チーム体制の有無,心不全緩和ケアに関する多職種チームやリソースナースへの相談経験の有無,実践における手本の有無等の項目を設定した.

2) 心不全患者のACPにおける看護師の取り組み測定尺度(以下,尺度原案)

68項目の尺度原案を使用した.回答形式は「1.まったくできていない」~「5.かなりできている」の5段階リッカートスケールとした.

3) 看護師の専門職的自律性尺度(以下,看護師の自律性尺度)

菊池・原田(1997)によって開発された看護の専門職的自律性を構成する状況の認知,判断および実践の3側面から測定する尺度であり「認知能力」「実践能力」「具体的判断能力」「抽象的判断能力」「自立的判断能力」の5因子47項目から構成されている.尺度は内的整合性,構成概念妥当性が確認されている.ACPを行う上では患者・家族の状況を把握し,ケアを提供するための認知能力・判断能力など高い看護実践能力が必要である.このことから,ACPにおける看護師の取り組みとある程度の関連がある概念であると推測し,基準関連妥当性の検討を目的に質問紙に含めた.

4) ENDCOREs

藤本・大坊(2007)によって開発されたコミュニケーションスキルを測定する尺度であり「自己統制」「表現力」「解読力」「自己主張」「他者受容」「関係調整」の6因子24項目から構成されている.尺度の内的整合性と構成概念妥当性,基準関連妥当性が確認されている.

5) 心不全患者のACPに関する知識に対する主観的評価

文献検討(Schichtel et al., 2019;Tokunaga et al., 2020)や研究チームで議論を重ね,心不全患者のACPに必要な知識をどの程度持っていると認識しているかを問う項目を本研究で作成した.重回帰分析の独立変数に投入することを想定して尺度化を試みた.主成分分析で尺度の一次元性を確認後に因子分析を行い,「ACPに関する知識」「心不全の緩和ケアに関する知識」「心不全看護に関する知識」「心不全の臨床経過に関する知識」の4因子19項目が抽出された.各因子のCronbach’s α = .89~.93であり,因子ごとに得点を合計して分析しても差し支えないと判断した.

6) ACPに対する自信

文献検討(Hjelmfors et al., 2014;Tokunaga et al., 2020)や研究チームで議論を重ね,ACPに必要な多職種連携や対話的態度等に対してどの程度自信を持っているかを問う13項目を本研究で作成した.13項目を主成分分析した結果,第1主成分の負荷量が全項目.4以上であり,Cronbach’s α = .95であったことから,得点を合計して分析しても差し支えないと判断した.

5. 分析方法

分析には統計ソフトSPSS ver. 27とAmos ver. 27を使用し,次の分析を行った.項目分析は,各変数の記述統計量を算出し,欠損値の頻度の確認,天井効果と床効果を示す項目の確認,各項目間相関分析,Item-Total相関分析(以下I-T分析),Good-Poor analysis(以下G-P分析)を行った.探索的因子分析では,項目分析で整理された項目を主成分分析した上で,主因子法,プロマックス回転による因子分析を行った.確認的因子分析では,抽出された因子を潜在変数,それに属する項目を観測変数としてモデルを作成し,共分散構造分析を行った.モデルの適合度指標は,Goodness of Fit Index(GFI),Adjusted Goodness of Fit Index(AGFI),Comparative Fit Index(CFI),Root Mean Square Error of Approximation(RMSEA)を用いた.GFI,AGFI,CFIは0.9以上,RMSEAは0.08以下であれば適合度が高いと判断する,山本・小野寺(2002)の基準を参考にした.

基準関連妥当性の検討では,看護師の自律性尺度との相関係数を算出して検討した.内的整合性の確認は,尺度全体と各因子のCronbach’s α係数を算出した.関連要因の検討では,心不全患者のACPにおける看護師の取り組みを従属変数,その他の調査項目を独立変数とする重回帰分析(ステップワイズ法)を実施した.

6. 倫理的配慮

本研究は京都府立医科大学医学倫理審査委員会の承認を得た(受付番号:ERB-E-456).対象者に対し個人や施設の匿名性を保証し,調査協力の承諾は,質問紙の同意欄へのチェックで確認した.対象者に文書にて研究の目的と方法,匿名にて行うこと,研究協力は自由意思であること,データ管理などについて説明した.尺度の使用にあたり開発者に使用許可を得た.

Ⅳ. 結果

調査の結果,回収数は611(回収率32.0%)であった.有効回答数572名(有効回答率29.9%)を分析対象とした.

1. 対象者の属性

分析対象者は女性497名(86.9%),男性74名(12.9%),臨床経験年数は12.3 ± 8.3年,循環器科での経験年数は6.5 ± 5.0年であった(表1).

表1  対象者の属性 n = 572
項目 人数 %
性別 女性 497 86.9
男性 74 12.9
無回答 1 0.2
年齢 20歳代 199 34.8
30歳代 203 35.5
40歳代 129 22.6
50歳代 37 6.5
60歳代 3 0.5
無回答 1 0.2
認定資格の有無 認定看護師*1 41 7.2
専門看護師 1 0.2
循環器系の認定資格*2 8 1.4
その他の認定資格 19 3.3
なし 503 87.9
学習経験(複数回答) 看護基礎教育 61 10.7
大学院や認定課程での教育 6 1.0
院内研修 177 30.9
病棟勉強会 155 27.1
学会等への自主的な参加 152 26.6
自己学習 135 23.6
特になし 184 32.2
無回答 2 0.3
心不全患者の緩和ケアに関わる多職種チーム体制 ある 331 57.9
ない 241 42.1
緩和ケアに関する多職種チーム・リソースナースへの相談の経験 ある 364 63.6
ない 208 36.4
看護実践における手本 いる 455 79.5
いない 117 20.5
平均値 標準偏差 範囲
臨床経験年数 12.3 8.3  1.5~42.0
循環器科での経験年数  6.5 5.0 0.08~30.8

注:*1 この内38名は慢性心不全看護認定看護師

注:*2 心臓リハビリテーション指導士,高血圧・循環器病予防療法士など

2. 項目分析

尺度原案68項目のうち,欠損値の頻度が高いもの,天井・床効果を示す項目はなかった.I-T分析,G-P分析においても削除に該当する項目はなかった.項目間の相関係数が.7以上であった6項目を削除した.これを,心不全患者のACPにおける看護師の取り組み測定尺度–62(以下,ACP取り組み測定尺度–62)とした.

3. 探索的因子分析と因子の命名

ACP取り組み測定尺度–62を主成分分析した結果,第1主成分の因子負荷量が全項目で.4以上であり,一次元性が確認された.

次に主因子法,プロマックス回転による探索的因子分析を行った.因子数の決定については,回転前の累積寄与率が3~4因子で50%を超えること,アイテムプール作成時に参考にした概念分析の7つの属性に類似した因子が抽出されることを想定していたことから,4~7因子を抽出基準として検討した.因子負荷量.4未満の項目や複数に高い負荷量を持つ項目を除外し,因子の解釈や尺度の簡便性を考慮しながら分析を行い,最終的に32項目5因子を採用し,これを心不全患者のACPにおける看護師の取り組み測定尺度(以下,ACP取り組み測定尺度)とした(表2).

表2  心不全患者のACPにおける看護師の取り組み測定尺度の結果(主因子法-プロマックス回転) n = 572
項目 因子負荷量
I II III IV V
第I因子(10項目)対話を継続するための取り組み α = .90
23. 家族の意向について個別に話し合う機会を設けている .78 .10 –.27 .05 .00
24. 自身の意向を文書に書き残しておくことや誰かに伝えておくことを患者に勧めている .63 –.04 –.27 .18 .16
25. 今後行われる心不全治療が生活に与える影響を患者・家族がイメージしやすいように説明している .62 –.03 .15 –.09 .15
51. 患者の心不全の病期に合わせて次の局面を想定した内容の話し合いをしている .60 –.13 .05 .20 .04
22. 心不全の診断早期から患者と対話する機会を設けている .58 .20 –.06 .00 –.03
41. 患者が表明した価値や意向は入院のたびに患者とともに振り返っている .55 –.06 .05 .16 .08
26. 患者の精神的負担を考慮して話し合う内容やタイミングを調整している .54 .11 .23 –.19 .05
27. 患者が希望する活動(外出,イベントの参加など)を行うための具体的な方法を患者・家族と検討している .54 .04 .09 .00 .06
50. 今後の予測される経過について医師と連携を取りながら家族に情報提供をしている .52 –.04 .10 .22 –.02
42. 具体的な話し合い(蘇生処置等)が必要な時期を医療者間で検討している .49 –.04 .19 .16 –.13
第II因子(6項目)心不全と共に生きていくことを支える取り組み α = .87
16. 患者が出来ているセルフケアを認め今後も継続できるように励ましている .08 .74 .05 –.09 –.04
17. 患者の希望を尊重する姿勢で関わっている –.03 .71 .00 .03 .08
12. 患者が表明した気がかりや不安を受容する姿勢で関わっている –.23 .66 .20 .07 .13
15. 患者が不安などの感情を表出できるように関わっている –.07 .62 .00 .07 .19
19. 患者の今までのセルフケア方法を尊重する姿勢で関わっている .23 .57 .04 –.06 –.05
13. 患者のことをよく知る家族等の人物は誰かを知ろうとしている –.12 .51 .13 .13 .05
第III因子(7項目)病の軌跡を共有する取り組み α = .86
38. 経過の中で気持ちが揺れるのは当然と捉え患者に関わっている –.23 .08 .77 –.05 .18
34. 患者の意思や考えは記録に残している –.16 .06 .70 –.01 .07
37. 患者が今後のことを考えられる心身の状態かアセスメントしている .10 –.01 .63 –.02 .16
52. 患者・家族の考える心不全のイメージと現実の相違がある場合は補足説明をしている .23 .01 .51 .02 .01
45. 患者の将来への希望的観測も尊重する姿勢で関わっている .09 .03 .49 .21 .00
30. 心不全が進行性の疾患であることを家族に伝えている .17 –.06 .46 –.03 .16
54. 今後も適切な治療とケアを提供していくことを患者に保証している .03 .14 .45 .14 .00
第IV因子(5項目)患者の意思をつむいでいく取り組み α = .84
61. 日常的に患者・家族間でのコミュニケーションを促している .09 .06 –.13 .62 .12
63. 患者の希望や意向が実現できているか定期的に評価している .17 .07 –.04 .58 .00
62. 患者が意向を示した後でも気持ちが変ればその都度医療者へ知らせるように伝え続けている –.10 .14 .19 .54 .01
67. 患者の今までの意思決定パターンについて情報収集している .14 –.12 .04 .52 .18
66. 患者にとっての「納得」とは何かを探求する姿勢で関わっている .10 –.03 .06 .50 .16
第V因子(4項目)患者の価値を知ろうとする取り組み α = .77
3. 心不全の増悪を繰り返すたびに患者の気持ちやゆらぎを知ろうとしている .00 –.02 .21 –.02 .62
5. 患者が示した意向の背景にある考えや価値を知ろうとしている .08 .12 –.01 .07 .58
2. 日頃から患者の価値観や信念に触れるようなコミュニケーションをとっている –.07 .12 .00 .21 .51
4. 必要時,今後急変したときの対応について患者の考えを確認している .24 .00 –.13 .14 .43

注:尺度の得点結果

第I因子:30.0 ± 6.9(1項目の平均:3.0)

第II因子:23.4 ± 3.0(1項目の平均:3.9)

第III因子:25.2 ± 4.3(1項目の平均:3.6)

第IV因子:15.9 ± 3.5(1項目の平均:3.2)

第V因子:13.5 ± 2.6(1項目の平均:3.4)

尺度合計得点:108.0 ± 17.3(1項目の平均:3.4)

第I因子は,早期から患者・家族と対話の機会を設けることや,患者の病期や精神的負担などを考慮して対話の内容やタイミングを調整する内容で構成されていることから【対話を継続するための取り組み】と命名した.第II因子は,患者のセルフケアや希望を尊重し,セルフケアの継続を支援する内容で構成されていることから【心不全と共に生きていくことを支える取り組み】と命名した.第III因子は,経過の中で気持ちが揺れることや患者の希望的観測も受け入れながら,心不全の軌跡を共有する内容で構成されていることから【病の軌跡を共有する取り組み】と命名した.第IV因子は,家族間のコミュニケーションを促すことや定期的な評価を通して患者の意思表明を支援し,患者の意思を共有していく内容で構成されていることから【患者の意思をつむいでいく取り組み】と命名した.第V因子は,増悪を繰り返す心不全の経過の中で,患者の気持ちを知ろうとする態度や,そのために関わり方を工夫する内容で構成されていることから【患者の価値を知ろうとする取り組み】と命名した.

4. 確認的因子分析

心不全患者のACPにおける看護師の取り組みの5因子を潜在変数とし各因子に属する32項目を観測変数とする5因子モデルの確認的因子分析を実施した.その結果,適合度指数は,GFI = .862,AGFI = .840,CFI = .900,RMSEA = .061であった(図1).

図1 

心不全患者のACPにおける看護師の取り組み測定尺度の確認的因子分析の結果

5. 基準関連妥当性の検討

外的基準である看護師の自律性尺度との関連では,r = .53(p < .001)と中程度の相関を認め,因子別では,「自立的判断能力」以外の因子と有意な正の相関を認めた(表3).

表3  心不全患者のACPにおける看護師の取り組み測定尺度と看護師の自律性尺度との関連 n = 572
心不全患者のACPにおける看護師の取り組み測定尺度
合計得点 第I因子 第II因子 第III因子 第IV因子 第V因子
看護師の自律性尺度の合計得点 .53*** .45*** .51*** .55*** .41*** .38***
I:認知能力 .56*** .46*** .52*** .56*** .46*** .39***
II:実践能力 .48*** .42*** .46*** .48*** .37*** .32***
III:具体的判断能力 .48*** .40*** .48*** .49*** .37*** .34***
IV:抽象的判断能力 .50*** .47*** .39*** .46*** .44*** .36***
V:自立的判断能力 .10* .02 .23*** .22*** .01 .11*

注:Spearmanの順位相関係数,*** p < .001,** p < .01,* p < .05

6. 信頼性の検討

尺度全体のCronbach’s α係数は.95,各因子では.77~.90であり,内的整合性が確認された.

7. 関連要因の検討

ACP取り組み測定尺度合計点を従属変数とした重回帰分析を行った.その結果,看護師の自律性尺度の下位尺度である「認知能力(β = .34, p < .01)」「自立的判断能力(β = –.11, p < .01)」,ACPへの自信を示す「ACPに対する自信(β = .26, p < .01)」,知識に対する主観的評価の下位尺度である「ACPに関する知識(β = .11, p < .01)」「心不全の緩和ケアに関する知識(β = .11, p = .02)」,看護師の属性,経験に関する項目である「緩和ケアに関する多職種チームやリソースナースへの相談経験(β = .11, p < .01)」「看護実践における手本(β = .09, p < .01)」「循環器科での経験年数(β = .07, p = .04)」「臨床経験年数(β = –.18, p < .01)」との関連が確認された.調整済み決定係数は,R2 = .54であった(表4).

表4  心不全患者のACPにおける看護師の取り組みの関連要因 n = 572
従属変数 独立変数 β P値
心不全患者のACPにおける看護師の取り組み測定尺度合計点 看護師の自律性尺度:認知能力 .34 <.01
看護師の自律性尺度:自立的判断能力 –.11 <.01
ACPに対する自信 .26 <.01
ACPに関する知識 .11 <.01
心不全の緩和ケアに関する知識 .11 .02
緩和ケアチームやリソースナースへの相談経験 .11 <.01
看護実践における手本 .09 <.01
循環器科での経験年数 .07 .04
臨床経験年数 –.18 <.01
調整済みR2 .54

注:ステップワイズ法,βは標準偏回帰係数

注:重回帰に投入した独立変数

1.臨床経験年数

2.循環器科での経験年数

3.ACPに関する学習経験 なし=0,あり=1

4.心不全の緩和ケアに関わる多職種チーム体制 なし=0,あり=1

5.緩和ケアチームやリソースナースへの相談経験 なし=0,あり=1

6.看護実践における手本 いない=0,いる=1

7~11.看護師の自律性尺度 5因子(認知能力,実践能力,具体的判断能力,抽象的判断能力,自立的判断能力)

12~17.ENDCOREs 6因子(自己統制,表現力,解読力,自己主張,他者受容,関係調整)

18~21.心不全患者のACPに関する知識に対する主観的評価 4因子(ACPに関する知識,心不全の 緩和ケアに関する知識,心不全看護に関する知識,心不全の臨床経過に関する知識)

22.ACPに対する自信

Ⅴ. 考察

1. 心不全患者のACPにおける看護師の取り組み測定尺度の信頼性と妥当性

信頼性の検討においては,基準値以上の信頼性係数が得られ,尺度の内的整合性が確認された(Devellis, 2003).

妥当性の検討においては,まず,尺度原案作成段階における内容妥当性を検討した.4件法による適切性の評価を得たことにより,各項目の客観性を確保できたと考える.次に,外的基準として設定した看護師の自律性尺度との有意な相関が得られたことから,基準関連妥当性が確認された.

さらに確認的因子分析では,CFI = .900とRMSEA = .061は基準を満たし,GFI = .862,AGFI = .840はモデル採択の目安とされる値を下回ったが,近似であることから総合的に妥当と判断した(山本・小野寺,2002).以上のことから,本尺度は一定の信頼性と妥当性を備えた尺度であると考える.

2. 心不全患者のACPにおける看護師の取り組みの構成要素

ACP取り組み測定尺度を構成する5因子として【対話を継続するための取り組み】【心不全と共に生きていくことを支える取り組み】【病の軌跡を共有する取り組み】【患者の意思をつむいでいく取り組み】【患者の価値を知ろうとする取り組み】が抽出された.

ACPは,その人の価値観,人生の目標,将来の治療やケアに関する選好を理解し,これらについて話し合い,共有していくプロセスと定義されているように(Rietjens et al., 2017;Sudore et al., 2017),何かを決定することではなく,患者の意向を知るための話し合いや価値を共有するプロセスであり,これは本尺度の第一因子にある“対話”に相当するものであると考える.また,ACPでは,自分が何を大切にして生きていくのかといった正解のない問を考え続けることでもあり(津金澤,2019),医療者との対話を通じて,患者自身が考え続けることを支える取り組みが重要となる.よって【対話を継続するための取り組み】は,心不全患者のACPにおいて基盤となる因子として位置づけることができると考える.

また,循環器疾患における緩和ケアについての提言(日本循環器学会/日本心不全学会,2021)に示されたACPの実践方法のうち「病状理解を尋ねる」「予後について話し合う」は【病の軌跡を共有する取り組み】に,「支えになるものについて話し合う」「欠かせない能力について話し合う」は【患者の価値を知ろうとする取り組み】に類似していると考える.西田(2021)が示した慢性心不全患者のACPの8つの属性のうち,不確かな予後のなかにあっても,疾患と共に日々を生きていくことの見通しと準備を示す「EOLを見通す」は【心不全と共に生きていくことを支える取り組み】に,患者の意向を継続的・反復的に確認し見直すことや定期的に積み重ねることを示す「継続的・反復的なプロセス」は【患者の意思をつむいでいく取り組み】に類似していると考える.

さらに,本研究で明らかになった5因子は,尺度項目の基盤となった山本・吉岡(2020)が示した心不全患者のACPの7つの属性 のうち,「納得したケアゴールに向けた対話」「疾患管理を見据えた生活の編み直し」「病みの軌跡に関する認識を合わせること」「患者の意思をつむいでいくこと」「その人の価値の探求」の5つに類似していた.因子として抽出されなかった他の2つ属性として,増悪と寛解を繰り返し予後予測が難しい心不全のACPに必要なスタンスである「希望を持ちながら最悪の事態への備え」や,ACPの継続的なプロセスを意味する「段階的で継続的な取り組み」は,抽出された因子全体に包含されたと考える.

以上のことから,本尺度は先行研究に裏付けられた因子から構成されていることが示唆された.

3. 本尺度の意義

心不全患者のACPは,社会的ニーズの高い重要なケアであるにも関わらず,十分に実施されていない現状が推察される.その要因として,心不全患者のACPの具体的内容が曖昧である点が挙げられる.本尺度は5因子から構成されていることにより,ACPとして何を意図した取り組みを行うかが具体化され,看護師が心不全患者のACPに取り組む手がかりになると考える.今後は,心不全患者のACPに関する教育プログラムを開発し,本尺度を教育評価に活用していくことで,看護師が意識的にACPに取り組むきっかけの一助となることが期待される.

4. 心不全患者のACPにおける看護師の取り組みに関連する要因の特徴

心不全患者のACPにおける看護師の取り組みに関連する主な要因として,認知能力(看護師の自律性尺度),ACPに対する自信,ACPに関する知識,心不全の緩和ケアに関する知識が示された.

看護師の自律性尺度にある「認知能力」は,開発者である菊池・原田(1997)によると,正確な状況認知を指し,治療が患者に及ぼす影響の予測や患者の価値観を理解するなどの内容から構成されている.ACPで話し合われる内容は患者の価値や希望なども含まれることから(National Health Service, 2014),患者の自己概念や価値信念に関わる心理社会的支援が重要となる.そのため日々の患者・家族の語りから,潜在的な価値・信念を理解するために必要な認知能力が関連要因として抽出されたことは,妥当な結果であると考える.

ACPに関する知識と心不全の緩和ケアに関する知識は,先行研究でもACPに関連する要因として示されている(Schichtel et al., 2019;Tokunaga et al., 2020).また,今回の結果からACPに対する自信が関連要因として示されたが,石川(2018)は専門的知識と技術を保有していることが,自信に影響を及ぼすことを示している.以上のことから,看護師への教育介入の展望として,まずは知識の習得を目指したプログラムの必要性が示唆された.渡邉ら(2020)の調査結果より看護師によってACPの捉え方に差が生じている現状が推察されることから,プログラムの内容としては,ACPとは何をすることなのか,心不全患者の病の軌跡や緩和ケアの必要性といった基本的な知識の提供と認識の共有に重点を置く必要があると考える.

5. 本研究の限界と今後の課題

今回の調査では,尺度開発と関連要因の検討を同時に行ったため,質問紙に含める項目数の制限から網羅的な関連要因の探索ができたとはいえない.循環器疾患領域においても,質の高い医療を効率的に提供できる体制構築のための病床機能分化が進められており(厚生労働省,2020),今後は看護師の特性だけでなく,施設の特性,受け入れている患者の特性といったあらゆる側面から,ACPにおける看護師の取り組みに関連する要因を詳細に分析していく必要があると考える.

Ⅵ. 結論

今回,心不全患者のACPにおける看護師の取り組み測定尺度の開発とその関連要因の検討を試みた.その結果,32項目5因子が抽出され,【対話を継続するための取り組み】【心不全と共に生きていくことを支える取り組み】【病の軌跡を共有する取り組み】【患者の意思をつむいでいく取り組み】【患者の価値を知ろうとする取り組み】と命名した.また,尺度の信頼性と妥当性が確認された.関連要因の検討では,認知能力(看護師の自律性尺度),ACPに対する自信,ACPに関する知識,心不全緩和ケアに関する知識が主な関連要因として示された.今後はこれらの結果に基づいた教育プログラムの開発が必要である.

謝辞:本研究の実施にあたり,ご協力いただいた看護師の皆様および病院関係者の方々に心より感謝申し上げます.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:MYは本研究を着想し,デザイン,データの収集,分析,結果,考察,論文作成を担当した.SYは研究プロセス全体,結果,考察に助言し,論文に加筆・修正を加えた.最終原稿は両著者により承認されている.

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