目的:急性期病院で働く看護師のフォロワーシップの構成概念を明らかにした.
方法:18名の看護師に半構造化面接を行い,内容分析の方法で分析した.
結果:看護師のフォロワーシップは‘管理者の迅速なリスクマネジメントを促進する’,‘クリティカルな状態に対応した患者中心の看護ケアを追究する’,‘優れた行動特性を持つ’,‘刻々と変化する情報を管理者と共有する’,‘管理者に提案し変革を支援する’,‘管理者の方針に意見する’,‘刻々と変化する業務のマネジメントを迅速に補佐する’,‘メンバーのメンタルヘルス改善に向けて行動する’,‘メンバーの育成に貢献する’,‘チーム内のコミュニケーションを促進する’であった.
結論:看護師のフォロワーシップは,管理者のリスクマネジメントを促進し,専門職として患者中心のケアを追究する態度で,メンバーのメンタルヘルスや教育に積極的に関わり,看護管理者のリーダーシップと協働していた.
Purpose: To clarify the construct of nurses’ followership in acute hospitals
Method: In this study, a total of 18 nurses participated in a semi-structured interview and were analyzed using the qualitative content analysis method.
Results: Nurses’ followership is organized into 10 categories and 40 subcategories. These 10 categories are as follows: Encourage administrators to provide prompt risk management; Pursue patient-centered care for critical conditions; Have excellent behavioral characteristics; Share ever-changing information with administrators; Provide suggestions to administrators and help them change; Provide feedback on administrator’s policies; Promptly assist in the management of ever-changing work; Improve the mental health of staff; Contribute to staff development; and Promote communication within the team.
Conclusion: Nurses’ followership promoted risk management by administrators to avoid crisis situations associated with patient safety. This study illustrated that follower nurses were actively involved in improving the mental health and education of staff while collaborating with nurse administrators.
組織の成果にリーダーの影響力が及ぶ割合は2割に過ぎす,残りの8割はフォロワーの力によるとされる(Kelley, 1992).フォロワーとは,リーダーの指示に従う立場にあり,リーダーを支援する者を言う(Bjugstad et al., 2006).また,フォロワーシップは,リーダーシップと同様に,組織の目的改善と達成のために影響を与える(Crossman & Crossman, 2011).このため,リーダーとフォロワーの協働こそが,高い成果を生み出す(Graen & Uhl-Bien, 1995)と言われている.フォロワーシップは,マネジメントを執る立場の管理者もその上司と協働する際はフォロワーとしての役割を果たす(Bedeian & Hunt, 2006)と言われており,フォロワーも場面が違えばリーダーとしてリーダーシップを執ることもある(Rost, 1995).また,フォロワーシップが効果的である場合には,強力なリーダーシップが無くてもフォロワー自身が考えて任務を遂行し,リーダーと同様に多くの価値を組織に提供する(Kelley, 1988).有能なフォロワーは,自分自身をうまく管理し,組織や目標にコミットし最大限の能力を発揮することを惜しまず,勇気があり正直で信頼に足る資質を持つとされている(Kelley, 1988).さらに,Kelley(1992)は対象者のフォロワーシップを測定する尺度を開発し,フォロワーシップのタイプを5つに類型化した.この尺度は,ホテル従業員(Fobbs, 2010;Kang et al., 2016)や,銀行員(Caesar, 1999)をはじめ,あらゆる業種の従業員(Favara, 2009;Jin et al., 2016),そして学校教員(Hinić et al., 2017;Oyetunji, 2013)を対象に調査されており,保健医療分野においても調査が報告されている(Crawford & Daniels, 2014;Gatti et al., 2017).しかし,フォロワーシップのスタイルと職務満足や業務の業績については,一貫した傾向がつかめておらず,フォロワーシップ研究の文献レビューを報告したLeungら(2018)は,研究対象集団の不均一性が一般化に限界を及ぼしていることを指摘している.
一方,Sakashita(2018)はリーダーシップ研究の報告の中で,優れたフォロワーに支えられている日本の看護組織について言及しており,日本の“タテ社会”という組織構造に影響を受けつつ,フォロワーの中からリーダーが育てられることを説明している.しかしながら,看護師はフォロワーとしてどのような行動をとっているのかを明らかにした研究は国内外に見当たらない.
そこで本研究の目的は,急性期病院で働く看護師のフォロワーシップの構成概念を明らかにすることとした.急性期医療を担う医療施設においては,迅速かつ複雑に医療が展開されており,リーダーとフォロワーの協働はその成果に与える影響が大きいと考えられる.リーダーとのより良い協働によって組織目標を達成する看護師のフォロワーシップの在り方を検討することは,質の高い医療を提供する組織を構築するために意義がある.
フォロワーシップとは「リーダーと協働しながら組織目標の達成と改善にむけて良い変化を生み出すための能力や資質(Carsten et al., 2010: Graen & Uhl-Bien, 1995)」とした.
2. 研究デザイン質的記述的研究による探索的研究
3. 対象A県内の4つの医療施設を対象とした.対象施設は主として二次医療圏等の比較的広い地域において急性期医療を中心に地域医療を支えている基幹病院が望ましいと考え,病院機能評価の一般病院2の機能種別で,過去4年以内に認定を得ている施設であること,当機能種別で最も多い受審区分である200床以上を有する医療施設から選定した.対象となる看護師の包含基準は,リーダー業務を経験しており,フォロワーシップ行動を含めた日常業務を言語化できると考えられる臨床経験5年以上とした.また,所属部署の直属の上司である看護師長とうまく協働しながら,看護を実践できている看護師のリクルートを看護部長に依頼した.除外基準として,本研究では,臨床でスタッフとして働く看護師のフォロワーシップに焦点を当てるため,看護副師長,看護係長,主任など中間管理職の役割をもち看護師長の管理業務を代行する役割を持つ看護師は対象から除外した.
4. データ収集方法2020年9月~11月に,半構造化面接法で実施した.面接は対象者の希望を取り入れ環境調整し,面接内容が漏れることが無い場所で実施した.インタビューガイドは,Carstenら(2010)が複数の業界で働く対象への面接調査で使用したものを参考に開発した.質問項目は,属性,フォロワーとしてどのように仕事をしているか,上司(看護師長)とどのように関わっているか,上司を支援する行動を執っているか等について聴取した.面接内容は了承を得てICレコーダーに記録した.面接中は,研究者が適宜メモを取ることの了解を得て実施した.
5. データ分析方法本研究で明らかにするフォロワーシップは,看護師がフォロワーシップをどのように意味付け,定義付けているのかを分析するため,体系的な記述を導く内容分析(Krippendorff, 1980)を採用し,質的データの意味を帰納的アプローチにより,概念抽出することを目指した.データ分析は,Graneheim & Lundman(2004)が示した方法に基づき実施した.先ず,ICレコーダーに記録したデータは全文を遂語録に起こし,全体を繰り返し精読した.次に,文脈の意味単位に十分な大きさを見図りながら,分析に必要な記述を切り取り,凝縮された意味単位を決定しコード化した.この凝縮された意味単位は,その類似性に沿って,さらに高次元の見出しの下にグループ化した.これをサブカテゴリ,カテゴリへと集約して類似の意味ごとにまとめた.なお,面接は分析と並行して実施した.意味単位をまとめたサブカテゴリが,13番目の研究対象者から新たに抽出されて以降,続く14番目からの5名の研究対象者には,新たなサブカテゴリが生成されなかったことから,看護師のフォロワーシップを十分に聞き取れたとみなし,18名の面接で調査を終了した.面接は平均43分16秒(最短28分11秒,最長54分08秒)であった.分析結果は,質的研究の経験のある専門家,看護管理学の専門家に確認を依頼し,同じカテゴリへと帰結することを確認し最終決定とした.
6. 倫理的配慮本研究は,順天堂大学大学院医療看護学研究科研究等倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:順看倫第2020-8).研究対象者には,研究の目的,方法,研究対象者の選定方法,研究参加による利益とリスク,同意の撤回方法と権利,試料と情報の保管方法,結果の公表方法,個人情報等の取り扱いについて,口頭と文書による説明を行い,書面で同意を確認した.
研究対象者は,平均年齢が30.6歳(26~42歳)で,他業種で職業経験があるものが2名,現在は助産師として勤務するものが1名であった.通算経験年数は平均7.8年目(6~11年目),現在の部署での経験年数は平均5.6年目(1~11年目)であった.研究協力施設は2施設で,ともに急性期一般入院料1を算定している急性期医療を担う医療施設であった(表1).
| No. | 年代 | 性別 | 通算経験年数 | 現在部署経験年数 | 部署/診療科 | 過去の診療科 | 他業種経験 | 経験している役割 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 30代前半 | 男性 | 7年目 | 7年目 | 手術室 | ― | ― | 防災チームメンバー/周術期管理チーム認定 |
| B | 20代後半 | 女性 | 6年目 | 1年目 | 外科系 | ICU | ― | 急変対応委員/新人指導係 |
| C | 20代後半 | 女性 | 7年目 | 7年目 | 救急 | ― | ― | スキルアップナース/教育係 |
| D | 30代前半 | 女性 | 11年目 | 11年目 | 内科系 | ― | ― | 業務改善委員/スキルアップナース/学生指導 |
| E | 30代後半 | 女性 | 6年目 | 6年目 | 外科系 | ― | 有 | 固定チームリーダー/プリセプター |
| F | 20代後半 | 女性 | 7年目 | 7年目 | 外科系 | ― | ― | チームリーダー |
| G | 40代前半 | 男性 | 6年目 | 2年目 | 精神科 | 救急 | 有 | チームリーダー/スキルアップナース |
| H | 20代後半 | 女性 | 6年目 | 4年目 | 外科系 | 手術室 | ― | チームリーダー/アソシエートナース/療養支援ナース |
| I | 30代前半 | 女性 | 11年目 | 11年目 | 外科系 | ― | ― | 業務改善委員 |
| J | 20代後半 | 女性 | 8年目 | 8年目 | 内科系 | ― | ― | 教育担当/クリニカルパス係 |
| K | 20代後半 | 女性 | 6年目 | 2年目 | 外科系 | 内科系 | ― | アソシエートナース/急変対応委員 |
| L | 20代後半 | 女性 | 6年目 | 6年目 | 手術室 | ― | ― | プリセプター/消化器外科チームリーダー |
| M | 30代前半 | 男性 | 9年目 | 9年目 | 外科系 | ― | ― | 療養支援委員/がん看護チーム・サブリーダー |
| N | 20代後半 | 女性 | 6年目 | 6年目 | 内科系 | ― | ― | 急変対応委員/実習指導/勉強会係/チームリーダー |
| O | 30代前半 | 女性 | 9年目 | 2年目 | 外来 | 外科系/ICU | ― | 記録委員/チームリーダー/ケーススタディ指導係 |
| P | 30代前半 | 男性 | 10年目 | 2年目 | 外科系 | ― | ― | クリニカルパス係/フットケアチームメンバー |
| Q | 30代前半 | 女性 | 10年目 | 1年目 | 内科系 | ICU/内科系 | ― | 感染委員会副委員長/ケーススタディ指導係 |
| R | 30代前半 | 女性 | 10年目 | 9年目 | 産科 | 小児科 | 助産師 | 記録委員 |
協力施設:約700名の看護職を有する約500床の医療施設,約600名の看護職を有する約700床の医療施設の2施設
研究対象者には,面接の実施順にAからRまで記号を用いて匿名化をして表記した.分析結果は,カテゴリを【 】,サブカテゴリを〈 〉,意味単位を『 』で示した.
2. 急性期病院で働く看護師のフォロワーシップ研究対象者から最小8,最大20の意味単位を取り出し,合計265の意味単位を抽出した.これらは40のサブカテゴリ,10のカテゴリに収束した.それは【管理者の迅速なリスクマネジメントを促進する】【クリティカルな状態に対応した患者中心のケアを追究する】【優れた行動特性をもつ】【刻々と変化する情報を管理者と共有する】【管理者に提案し変革を支援する】【管理者の方針に意見する】【刻々と変化する業務のマネジメントを迅速に補佐する】【メンバーのメンタルヘルス改善に向けて行動する】【メンバーの育成に貢献する】【チーム内のコミュニケーションを促進する】であった(表2).以下に,代表的な意味単位を挙げて説明する.
| カテゴリ | サブカテゴリ |
|---|---|
| 管理者の迅速なリスクマネジメントを促進する | インシデントやクレームに管理者の迅速対応を依頼する 移り行く患者状況から起こり得るインシデントやクレームを予測し管理者に伝達する |
| クリティカルな状態に対応した患者中心のケアを追究する | 変化する治療に応じて看護の方針を再検討する 緊急性を踏まえて丁寧な患者のアセスメントを行う 患者中心のケアを行う 患者中心の態度をとる 自分の専門分野を生かしたケアを行う |
| 優れた行動特性をもつ | 自己成長を追究する 自律的な判断をする 自律的な内省をする 誠実で倫理的な態度をとる ポジティブな態度・行動をとる |
| 刻々と変化する情報を管理者と共有する | 移り行く状況に応じて管理者の情報更新を支援する 効果的なチームケアに向けて管理者に情報提供を行う 効果的な職種連携に向けて管理者に対応を依頼する |
| 管理者に提案し変革を支援する | 管理者の方針を踏まえて動く 新しい方法を提案する 新しい取り組みにメンバーを巻き込む |
| 管理者の方針に意見する | 自分の意見を管理者に伝える 管理者に苦言を呈する 管理者の考えを自分なりに考え,意味づける |
| 刻々と変化する業務のマネジメントを迅速に補佐する | 急変や重症化に備えて効果的な看護ケアにつながるベッド配置に資する 安全な看護ケアを可能にする人員配置・業務調整に資する 流動的な割り込み業務に備えて環境を整備する メンバーを率先して支援する 業務の進行を把握する 適正な業務分配を促進する ミスなく業務を行うために働きかける 時間外労働が減らせるように行動する 部署の方針の浸透を促す |
| メンバーのメンタルヘルス改善に向けて行動する | メンバーのメンタルヘルスに関わる情報を管理者に伝える メンバーのメンタルヘルス改善に向けて配慮する |
| メンバーの育成に貢献する | メンバーの育成について管理者と協働する 勉強会を企画しメンバー育成を支援する メンバーの育成に直接かかわる メンバーへの重要なメッセージは明確に伝える |
| チーム内のコミュニケーションを促進する | 多職種とのコミュニケーションをとる 業務を促進するコミュニケーションをとる 後輩へのコミュニケーションに配慮する コミュニケーションを促進する態度と行動をとる |
看護師は,緊急時の問題事項に直面したとき患者の治療が安全かつ確実に進むよう,管理者に速やかな対応を依頼する.『手術準備に対して.強い口調で「答えたくない」「行きたくない」の一点張りで.理由を伝えてダメなら一旦,師長に相談して.』(O)というように,〈インシデントやクレームに管理者の迅速対応を依頼する〉.また,『ひとり,よく喋られる患者さんがおられたんですけど,ひとりはすごくしんどそうな顔をされていて.患者さんから直接訴えはないんですけど,お部屋の調整が要りそうだなって思った時に,先ずは師長に現状を伝えて.』(D)というように,入退院のたびに様変わりする病室内の人間関係や患者個々の過ごしやすさを察知し,〈移り行く患者状況から起こり得るインシデントやクレームを予測し管理者に伝達する〉.
2) 【クリティカルな状態に対応した患者中心の看護ケアを追究する】看護師は,『痛くないのは良いけど,レスキュー使うのが多いかなって気になって.そこは先生(医師)に聞いてみて(考える).』(M)と語るように,〈変化する治療に応じて看護の方針を再検討する〉ことに努める.『今,何が必要か,検査が先かなとか,症状がある人は考えながらみている.』(O)に代表されるように〈緊急性を踏まえて丁寧な患者のアセスメントを行う〉ことに意識をおく.また,『その人らしい生活ができるようにと思って関わっている.』(J)というように〈患者中心のケアを行う〉ことを心がけ,『患者さんとの約束は守る.遅くなっても約束は果たす.』(M)に見られるように〈患者中心の態度をとる〉.そして,『(私の知識が)求められているっていうのもあるかもしれませんが,伝えているし,動いている.』(G)と語っているように〈自分の専門分野を生かしたケアを行う〉.
3) 【優れた行動特性をもつ】看護師は,『環境を変えて勉強したい気持ちがあって,異動の希望を出しています.』(N)に代表されるように〈自己成長を追究する〉姿勢で考え行動している.『先輩の負担軽減にもなるし,指示を待たずに自分にできる限りのところで周囲に指示を出して声かけをしている.』(L)と率先して〈自律的な判断をする〉.『今年の課題は箇条書きにしていて.来年はどうしていこうか,ベース作りをしている.』(K)に見られるように〈自律的な内省をする〉ことを意識におく.『メンバーとのマナーは大事にしている.』(O)の言葉に見られるように〈誠実で倫理的な態度をとる〉.『楽しく仕事したいっていう根本(的な気持ち・考え方)が大きい(強い).新人の成長が楽しみ.』(M)との言葉が代表するように〈ポジティブな態度・行動をとる〉.
4) 【刻々と変化する情報を管理者と共有する】看護師は複雑で把握しにくい業務の進捗状況を報告している.『患者に関することは師長にわかりやすいように情報提供するのを心掛けているのと,メンバーと師長を取り持つ間としては,メンバーは今,こういう状況だっていうのを自分たちから見ている目線で師長に伝えて情報共有している.』(F)というように,〈移り行く状況に応じて管理者の情報更新を支援する〉.また,他部署と連携が必要なことが円滑に進むように『師長に相談して,師長が救急(部門)にお願いしてくれたりとか.』(O)と,部門対部門の関わり方へ配慮し〈効果的なチームケアに向けて管理者に情報提供を行う〉ことを語った.職種を超えて改善の必要性がある問題事項を察知した時も管理者を巻き込む.看護師は,『主治医が「いい」って言うから,良いってする人もいるとは思うんですけど.私は違うって思って.師長に相談して「腑に落ちないんですけど」って.師長を動かしたいなって思ったところで,それ言いました.』(G)と,〈効果的な職種連携に向けて管理者に対応を依頼する〉ことを語っている.
5) 【管理者に提案し変革を支援する】看護師は,『師長は,数年後に周術期外来を作りたいっていう思いがあるみたいなので.私も率先してその資格を取りに行ったりはしていて.』(A)と,管理者の構想を元に自己のチャレンジについて説明し,〈管理者の方針を踏まえて動く〉ことを念頭においている.また,『カルテのトップ画面の掲示板に,ケアマネはどこのだれでとか,要介護状態だけど,未申請だとかを書くようにして.相談員に任せきりになっているので,徹底できるようにマニュアルをカートに付けたんです.』(M)と具体例を語った看護師のように,目標達成に必要なアイデアを提供することで〈新しい方法を提案する〉.看護師は『週間業務があって,曜日変更を提案したんです.メンバーと一緒にアンケートを作って,メンバーも変更した方が良いと意見が多くて.師長さんに提案して変更させて貰いました.』(C)と語るように,周囲のメンバーの意見を反映させて〈新しい取り組みにメンバーを巻き込む〉ことを意図的に行っている.
6) 【管理者の方針に意見する】看護師は,『先輩には言いにくい(後輩の)意見をしっかり聞いて,たくさんのメンバーの意見を聞いて,他に反対の意見があったとしても,そこはしっかり聞きつつ,自分の意見を上に伝えます.』(D)と語るように,たとえメンバーに反対の意見があっても〈自分の意見を管理者に伝える〉.看護師は必要時,〈管理者に苦言を呈する〉.『(師長の依頼業務に)私たちも振り回されたけど,そんなことをしたら,プリセプターがかわいそうじゃないですか,やる気をなくすと思うんですよね.ちょっと,怒りました.「すごく混乱しています」って.』(K)と語るように,管理者のイエスマンにならず批判的な意見を提示している.また,『アソシエイトらができないから(私たちに仕事が)回って来たんじゃない,勉強会の企画とか,定期的に1年目の評価があるし,仕事量を考えて減らしてあげたいって(師長が)思ったのだろうなと.』(K)と語るように,〈管理者の考えを自分なりに考え,意味づける〉ことを通して当該業務が妥当なのかを自分自身で評価している.
7) 【刻々と変化する業務のマネジメントを迅速に補佐する】看護師は,『状態が悪くなったとか,不穏になりそうだとか近くにするのはどうかと(師長に)伝える.』(N)に代表されるように〈急変や重症化に備えて効果的な看護ケアにつながるベッド配置に資する〉ことに努める.また,『この日,この勤務配置だと難しいと思いますって,言っています』(B)と述べているように,師長に意見を伝え〈安全な看護ケアを可能にする人員配置・業務調整に資する〉ことを実践している.
さらに,『オペ終了の連絡が来たりとか,業務が集中したときの応援体制も想定して早めに業務を片付けておく.』(I)に代表されるように〈流動的な割り込み業務に備えて環境を整備する〉こと,『手が空けば,先輩後輩関係なく仕事を手伝う.』(H)に見られるように〈メンバーを率先して助ける〉など,予定外業務の割り込みも想定しながら業務を遂行しメンバーの働きやすさに貢献する.『メンバーもやるべきことをやっているか確認しながらやっています』(P)とあるように〈業務の進行を把握する〉ことを意識して,メンバー全体の仕事の進捗状況から,『業務に追われずに看護の達成感みたいなものが味わえるようにフォローできたらいいなと思うので,助けます』(C)に見られるように〈適正な業務分配を促進する〉よう働きかけている.
さらには,『うちの病棟で苦手なこと,抜けやすいところを洗い出しましょうって,声をかけている』(R)と説明するように,〈ミスなく業務を行うために働きかける〉と同時に,『時間外業務をせず,できるだけ時間内でする.休憩時間も自分もきちんととるし,後輩も取るように言う』(Q)と,メンバー全体の〈時間外労働が減らせるように行動する〉ことを体現している.『患者の問題はできるだけ早くかかわる,不信感や不満が少なくなるよう,メンバーと共有する』(O)というように,周囲に〈部署の方針の浸透を促す〉.
8) 【メンバーのメンタルヘルス改善に向けて行動する】看護師は,『私が客観的に見て無理そうだなって思ったので.自分から師長には言わないだろうと判断しましたし,師長に伝えました』(D)と語るように,管理者が気づいていないメンバーの危機や心配事など,〈メンバーのメンタルヘルスに関わる情報を管理者に伝える〉.看護師は,『理不尽なこと,言われることもあるじゃないですか.ちょっとフォローしていったりとか,声かけたりはしますよね.』(M)と語るように,日常業務の合間を縫って〈メンバーのメンタルヘルス改善に向けて配慮する〉ことをおこなう.
9) 【メンバーの育成に貢献する】看護師は,『私から言うと角が立つこともあるので,師長に伝えて言ってもらいます.』(K)に代表されるように,個々のメンバーの特徴に合わせて配慮し〈メンバーの育成について管理者と協働する〉.実際には,『委員会で決めた目標があって.それに沿って勉強会を病棟で実施しています.』(R)と語るように,〈勉強会を企画しメンバー育成を支援する〉.
また,『身体面(の知識)は伝えないといけないと思っています.1年目には教えています.』(G)に代表されるように,〈メンバーの育成に直接かかわる〉.また,『感情的にならないように,冷静に指導して次の看護につなげていけるように伝えています.』(I)と述べているように〈メンバーへの重要なメッセージは明確に伝える〉ことを意識におく.
10) 【チーム内のコミュニケーションを促進する】看護師は,『患者の家族の考えは,事前に先生(医師)に伝えておく.』(O)と述べているように,〈多職種とのコミュニケーションをとる〉ことを心がける.また,『この患者はこういう性格だとか,薬はこうして欲しい,何時にカーテンは閉めて欲しいと思っているとか,細かい看護のことを申し送って,他の看護師もできるように.』(I)と患者に必要な配慮がチーム全体に周知されるように,意図的に〈業務を促進するコミュニケーションをとる〉.
メンバー間においては,『忙しいときに,新人に「〇〇さん」って言われたら,きちんと普通に対応するようにしています.』(H)に代表されるように〈後輩へのコミュニケーションに配慮する〉.関わる人々の特徴に応じて,『後輩にはこちらから声かけるし,相談受けたら一緒に考える.』(N)に見られるように,〈コミュニケーションを促進する態度と行動をとる〉.
有効なフォロワーシップを発揮する看護師は,管理者のリスクマネジメントの促進に向けて行動し,管理者への迅速な情報提供や早期対応を促進していた.本研究の対象は急性期病院の看護師であることから,治療開始と同時に起こる予測不能で複雑な患者状況に注目し,医療の使命である患者の安全保障(Dzau, 2018)を担保するため,管理者と協働することが求められているためと考えられる.フォロワーシップの概念についてリスクマネジメントの促進を抽出した先行研究はみあたらず,本研究では急性期病院の看護師に独自の構成概念を抽出できたと考える.
また,有効なフォロワーシップを発揮する看護師は,クリティカルな状態に対応した患者中心の看護を目指し高いパフォーマンスを追求する姿勢を持ち,自律した省察行動をもとに,更なる目標設定を行い,専門職として成長に向う行動と姿勢が見られた.看護師という専門職集団では,管理者が持つ知識や経験を越えた高い専門性を持つ看護師をマネジメントすることもある.質の高い看護ケアの実現には,管理者の想定を越えて,フォロワーである看護師が個々のニーズに応じて自律的に学び続ける必要があると考えられる.ゆえに,有効な看護師のフォロワーシップは,職位と専門知識が時には順当でない管理者との関係性の中で,専門職ならではの高い専門性を発揮しながら貢献する独特の協働の仕方が存在していると考えられる.
さらに,有効なフォロワーシップは,周囲からの信頼を心がけ,礼儀正しくマナーを大切にし,約束を守るなど倫理的規範の高さが特徴として見られた.Agho(2009)は,フォロワーの望ましい特性として,信頼性,忠誠心,協力を挙げており,今回の調査結果と一致する.フォロワーの倫理観について先行研究では,管理者やチームの基準ではなく,フォロワー自身の倫理基準に基づいて行動すること(Kelley, 1992)や,倫理的問題がある状況において,周囲の圧力に屈することなく良心に従って行動する(Chaleff, 1995;Carsten et al., 2010)という特徴が挙げられている.本調査で明らかになった優れた行動特性は,組織で業務に従事するフォロワー共通の概念であると考えられる.
2. リーダーシップと協働する看護師のフォロワーシップの実相刻々と変化する情報を管理者と共有するという看護師の行動は,管理者の最適なマネジメントを導く一助となると考える.Kelley(1992)は,有効なフォロワーシップは潜在する可能性やリスクの両方に管理者が気付けるように手助けすると述べている.急性期病院での展開の早い看護業務において,中堅層となる看護師のフォロワーシップが安定的な管理者の情報更新を支援していると推察される.今回の結果では,先行研究で管理者が気づけるように手助けすると記述されたことの具体的な行動が独自の概念として抽出できたと考えられる.また,管理者に提案し変革を支援する看護師の行動は,勇敢なフォロワーが変革に全面的に参加することを指摘したChaleff(1995)の記述と一致していた.管理者の方針に意見するという看護師の行動は,たとえ管理者からの反論に遭おうとも,重要なことは自分の意見を主張し,管理者の命令にただ従うのではなく,管理者の決定事項を内省的に問い直す習慣を持つ(Kelley, 1992)という有効なフォロワー特性に裏打ちされた行動であると考えられる.
看護師はフォロワーとして刻々と変化する業務のマネジメントを迅速に補佐し,メンバーのメンタルヘルスの改善や育成に向けた関わりを率先し,目標達成に向けてコミュニケーションを促進していた.看護師がフォロワーとして管理者の業務のマネジメントを迅速に補佐することは,Chaleff(1995)が述べた勇敢なフォロワーシップが,時には管理者の負担を肩代わりしながら,リーダーと共に組織目標の達成に向かう姿勢を持つことに類似していた.また,看護師がメンバーの仕事環境を整備したり,メンバーを率先して支援するのは,たとえ自分の名誉につながらなくても,他の同僚らの評価が良くなるように支援するとKelley(1992)が述べたことと類似していた.さらに,コミュニケーションを促進するといったフォロワーの行動は,Carstenら(2010)が,フォロワーの行動特性としてコミュニケーション能力を抽出し,チームプレーヤーであることを指摘したのと一致していた.
しかしながら,看護師がメンバーのメンタルヘルス改善に向けて行動することや,メンバーの育成に貢献するといったフォロワーの具体的行動は先行研究には報告されておらず,本研究独自の概念が抽出できたと考えられる.看護師には,メンバーのメンタルヘルスの保持や能力育成が看護管理者の役割の中での重要な事柄(Gokenbach & Thomas, 2020)として認知され,意図的にリーダーシップと協働しているためと推察された.
本研究は,急性期病院で働く1県2施設の看護師を対象に調査を実施した.施設機能や地域性の偏りに関しては不明であるため,急性期病院以外で働く看護師を対象とした調査や対象地域を広げた調査を実施し,今回明らかになったフォロワーシップの概念が転用可能か検討する必要がある.また,今回の対象者は管理的な業務を担わない看護師を対象とした.看護師長など,管理業務を担う看護師のフォロワーシップを探索することは今後の課題である.
付記:本研究は順天堂大学大学院医療看護学研究科博士後期課程で提出する博士論文の一部に加筆・修正したものであり,24th East Asian Forum of Nursing Scholars Virtual Conference 2021にて発表した.
謝辞:本研究の遂行にあたり,ご協力いただいた研究対象者の皆様に心よりお礼申し上げます.本研究は,2019~2021年度科学研究費助成事業(学術研究助成金)基盤研究(C)(19K10828)の助成を受けたものである.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:KYは,研究のデザインからデータの収集と分析,および論文の執筆を行った.SIは,研究全体の指導を行った.MNは,質的研究の分析指導を行った.すべての著者は,最終的に原稿を読み,了承した.