日本看護科学会誌
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総説
小児在宅療養における親とのパートナーシップに関する訪問看護師の実践:質的研究の文献検討
朝見 優子矢郷 哲志岡光 基子
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2023 年 43 巻 p. 133-142

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Abstract

目的:小児在宅療養における親とのパートナーシップに関する訪問看護師の実践を文献検討により明らかにし,看護の示唆を得る.

方法:PubMed,CINAHL,医学中央雑誌を用い,小児在宅療養における親と訪問看護師のパートナーシップに関する質的研究を検索し,パートナーシップに関する看護実践を抽出して内容分析を行った.

結果:9文献を分析した結果,〈いつでも親の力になれる訪問看護師の実践〉〈子どもの最善に取り組む三者関係からみた訪問看護師の実践〉〈親と最適な関係を築こうとする訪問看護師の実践〉が抽出された.

結論:親に寄り添い,子どもの最善を追求し,長期にわたり関係を調整する訪問看護師の具体的実践が明らかとなり,小児在宅療養の特性を理解した上で親と関係を構築する重要性が示唆された.小児在宅療養に関わる訪問看護師に特徴的なパートナーシップの実践を具現化し,評価や教育に活かすツールの検討が必要である.

Translated Abstract

Objective: To clarify the practices of visiting nurses regarding partnerships with parents in pediatric home care settings through a review of qualitative literature and to obtain suggestions for nursing care.

Methods: Original qualitative research articles reporting the partnerships between parents and visiting nurses in pediatric home care were searched on the following databases: PubMed, CINAHL, and the Ichu-shi Web. Data on nursing practices related to partnerships with parents was extracted from the included articles, and content analysis was performed.

Results: Nine articles were included in this review. Through the analysis, the following themes were extracted: “practices of visiting nurses who can always empower parents,” “practices of visiting nurses from the perspective of a tripartite relationship working for the best of the child,” and “practices of visiting nurses who try to build optimal relationships with parents.”

Conclusion: Visiting nurses supported the parent’s feelings, sought the best for the child, and adjusted the relationship over time. This review suggests the importance of building a relationship with the parents based on an understanding of these characteristics. Therefore, to achieve the best relationship with parents, identifying what visiting nurses are doing to partner with parents and developing a scale to assess and educate visiting nurses about partnership practices are imperative.

Ⅰ. 緒言

先進各国において,医学の進歩に伴う医療的ケア児の増加などを背景として,小児在宅療養の重要性が高まっている.日本においても,医療的ケア児の総数(0~19歳)は,2021年に20,180人と推計され増加傾向にあり(厚生労働省,2021),地域生活支援の充実を図るため,2021年に医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律が施行されるなど,法整備が進められている.

こうしたなか,在宅療養児の親は,児の高度で複雑な医療的ケアを担い,大きな負担や困難を経験している.訪問看護は,親を支える重要な支援であるが(Jachimiec et al., 2015田辺・林,2012),在宅療養児の親とケア提供者の間では,役割交渉におけるコンフリクト(Kirk, 2001),プライバシーの侵害などのストレス(Patterson et al., 1994),ケア分担に関するジレンマ(Leiter, 2004),期待や切迫感など感情的ニーズの不一致(Brotherson et al., 2010),親の力量などに関する認識のずれ(Dickinson et al., 2006Smith & Kendal, 2018)等の課題も報告される.両者の関係性に関するナラティブ・レビューにおいても,コンフリクトに着目され,相互作用や意思決定などの様相について,さらなる探求とエビデンスの必要性が示唆されている(LeGrow et al., 2022).

ヘルスケアシステムのあり方として,世界保健機関(World Health Organization: WHO)が,専門職主導のパターナリズムから,人々が尊重され主体的に行動するPeople-Centered Careへの転換を提唱しているように(WHO, 2017),小児看護領域においては,Family-Centered Careや親とのパートナーシップが重要である(McIntosh & Runciman, 2008Barratt et al., 2021).パートナーシップは,親と看護師双方から求められ(Dickinson et al., 2006),効果的なサービス提供に寄与する(McIntosh & Runciman, 2008Ward et al., 2015).しかし,パートナーシップの理念は提唱されているが,パートナーシップを構築するプロセスは明確でないとの指摘がある(McIntosh & Runciman, 2008Smith et al., 2015Barratt et al., 2021).パートナーシップは実践レベルにおいて,状況や環境の特性が影響し,多様な様相を呈する(Gottlieb et al., 2006/2007).たとえば成人や高齢の在宅療養者の場合,訪問看護師は,対象者のケアや意思決定に家族が強く関与するなかで対象者自身の意思決定や自律性を認識する必要があること(Ladd et al., 2000)や,家族を介護の担い手と位置づけ,介護を促進するための関係づくりと捉えること(Funk et al., 2020)などが報告されている.しかし小児在宅療養では,子どもの成長発達や家族の発達課題,介護と育児の違いなどが影響し,パートナーシップにおける,対象児と親及び訪問看護師の三者関係のあり方や訪問看護師に求められる役割など,実践の様相には相違があると考えられる.在宅療養児の親に対する支援のあり方を探求する質的研究は蓄積されつつあるが,そうした実践知を集約する研究は未だ少ない.小児在宅療養の臨床では,個別的で複雑な状況の中で訪問看護師が手探りで対応していると推測される.そこで,小児在宅療養において訪問看護師が,親とのパートナーシップに関して親をどのように捉え,具体的実践を行っているかという視点で,先行する質的研究の文献検討をすることにより,臨床実践の示唆を得ることができると考えた.

Ⅱ. 目的

小児在宅療養における親とのパートナーシップに関する訪問看護師の具体的看護実践を質的研究の文献から抽出して明らかにし,臨床実践や研究の取り組みへの示唆を得る.

Ⅲ. 用語の定義

本研究においては,親を子どものためのケアの担い手と位置付け協働する側面に限らず,パートナーシップに関して訪問看護師が親をどのように捉え,看護実践を行っているか全体を明らかにするため,先行研究(Barratt et al., 2021Davis & Day, 2002)を参考に,親とのパートナーシップを,親と訪問看護師が支援過程を通じて相互作用しながら構築する関係性であり,相互の信頼と尊重,親の参画,役割の共有,交渉,意思決定,コミュニケーション等の属性で特徴づけられるものとした.

Ⅳ. 方法

本研究では,Aromataris & Munn(2020)牧本(2013)を参考に,文献選定を行った.学術論文データベースとして,PubMed,CINAHL,医学中央雑誌Web版(Ver. 5)を用い,2021年9月までに掲載された学術論文を検索した.類義語に留意しつつ複数の検索統制語を用い,図書館司書に相談のうえ,検索式を決定した(表1).文献の包含基準,除外基準については,研究目的に照らし,訪問看護師の視点から親に対する看護実践について豊かな記述があることや,信頼性・妥当性のある記述を確保することを考慮し,次のように設定した.包含基準は,質的研究の原著論文,日本語または英語で記載された論文,医療的ケア児や重症心身障害児等の長期在宅療養児の親とのパートナーシップや関係づくり等家族への看護を主要なテーマとし,訪問看護師が親をどう捉え,どう関わったかに関する語りと分析がある論文とした.除外基準は,量的研究,解説,総説,会議録,紀要,地方学会誌,研究対象者に看護職以外の他職種を含む論文,ケア対象が成人や,知的障害,発達障害等で訪問看護を要しない児である論文,対象フィールドが病院や施設のみの論文とした.パートナーシップにさらなる要素が加わる小児がん患児のターミナルケア等,特定の時期やテーマを扱う論文も除外した.文献の質の評価として,JBI Critical Appraisal Checklist for Qualitative Researchを用いて吟味した.

表1  各データベースの文献検索式
学術論文データベース 検索語および検索式
PubMed 127件
最終検索日2021/9/5
(“Disabled Children” [Mesh] OR “Biomedical Technology” [Mesh] OR (“Chronic Disease/nursing/prevention and control/psychology” [Mesh]) OR (“Long-Term Care/nursing/psychology” [Mesh])) AND (“Professional-Family Relations” [Mesh] OR “Family Nursing” [Mesh] OR “Decision Making, Shared” [Mesh] OR “Nurse’s Role” [Mesh] OR “Cooperative Behavior” [Mesh] OR partnership) AND (“Home Health Nursing” [Mesh] OR “Home Nursing” [Mesh] OR “Community Health Nursing” [Mesh] OR “Home Care Services” [Mesh]) Filters: English
CINAHL 54件
最終検索日2021/9/5
(MH “Child, Disabled” OR MH “Child, Medically Fragile” OR MH “Chronic Disease/nursing/Psychosocial Factors/Prevention And Control ” OR MH “Long Term Care/nursing/Psychosocial Factors ”) AND (MH “Professional-Family Relations” OR MH “Family Nursing” OR MH “Decision Making, Family” OR MH “ Nurse Attitudes” OR MH “ Collaboration” OR partnership) AND (MH “Home Nursing, Professional” OR MH “Community Health Nursing”) フィルター:英語,査読
医中誌85件
最終検索日2021/9/5
(障害児/TH or重症心身障害者/TH OR(医療的ケア/TH or医療的ケア/AL)OR(慢性疾患/TH and(SH=看護,リハビリテーション,予防)))AND(医療従事者-家族関係/TH or家族看護/TH OR意思決定/TH OR医療関係者の態度/TH ORパートナーシップ/AL)AND(訪問看護/TH OR在宅介護/TH)AND(PT=原著論文)

本研究の分析は,K.クリッペンドルフ(1980/1989)の内容分析を参考に行った.分析の対象は,訪問看護師の語りと語りに関する結果の記述とした.まず対象文献を熟読し,親とのパートナーシップに関して訪問看護師がどう捉え関わったかという看護実践の内容を抽出した.これを意味内容が損なわれないよう,テーマに照らし重要性が低い部分を削除し整理した文にし,記録単位とした.この文を極力そのままの言葉を用いて簡潔に表現し,一次コードとした.データの文脈に返りながら,一次コードの本質的な意味を表す表現を二次コードとした.次に,得られたすべての二次コードの類似性,相違性を検討し,意味内容が類似する二次コードをまとめて,看護実践の具体的内容とした.さらに,看護実践の具体的内容について,類似性に基づき抽象度を高めながら,サブカテゴリ,カテゴリを生成した.分析の過程において,パートナーシップに精通した小児看護研究者2名のスーパーバイズを受け,妥当性の確保に努めた.

Ⅴ. 倫理的配慮

対象文献からデータを抽出する際には,著者の意図や意味が損なわれないよう配慮した.

Ⅵ. 結果

1. 対象文献の選定結果

データベース検索の結果,266件が抽出された.重複文献16件を除く250件について,タイトルと抄録から包含基準と明らかに合致しないとわかる209件を除外した.残り41件のフルテキストを精読し,包含基準,除外基準に照らし合わせて最終的に9件となった.JBI Critical Appraisal Checklist for Qualitative Researchを用いて評価を行い,全ての文献が10項目中7項目以上を満たし,分析対象とした.対象文献の概要を表2に示す.

表2  小児在宅療養における親と訪問看護師のパートナーシップに関する研究の概要
筆頭著者.
年.国
研究目的 研究対象者 ケア対象児 研究デザイン/
データ収集方法
主な結果
Coffman.
1997.
アメリカ
長期的ケアの現場で働く看護師にとっての在宅看護の意味について,より深い理解を得る 在宅ケアで6か月以上雇用されている訪問看護師10名 週40時間以上看護ケアを必要とする医療的ケア児 現象学的研究/
個別面接
全体テーマは,「家族のなかの見知らぬ人」である.重要テーマは,「子どものために代弁する」,「家族に溶け込む」,「家族の境界を維持する」,「家族をエンパワメントする」,「チームとして働く」,「仕事をもつ」であった.
Carter.
2000.
イギリス
地域で慢性疾患児をケアする地域小児看護師(CCNs)が担う役割と使用するスキルを明らかにする 地域において慢性疾患児をケアするCCNs 18名 慢性疾患児(酸素療法,人工呼吸器等を要する児を含む) ヒューリスティック分析/
半構造化面接
全てのCCNsは,現在および将来のニーズへの深い理解を特徴とする,子どもとその親との特別な関係を語った.CCNsは,高いレベルの信頼,柔軟性,サポート,応答性,エンパワメントを伴う「働き方」を強調した.
O’Brien.
2002.
アメリカ
医療的ケア児を育てることに関する親と訪問看護師の認識を明らかにする 6か月以上の経験があり,現在従事する訪問看護師15名(親16名) 訪問看護を利用し,在宅生活6か月以上の医療的ケア児 記述的,質的,自然主義的デザイン/
半構造化面接
医療的ケア児の養育は,他の子どもの養育と似ているが異なる.訪問看護師と親が,子育ての期待についてコミュニケーションを取り,交渉することは不可欠である.親と看護師の間の協働とコミュニケーションを発展させることは,親のストレスを軽減し,医療的ケア児の発達を促進する可能性がある.
山本.
2011.
日本
重症心身障害児の母親に関わる看護師が,母親の状況をどのように捉え,その状況に対してどのように関わったかを明らかにする 臨床経験10年,障害児看護経験3年以上の看護師19名(その内,訪問看護師3名) 重症心身障害児 質的帰納的研究/
半構造化面接
看護師には,《辛さを口にしない母親》のように見え,母親が〈余裕のない生活〉〈気持ちの閉じ込め〉〈負担や責任の抱え込み〉の状況にあると捉えていた.こうした母親に対し看護師は,状況に応じて〈時間の調整〉〈あえて関心を向けないかかわり〉〈一歩踏み込んだかかわり〉を行っていた.
Mendes.
2016.
アメリカ
医療的ケア児の親と訪問看護師との間のパートナーシップについて検討する 親から肯定的評価を受けている訪問看護師7名(親7名) 医療的ケア児 Hybrid Model of Concept Development/
半構造化面接.質的データの二次分析
パートナーシップの6つの特徴,すなわち尊敬,柔軟性,思いやりのあるプロ意識,コミュニケーション,親の管理の承認,親のサポートが明らかになった.
鈴木.
2017.
日本
在宅維持期にある重度障害児とその家族に対する訪問看護師の実践を明らかにする 重度障害児への訪問看護経験5年以上の訪問看護師6名(児と家族4組12名) 在宅移行後3年以上経過した学童期の身体障害,知的障害を重複した重度障害児 Leininger 民族看護学/
半構造化面接
看護師は自らの実践を「子どもと家族が動きたいと思った方向に,身体を後ろから支える」という意味の込められた「黒子」と表現し,その実践は,成長することでみえてくる子ども自身の力を発揮させようとする直接的なケアと,子どもと家族が選択した行動を陰から見守る間接的なケアを兼ね備えていた.
阿川.
2018.
日本
訪問看護師が超重症児および準超重症児を育てる母親に対して実践した“察する看護”の具体的内容を明らかにする 重症児に6か月以上訪問看護を行った訪問看護師8名 0~3歳で訪問看護を開始し,6か月以上経過した超重症児,準超重症児 質的帰納的研究/
半構造化面接
実際に展開した“察する看護”は,「常に信頼されるよう一期一会を大切にする」「母親の行動から精神状態を察する」「信頼関係が築けるように母親を肯定的に見守る」「訪問看護師の考えから方略的で間接的な支援と直接的な支援をする」「介護負担を考慮してソーシャルサポート体制を構築する」であった.
Nageswaran.
2018.
アメリカ
複雑な医療を必要とする児(CMC)の親/養育者と訪問看護師との関係を記述する 在宅のCMCへ訪問看護を提供した訪問看護師18名(養育者26名) 2つ以上の医療技術に依存している等複雑な医療を必要とする児(CMC) 主題分析/
フォーカスグループインタビュー
養育者と看護師の関係は時間とともに進化し,複数の要因によって決定される.コミュニケーションと信頼は,関係の確立に不可欠で,双方にとって,身体的,職業的,個人的,感情的な境界を操作する困難があり,境界を維持するための戦略がある.良い関係がCMCのケアに役立ち,養育者の負担軽減,看護師のストレス軽減と定着の要因だった.
横田.
2018.
日本
乳幼児期の重症心身障害児の家族に対する,在宅開始から生活適応までの援助の過程を訪問看護師の実践から明らかにする 訪問看護経験10年以上の訪問看護師15名 0~3歳の重症心身障害児 質的記述的研究/
半構造化面接
訪問看護師は,「障害をもつ子のための家族」に,丁寧な関係構築により母親の語りを引き出し,家族形成への踏み出しを促していた.家族と協働しながら「揺れながら手探りでつながっていく家族」を支え,家族の力を信じて見守る働きかけへ変化させていた.自分たちなりの家族になった「この子と生きていく家族」を捉え適応を判断していた.

2. 小児在宅療養における親とのパートナーシップに関する訪問看護師の実践

文献より,363の一次,二次コードを抽出し,看護実践の具体的内容として58にまとめ,そこから17のサブカテゴリ,3のカテゴリが生成された.実践の様相は大きく3つに分けられ,〈いつでも親の力になれる訪問看護師の実践〉,〈親と最適な関係を築こうとする訪問看護師の実践〉,〈子どもの最善に取り組む三者関係からみた訪問看護師の実践〉であった.以下カテゴリ毎に詳細を記述する.〈 〉はカテゴリ,【 】はサブカテゴリ,《 》は看護実践の具体的内容を示す.また,用いた文献を表2の文献番号①~⑨で示す.なお,分析データの具体例として表3に示す.

表3  分析データの具体例 カテゴリ:子どもの最善に取り組む三者関係からみた訪問看護師の実践 サブカテゴリ:子どもの安全や発達段階,セルフケアの観点から,専門的に関与する 看護実践の具体的内容:子どもの安全やウェルビーイングの基準は,看護師の目で判断し,関与しなければならない
文献 各文献から抽出したデータ(記録単位) 二次コード
ある看護師が,子どもが急に病気になったとき,母親と看護師が子どもが家に居続けるべきかどうかで意見が対立したことを語った.最終的に看護師は,子どもを病院に連れて行くことを母親に説得した.
One nurse described a situation in which a child became acutely ill and the mother and nurse disagreed on whether the child should remain at home. Ultimately, the nurse convinced the mother to take the child to the hospital.
受診のタイミングについて母親と意見が対立したとき,母親を説得する
結果が子どものウェルビーイングにとって重要でない場合にはコントロールの問題を避けることも活動の一つだった.
Avoiding control issues where the outcome wasn’t critical for the child’s well-being was another activity.
結果が子どものウェルビーイングにとって重要でない場合にはコントロールの問題を避ける
全て,エンパワメントとファシリテーション,そして家族のやり方を尊重することに尽きる(その子が安全で幸せである限りは).
It’s all about empowerment and facilitation and letting the families do it their way (as long as that child’s safe and happy).
子どもが安全で幸せである限り,家族のやり方を尊重する
必ずしも家族の希望全てに同意するわけではなく,全ての事柄について専門的な判断を下し,子どもの安全を確保しなければならないと強調した.
The CCNs also emphasised that they would not necessarily agree to everything a family wanted as they also had to exercise professional judgement in all matters and ensure the safety of the child.
必ずしも家族の希望全てに同意するわけではなく,全ての事柄について専門的な判断を下し,子どもの安全を確保しなければならない
半数以上が,子どもが「安全に保たれている」限り,親の育児判断に従うと述べた.
More than half said they would follow the parent’s child-rearing decisions as long as the child “remained safe.”
子どもが「安全に保たれている」限り,親の育児判断に従う
安全である限り,看護師は親の希望に沿ったケアを柔軟に行うことができる.
As long as it was safe, nurses could be flexible and follow the parent’s wishes for accomplishing care tasks.
安全である限り,親の希望に従う
安全な看護実践に影響する問題が生じた場合には,看護師は直接的コミュニケーションを採用した.
The nurses employed direct communication when issues affecting safe nursing practice arose.
安全な看護実践に関することは,直接的で率直なコミュニケーションをとる
確かに,ちょっと(体温が)高いかなっていう感覚はあったかもね.でもあのときの場合は37.9°Cでも汗を流してさっぱりする方を選んだんだけど,先週の血液検査も良かったし,お母さんもお風呂に入れますって言っているしね.あそこで鼻がズビズビだったり,とんでもなく悪い状態だったら止めているけど 子どもがとんでもなく悪い状態だったら親を止める
訪問看護師の言動は母親のプライドを傷つける事もあると考え留意して療養環境の変更を促した. 母親のプライドを傷つけないよう留意して療養環境の変更を促す
一歩踏み込むか,見守るかの分かれ目は子どもに危険があるかないか 一歩踏み込むか,見守るかの分かれ目は子どもに危険があるかないか

1) 〈いつでも親の力になれる訪問看護師の実践〉

(1) 【家族を理解してケアする】

訪問看護師は,《言動や表情,生活の様子から推し量り,家族の子育てする力や脆弱性,関係性等を継続的に捉える(①;④;⑥;⑦;⑨)》よう意識しながら,訪問を行っていた.《家族の文脈に入り,深く理解する(①;②)》ことが支援の鍵であると考えられていた.また,《経験してわかっている家族に聞いて,考えや日常に沿う(①;②;⑥;⑦;⑧)》よう努めていた.そして家族の《状況を把握し,家族内外の調整が進むよう働きかける(①;④;⑦;⑨)》ことをしていた.

(2) 【親が語りたいタイミングで傾聴する】

訪問看護師は,《母親の辛さを察するが,関係ができて語り出すまで,聞き出さない(②;④;⑦;⑨)》方針でいた.何かのきっかけで母親が《語り出したら,とことん感情の表出と心の整理を促す(⑨)》というように母親のタイミングに合わせ対応していた.長期的な支援の過程で,家族が変化し,生活に適応していく様子を捉え,母親と語り合い,《苦難を乗り越えた語り直しを支え,肯定する(⑨)》意味づけを行っていた.看護師には,《手掛かりを見落とさず,真意を捉え,熟練した積極的傾聴をする(②)》ことが必要と考えられていた.

(3) 【生活や人生に敬意を持つ】

長期にわたり家に入る訪問看護師は,《家族が選んだ一つ一つに敬意をもつ(①;②;⑤)》べきであると考え,また,自己を《主役の家族に対するエンパワメントやアドボカシーが役割であると位置づける(①;②;⑤;⑥;⑦)》信念をもっていた.そして,《生活や人生に関与する仕事を意義深く感じる(①;②;⑧)》思いで訪問看護を行っていた.

(4) 【人生の移行や変化に伴走する】

疾患や障害のある子どもの親の《診断告知や死別の悲嘆をそばで支える(②;⑨)》ことが,親にとって身近な支援者である訪問看護師の重要な使命であると考えられていた.いつしか子どもと笑えるようになった親の姿や,関係者に自分の意見を主張する頼もしい親の姿から,《子の障害や予後,社会的困難など逆境を乗り越えた姿を見届ける(⑨)》ことを行っていた.

(5) 【親の力を高める】

親がいかに意思決定できるかが重視され,《親が意思決定するよう計らう(①;②;⑤;⑥;⑨)》必要があると考えていた.また《自分の持つ知識やスキルを親と共有する(①;②;⑦)》姿勢や,《家族の力を見つけることから始め,さらに伸ばそうとする視点をもつ(⑥)》ことを重視した実践が行われていた.

(6) 【親の対処や希望を後押しする】

訪問看護師は,看護ケアであろうと一般的支援であろうと,生活の中で《何であれ,家族が抱えている課題に対処するのを様々な手段で助ける(②;⑤;⑦;⑧)》姿勢でいた.日頃の《親のケアや頑張りの成果を捉え,ほめる(⑦;⑨)》ことで親のやり方を認め促進していた.また《食べさせたいなど親の特別な思いの実現に,医療職として一緒に取り組む(①;⑨)》など親の思いを汲み,心強い味方になっていた.親について,子どもの世話だけでなく《就業など親自身の時間や場所をもつことを肯定し,背中を押す(④;⑦;⑨)》考えを持っていた.

(7) 【親の心を傷つけないよう慎重になる】

訪問看護師は外部からの侵入者という側面もあるため,《親の拘りや否定的感情も受け入れる(⑦)》ことが求められ,《家族から見ると,自己の存在や言動が悪影響を及ぼすこともあると認識する(①;③;⑦)》冷静な見方をしていた.また,《一方的に押し付けてプライドを傷つけないよう,親の思いに配慮しながら一緒に考える(⑦)》,柔軟かつ本質的に捉え,《親のやり方は,不十分に見えても間違いではないと,看護師なりの情報に基づいて判断する(②;⑤;⑥;⑦)》,看護師として《気になっても,伝えるべき内容か吟味し,判断を含めず伝えたり,あえて何も言わず観察は続ける(⑥;⑦)》など,親の心に配慮し,そつなく対応していた.

2) 〈親と最適な関係を築こうとする訪問看護師の実践〉

(1) 【親と訪問看護師の相互作用の良循環をつくる】

親との出会いの《最初はどんな先入観も持たない(①)》ようにしていた.《関係を構築したいと思い,まず自分から敬意や信頼,理解を示す(①;②;⑤)》ことにより親側の敬意や信頼を引き出していた.《家族に応じ,柔軟で反射的になる(②;⑤)》ことや,《明快,率直,敬意に満ち,気の利いた優れたコミュニケーションをとる(⑤;⑧;⑨)》ことで,相互作用を促進していた.互恵的な人と人の関係として《相互に信頼し,教え合い,育て合う関係に導き,維持する(①;②;⑦;⑧;⑨)》ことを大切にしていた.

(2) 【家族の成長に合わせて関わり方を変える】

《母が抱え込む間は見守り,今という介入のタイミングに備える(⑦)》考えを持っていた.心を開き《母親が語り出した後は,ディスカッションや働きかけなど積極的に一緒に取り組む(⑨)》ことで家族の様相が移り変わり,家族が生活に適応し,《家族ができるようになったら干渉しない(⑨)》よう見守りや交通整理のみ行っていた.

(3) 【まずは親の現状を受け入れ,子どものケアに慣れる】

親と関係を築く前である訪問看護導入時は,《初めに親を子どものことを教える立場にする(①;⑦;⑨)》意識付けを行ったり,《初めは,子どものケアに専念する看護師の姿を親に示す(⑨)》ことを通じて親に接近しようとしていた.また,課題が見えても《まずは親の現状を受け入れ,余計なことはしない(⑦;⑨)》で親との関係性を優先していた.

(4) 【家族との距離のバランスを取る】

日常生活の一部となるような訪問看護では,《友達や家族の一員であるような親密さと,訪問看護師としての専門性,どちらも大事にする(①;②;⑤;⑧)》あり方が求められる.その時々の判断で《家族と時に融合し,分離しながらやっていく(①;⑧)》,変動する様相があった.また,《家族や看護師により,互いの境界設定は変わる(①;⑧)》と認識されていた.《家事やきょうだい児の世話など曖昧な在宅看護業務の区別について,親に率直に交渉する(⑧)》ことや,自ら訪問中の居場所や話題を制限するなどして,《一線を越え,専門家としての客観性を失うリスクを認識し,家族と距離を保とうとする(①;⑤;⑧)》ことで対処していた.

(5) 【関係を築くスキルを備える】

親と訪問看護師の関係性について,《双方の個人的な資質が影響すると考える(⑧)》,《様々な要因を踏まえ,長期にわたり構築していくプロセスであると考える(②;⑧)》,また,《ケースにかかわらず,関係を築く方法は同じである(②)》といった考えをもち,関係構築に取り組んでいた.

3) 〈子どもの最善に取り組む三者関係からみた訪問看護師の実践〉

(1) 【親と子を一体的に捉える】

出生後の退院時から関わることが多い訪問看護では,看護師の介入よりも,親子の愛着形成を促進するよう《親子の相互作用に価値をおく(①;⑥;⑨)》.また,《子どもを中心に,親自身の立場やウェルビーイングも大切に考える(①;④;⑨)》ようにしていた.

(2) 【親の範疇にあることは手放す】

訪問看護では生活の様々な側面に関わる機会があるが,《生活行動や子育て方針は,親の範疇であり,選択するのは親である(①;②;③;⑤;⑥)》と考え,親の管理を承認していた.しかし,親の通常と違うやり方を保証することは,看護師経験が浅い場合には難しく,《地域での臨床経験に基づく自信により,多様な選択を受け入れる能力が高まる(②)》と考えられていた.

(3) 【子どもの安全や発達段階,セルフケアの観点から,専門的に関与する】

子どもが安全である限り親に委ねるが,《子どもの安全やウェルビーイングの基準は,看護師の目で判断し,関与しなければならない(①;②;③;⑤;⑥;⑦;⑨)》と考え,必要に応じ,一歩踏み込んで関与しようとしたり,子どもの代弁をする,率直なコミュニケーションを取るなどしていた.また,《親のケア能力をアセスメントし補完する(⑥;⑦;⑨)》よう動いたり,学童期など《子どもの発達段階に合わせて親を介さず子どもと直接やり取りする(⑥)》ことを意識し,子どもと関係性を築いていた.訪問看護師は《子どもに対する看護実践能力を高める(①;②;⑥)》必要があると考えていた.

(4) 【子どもをめぐる価値の対立や認識の不一致を解決する】

訪問看護師が《子どものニーズに拠って立ち,親とコンフリクトを生じることがある(①;③)》とされ,《コンフリクトが生じたら,親と話すことが基本である(①;③;⑧)》が,場合によっては管理者の介入など他の解決方法を取ることもあった.また,親の価値観や方針と,《管理者の方針や職場風土と調整していく必要がある(①)》ことが報告されていた.

(5) 【子どものために親と一緒に取り組む】

《子どもの力を引き出す目標を共有する(⑥;⑨)》,《子どものことを親と一緒に探索し,判断を合わせていく(⑨)》ような,子どものために,親と協力関係のもと対等に関与する実践があった.訪問看護師は《関係が良好だと楽しい(⑧;⑨)》と感じ就業継続していた.

Ⅶ. 考察

1. 小児在宅療養における親とのパートナーシップに関する訪問看護師の実践の特徴

今回の文献検討により,家族を理解して熱心に親へ寄り添い支援しながら,子どもの最善の利益の追求に向け親と取り組み,長期にわたって子ども,親,看護師の最適な関係を調整していく訪問看護師の実践が明らかとなった.

〈いつでも親の力になれる訪問看護師の実践〉では,親自身を支援の対象として,熱心できめ細やかな支援が見出された.病気や障害のある子どもが生まれて,家族再形成のプロセスを辿る親に対し,育児支援や家族支援の視点から関わることは重要である.中でも,親子を一体と捉え,親子相互作用を通して愛着形成を促していくことは最も重要な支援である.また,親にとって医療的ケアは,本来親が行う子どもの世話や育児と不可分なところがある.さらに,子ども本人は幼少であったり,障害をもち,十分意思表示できないことが多く,未成年の子に対する責任を持つ親は代弁者と位置付けられ,そうした親子関係や育児が展開する生活の場で,親を尊重することはより重要性を増し,小児訪問看護師には,医療的ケアの側面だけでなく,子育てをする親自身の生活や思いを支えるパートナーシップの実践が求められると考える.

また,病院における親とのパートナーシップでは,看護師の管理する領域において親をいかに関与させるかという視点で,親の能力向上に伴って看護師から親へ役割や意思決定が移行していく様相があるのに対して(Brødsgaard et al., 2019),訪問看護におけるパートナーシップでは,まず家族を理解しようとし,親の方向性に沿い,状況やタイミングに応じ,主体的な生活者である親を尊重する在宅療養の基本的な姿勢があった.そして生活行動や子育て方針は親の範疇とし,口出しせず親の多様なあり方を守る一方で,子どもの安全や発達段階,セルフケアの観点から踏み込んで関与する専門的な訪問看護師の実践が見出された.このように親のコントロールや管理を保証したうえで,看護の専門性をどう発揮していくかという実践は,小児在宅療養の特徴であると考えられる.

一方で,〈子どもの最善に取り組む三者関係からみた訪問看護師の実践〉には,親とコンフリクトを生じる場面も含まれた.コンフリクトが生じたとき,状況による判断が求められるが,パートナーシップの観点からは,親と取り組むことが基本であると考える.今回の研究結果において,親と直接話すという実践が見出されたが,中には,親と直接話さず,自分が正しいと思ったことをただ実施するという実践も見られた(O’Brien & Wegner, 2002).コンフリクトが生じる場合のパートナーシップの実践は,困難であるとともに重要であり,今後,さらに探求すべき課題と考える.パートナーシップは,バランスの変化(McIntosh & Runciman, 2008)や調整の連続(Smith & Kendal, 2018)と言われ,全ての当事者がサポートされていると感じていることを確認しながら実践していく必要がある(Barratt et al., 2021).〈親と最適な関係を築こうとする訪問看護師の実践〉にあるように,小児在宅療養では長期にわたり変化する様々な局面で,訪問看護師が関係構築の原動力となって,子ども,親,訪問看護師,全ての当事者から見て最適な関係を追求していくことが求められると考えられた.

2. 小児在宅療養の特徴を踏まえたパートナーシップへの取り組み

今回の研究で明らかとなった,小児在宅療養における親とのパートナーシップに関する訪問看護師の特徴的な実践が,実際の臨床現場でどの程度行われているかは明らかではない.国外では,小児在宅療養において,サービス提供者の思いやりの欠如があることや,医療サービスの提供に差異があることの背景の一つとして,子どもと家族をケアする看護師及び医療従事者が受ける教育のばらつきなどが言われている(Brenner et al., 2015).また病院と比較し小規模な訪問看護事業所では研修機会も少ない.加えて個々の複雑で閉鎖的な在宅環境では,パートナーシップを評価する難しさが推察される.こうした中で,今回明らかになったような小児在宅療養の特徴を踏まえたパートナーシップの具体的実践を理解したうえで親との関係性を構築することは重要であると考える.さらに,親との最適な関係性を追求するため,自己の実践を振り返るスーパーバイズや事例検討,ミーティングなど学習の機会が求められる.その際,小児在宅療養における訪問看護師の特徴的なパートナーシップの実践を具現化し,実践の評価や教育に活かすツールの検討が有用であり,親子への質の高い支援につながると考える.

Ⅷ. 本研究の限界と今後の課題

本研究では,理論的基盤や方法論,また研究目的の異なる複数の質的研究から知見を集約した.各質的研究のデータや生成された概念は,現象そのものではなく切り取られた一部分の現実であり,研究結果をそのまま集約して安易に見解を出すことの危険が指摘されており(牧本,2013),また,研究者が質的研究や科学全般の多くの側面について経験がない場合,表面的な分析や誤った表現をしてしまう可能性も警告され(Estabrooks et al., 1994),本研究の限界でもある.一方で,一次研究論文を執筆した著者とは異なる視点から一次研究論文を分析する方法については,未だ明確ではない(植村・宮崎,2016)とも言われており,目的に応じて方法を試行錯誤している現状がある.本研究では,パートナーシップの概念を用いて,訪問看護師の実践を抽出し,各対象文献におけるデータの文脈に立ち返りながら,類似する看護実践をカテゴリ化した.各文献の記述は,訪問看護師の語りに基づく具体的かつ日常的に臨床で実際に行われている看護行為であり,現実的で妥当性のあるものである.また,異なる認識論的・方法論的観点からの研究を含めることは,結果の信頼性と完全性を高めることができるトライアングレーションの一形態であると考えることができるとも言われており(Gewurtz et al., 2008),複数の研究による多角的な視点から看護実践を明らかにできたと考える.ただし,分析対象となる文献が9件と少なく,パートナーシップに関する実践を全て網羅できたとは言えない.また,今後,実証的データに基づくさらなる実態解明が必要と考える.

Ⅸ. 結論

親への寄り添いと子どもの最善を追求し,長期にわたり関係を調整していく訪問看護師によるパートナーシップの具体的実践が明らかとなり,こうした特徴を理解したうえで親との関係性を構築する重要性が示唆された.親との最適な関係性を追求するため,訪問看護師に特徴的なパートナーシップの実践を具現化し,実践の評価や教育に活かすツールの検討が必要である.

付記:本研究の一部は,第42回日本看護科学学会学術集会において発表した.

謝辞:東京医科歯科大学大学院小児・家族発達看護学分野研究室の皆様はじめ,本研究に関してご指導賜りました皆様に深く感謝申し上げます.

利益相反:本研究に関する利益相反は存在しない.

著者資格:YAは研究の着想およびデザイン,データ収集,分析,草稿の作成;SYおよびMOは原稿への示唆およびデータ分析と解釈,研究プロセス全体への助言.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

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