日本看護科学会誌
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看護系大学1年生の睡眠や眠気の経時的変化と特徴
小西 円西山 里枝木原 知穂西田 佳世
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2023 年 43 巻 p. 372-378

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Abstract

目的:看護系大学1年生の睡眠や眠気を客観的・主観的評価から経時的に把握し特徴を明らかにする.

方法:入学後3か月,入学後半年,入学後9か月の睡眠変数を1週間アクティウォッチと睡眠日誌で評価し,眠気をJESSで評価した.睡眠変数はFriedman検定とBonferroni検定で経時的変化を比較し,Mann-WhitneyのU検定で眠気との関連を比較した.

結果:対象者13名の睡眠変数は起床時刻に差があり,下位検定の結果,入学後9か月は入学後3か月より起床時刻が遅かった.睡眠変数と眠気は入学後9か月の総睡眠時間に差があり,JESS11点以上の「眠気あり」は「眠気なし」より総睡眠時間が長かった.

結論:対象者は入学後9か月に起床時刻が後退し「眠気あり」の総睡眠時間が延長した.実習のない1年生から睡眠変数や眠気等を継続的に把握し,規則的な生活リズム獲得への支援が必要と考えられた.

Translated Abstract

Objectives: To understand sleep and sleepiness in first-year nursing students over time via objective and subjective assessments and to clarify the characteristics of their sleep and sleepiness.

Methods: The sleep variables were evaluated at three months, six months, and nine months after admission for one week using Actiwatch and a sleep diary. Sleepiness was also evaluated using the Japanese version of the Epworth Sleepiness Scale (JESS) during the same period. Changes in the sleep variables were compared using the Friedman test and the Bonferroni test. The relationship between the sleep variables and sleepiness was compared using Mann Whitney-U test.

Results: The sleep variables of the 13 participants differed according to waking time, and the subtest results showed that waking time was significantly later at nine months after admission than at three months after admission. Total sleep duration differed between the sleep variables and sleepiness at nine months after admission, and “sleepiness present” with a JESS score of 11 or higher showed a significantly longer total sleep duration than “sleepiness absent.”

Conclusion: The participants’ waking time was delayed the most at nine months after admission, and the total sleep duration in “sleepiness present” was prolonged. Accordingly, to support first-year students without practical training in developing a regular life rhythm, it was necessary to continuously assess sleep variables and sleepiness.

Ⅰ. 緒言

大学生は生活が不規則になりやすく,睡眠に対して何らかの障害を感じている者は約27%に至ると報告されている(Gaultney, 2010).とりわけ,看護系大学生はアルバイトやサークル,交友関係との交流の一方で授業科目が多く,一般大学生と比較し睡眠時間の短さや日中の強い眠気が報告されている(三橋ら,2010).睡眠不足や日中の眠気は,運動機能等に影響し,集中力や反応力の低下を引き起こし,結果的に学業成績に影響する(Yusuf et al., 2017福田・浅岡,2012).また,これらは慢性的な倦怠感や不安及び気分の不調等心身に影響を及ぼすとの報告もある(Fukuda & Asaoka, 2001).加えて看護系大学生の場合,集中力の低下や倦怠感は実習中のヒューマンエラーを招く可能性もある.したがって,看護系大学生の睡眠改善にむけた支援が必要であると考える.

看護系大学生の睡眠や日中の眠気は実習や講義の有無に影響を受けるとされ,実習中の睡眠時間は平常時と比べ有意に少なく,平均総睡眠時間は3.4~4時間であったこと(粕谷・須田,2016),看護系大学生の眠気は他学部の学生と比較し有意に高かったこと等の報告がある(萱場・笹井,2019).しかし,いずれも実習中もしくは実習を終えた学生を対象としており,実習のない1年生の睡眠に関する報告はほとんど見られない.看護系大学生のカリキュラムは,学年によって実習期間や履修する講義数が異なる.実習がなく,大学生活が定着していく時期である1年生の睡眠や眠気の実態を把握することは,実習中の不眠の原因や対策を検討する際の一助になると考える.また,看護系大学生を対象とした睡眠調査の多くは自記式質問紙を用いている.しかし,睡眠障害国際分類第3版では,睡眠評価に客観的所見を必要としており(American Academy of Sleep Medicine, 2014/2018),看護系大学生においても客観的評価と主観的評価の双方で睡眠を把握する必要があると考える.さらに,睡眠は季節の影響を受けるとされている(白川,1998).そのため本研究においても,睡眠等の実態を把握する際には,季節の変化に伴う経時的な調査が必要であると考える.

そこで本研究は,看護系大学1年生の睡眠や眠気を客観的・主観的評価から経時的に把握し,その特徴を明らかにすることとした.

Ⅱ. 方法

1. 対象者

対象者は,2021年にA大学に入学した看護学科1年生のうち,今まで,大学生活や看護学生の経験がない者とした.なお,睡眠は加齢に伴い変化することが報告されており(Ohayon et al., 2004),対象者は30歳未満の者とした.また,睡眠には性差があり看護師の多くが女性であることから,対象を女性に限定した.さらに,疼痛や掻痒感等による不眠を自覚している者,睡眠時無呼吸症候群等の睡眠障害を引き起こす疾患を有する者,睡眠や眠気に作用する薬を日常的に服用している者は除外した.

2. 調査期間

調査期間は2021年5月から2022年2月であった.定期試験や長期休暇を考慮し,調査は入学後3か月の2021年6月から7月(以下,3か月),入学後概ね半年の同年9月から11月(以下,半年),入学後概ね9か月の2022年1月から2月(以下,9か月)に実施した.なお,女性の月経周期は睡眠の質や眠気に関連があると報告されている(Shibui et al., 1999).しかし,本研究では測定時期や測定機器が限られていたことから,月経周期等に合わせた測定は実施しなかった.

3. データ収集日数

本研究では,野田・宮田(2017)を参考に,睡眠・覚醒リズム評価に最低限必要とされる連続7日間(1週間)のデータを収集した.

4. データ収集方法

1) 睡眠変数

睡眠変数は,総睡眠時間,睡眠効率等の総称で,睡眠を量的に示すことが可能な指標として研究や臨床で使用されており(田中,2011),本研究では,就床時刻,起床時刻,総睡眠時間,中途覚醒時間,睡眠効率を用いた.各変数の定義は,就床時刻:就床後入眠した時刻,起床時刻:総就床時間のうち最後に覚醒した時刻,総睡眠時間:総就床時間から覚醒時間を差し引いた時間,中途覚醒時間:総就床時間内で覚醒した時間の総数,睡眠効率:総睡眠時間/総就床時間×100とした.これらは,活動量から睡眠・覚醒を判定するアクティウォッチスペクトラム(PHILIPS社)(以下,アクティウォッチ)で確認した.アクティウォッチは約30 gと軽量なうえ,連続測定が可能なことから,睡眠障害の判定等にも使用される測定機器であり,妥当性が確認されている(野田・宮田,2017).今回,非利き手に入浴時以外24時間連続で装着し,専用分析ソフトActiware 6.0.9を用いて睡眠変数を算出した.

アクティウォッチは四肢の動きに伴う活動量で睡眠・覚醒を判定することから,より一層の正確性を期すためには,就床時刻・起床時刻等の情報を記した睡眠日誌と合わせての検討が望ましいとされている(野田・宮田,2017).そこで今回,起床後に睡眠日誌の記載を依頼し,その項目は「日時」「ベッドに入った時刻」「眠りについた時刻」「睡眠中に目が覚めた場合はその回数」「朝,最後に目が覚めた時刻」「ベッドから出た時刻」とした.また,講義や演習等,入浴時以外にアクティウォッチを外した場合,着脱時刻と外している時の状況について記載を依頼した.

2) 眠気

眠気はエプワース眠気尺度日本語版(以下,JESS)を用い,各調査実施月に確認した.JESSは日常生活で経験する眠気を測定することが可能な質問紙で,信頼性や妥当性が確認されている(福原ら,2006).JESSは8つの場面での居眠りの頻度を0(まったくない)から3(頻繁にある)で回答し,得点範囲は0~24点,得点が高いほど眠気が強いと判定される.カットオフ値は11点であり,本研究においても11点以上を「眠気あり」と判定した.

3) 対象者の属性

対象者の属性は紙面への記載もしくは既存資料から,年齢,住まい,通学時間,学外活動の有無と内容を確認した.

5. 分析方法

本研究では,まずアクティウォッチで測定した睡眠変数を睡眠日誌の項目と比較するため,全対象者の3か月,半年,9か月の就床時刻と起床時刻,同時期の「眠りについた時刻」と「朝,最後に目が覚めた時刻」を把握した.睡眠日誌は睡眠中の内容を把握することが難しく,必ずしも中途覚醒等の程度を的確にとらえることはできないとされており(田中,2011),今回,中途覚醒時間の比較は行わないこととした.その後,睡眠変数の経時的変化についてFriedman検定で比較し,有意差があった項目は下位検定としてBonferroni検定を用いた.

各時期の睡眠変数と眠気との関連はJESS得点11点以上を「眠気あり」,11点未満を「眠気なし」とし,Mann-WhitneyのU検定で比較した.各時期の睡眠変数と眠気の有無との関連に有意差があった項目は,対象者の属性との関連について記述統計もしくはMann-WhitneyのU検定を行った.その際,住まいは「自宅(家族と同居)」「自宅外(一人暮らし)」,学外活動は「あり」「なし」とし,通学時間は対象者の中央値から2群に分けた.統計解析はIBM SPSS for windows Ver28.0を使用し,有意水準は両側5%未満とした.

6. 倫理的配慮

研究協力機関の長に本研究の目的や方法,倫理的配慮等を書面と口頭で説明し書面による同意を得た.本研究の対象者は未成年であったため,保護者を代諾者とし,対象者と代諾者に研究者から目的や方法,倫理的配慮等を口頭もしくは書面で説明し,書面による同意を得た.倫理的配慮の内容は,研究への協力については自由意思に基づくこと,参加を拒否しても大学生活等に不利益が生じないこと,分析前までであれば同意の撤回が可能であること,対象者の健康状態によって中止すること,得られた情報は全て個人情報として扱うこと等とした.本研究は,聖カタリナ大学研究倫理審査委員会看護学科分会の承認を受け実施した(承認番号看倫21-01-03).

Ⅲ. 結果

1. 調査期間における大学の状況

調査期間である2021~2022年は,新型コロナウイルス感染症(Coronavirus disease 2019)の流行中であったが,A大学では調査期間中,対面授業を実施していた.また,各時期とも通常通りの講義スケジュールで,週に1~2回は1限から講義があった.

2. 対象者の属性

対象者の属性を表1に示す.今回,対象者は70名で,本人および代諾者から研究参加の同意を得られたのは14名であった.そのうち,機器の不具合によりデータに不備があった1名を除き,分析対象者(以下,対象者)は13名になった.対象者の平均年齢は18.2歳で,19歳が4名,18歳が9名であった.対象者の住まいは8名が「自宅」,5名が「自宅外」であった.学外活動は6名が「あり」でアルバイトをあげていた.通学時間は平均21.5分,中央値20.0分で,最短は5分,最長は40分であった.中央値で2群に分けた結果,「20分以上」が10名,「20分未満」が3名であった.なお,全対象者が睡眠に影響する薬剤等は使用しておらず,アクティウォッチ装着期間における健康状態は良好であった.また,調査期間中外泊等はなかった.

表1 

対象者の属性(n = 13)

n(%)
年齢(歳) 18.2
住まい 自宅 8(61.5)
自宅外 5(38.5)
学外活動 あり 6(46.2)
なし 7(53.8)
通学時間 20分以上 10(76.9)
20分未満 3(23.1)

年齢以外は人数(%)を示す

3. アクティウォッチと睡眠日誌による睡眠評価

アクティウォッチは演習やアルバイト等の理由から,全時期,全対象者に装着できていない時間があった.ただし,その時間は全て日中であり,睡眠変数は算出可能であった.睡眠日誌は「急いでおり忘れた」等の理由から,3か月に2名各1日,9か月に2名各1~2日の記載漏れがあった.アクティウォッチで測定した3か月,半年,9か月の平均就床時刻(標準偏差)はそれぞれ1:00(1:01),1:20(0:52),1:37(1:06),平均起床時刻はそれぞれ7:13(0:39),7:41(0:41),8:06(0:57)であった.睡眠日誌から把握した「眠りについた時刻」の平均(標準偏差)はそれぞれ1:05(1:02),1:27(1:00),1:39(1:04),「朝,最後に目覚めた時刻」の平均はそれぞれ7:21(0:37),7:47(0:37),8:08(0:55)であった.

4. 睡眠変数の経時的変化

睡眠変数の経時的変化を表2に示す.3か月,半年,9か月全時期の平均就床時刻(標準偏差)は1:19(1:02),起床時刻は7:40(0:51),総睡眠時間は344.8(62.9)分,中途覚醒時間は34.4(15.3)分,睡眠効率は91.1(3.0)%であった.3か月,半年,9か月の睡眠変数を比較した結果,起床時刻に有意差があり(p = .017),下位検定の結果,9か月は3か月と比較し起床時刻が有意に遅かった(p = .013).

表2 

睡眠変数の経時的変化

n = 13)

5. 各時期の睡眠変数と眠気との関連

各時期の眠気の有無を表3に示す.3か月,半年,9か月全時期のJESS平均得点(標準偏差)は9.2(3.7)点であった.JESS得点が11点以上の「眠気あり」は3か月7名,半年3名,9か月7名で,全時期で「眠気あり」は2名であった.各時期の睡眠変数と眠気の有無を表4に示す.3か月,9か月の睡眠変数と眠気の有無との関連を比較した結果,9か月の眠気と総睡眠時間に有意差があり,9か月において「眠気あり」は「眠気なし」と比較し総睡眠時間が有意に長かった(p = .006).なお,半年は対象者数に偏りがあったためMann-WhitneyのU検定による比較はできないと判断し,記述統計のみとした.

表3 

各時期の眠気の有無(n = 13)

3か月 半年 9か月
得点(点) 10.1(3.9) 7.9(2.7) 9.5(4.5)
眠気あり 7 3 7
眠気なし 6 10 6

得点はJESS得点を示す

平均値(標準偏差)

眠気あり・なしはJESS 11点以上・未満の人数

表4 

各時期の睡眠変数と眠気の有無

3か月 半年 9か月
眠気あり(n = 7) 眠気なし(n = 6) 眠気あり(n = 3) 眠気なし(n = 10) 眠気あり(n = 7) 眠気なし(n = 6)
就床時刻 1:11(1:11) 0:47(0:44) 2:13(0:20) 1:02(0:47) 1:12(0:57) 1:59(1:06)
起床時刻 7:35(0:34) 6:48(0:27) 8:00(0:23) 7:35(0:44) 8:53(0:32) 7:25(0:41)
総睡眠時間(分) 343.2(46.0) 321.3(36.1) 316.3(48.9) 356.0(43.1) 419.8(29.2)* 298.6(79.3)
中途覚醒時間(分) 39.0(17.6) 34.2(12.9) 29.7(6.5) 34.0(11.5) 44.0(20.5) 24.5(8.1)
睡眠効率(%) 90.1(4.0) 90.9(2.9) 91.0(2.9) 91.4(2.5) 90.7(3.5) 92.4(1.4)

睡眠変数はアクティウォッチの測定結果を示す

眠気あり・なしはJESS11点以上・未満

平均値(標準偏差)

3か月,9か月のみMann-WhitneyのU検定(* p < .05)

6. 各時期の総睡眠時間と対象者の属性との関連

各時期の総睡眠時間と対象者の属性を表5に示す.3か月,半年,9か月各時期の総睡眠時間と対象者の属性のうち住まい,学外活動との関連を比較した結果,いずれの項目においても有意差はなかった.

表5 

各時期の総睡眠時間と対象者の属性(n = 13)

住まい 学外活動
自宅 自宅外 あり なし
総睡眠時間(分) 3か月 322.9(43.8) 351.7(34.7) 345.4(41.0) 324.1(42.1)
半年 329.6(40.0) 379.1(45.0) 367.1(40.3) 331.1(47.1)
9か月 325.5(87.7) 401.0(59.1) 376.7(49.2) 335.5(104.6)

総睡眠時間はアクティウォッチの測定結果を示す

平均値(標準偏差)

Ⅳ. 考察

1. 看護系大学生の睡眠評価

アクティウォッチは体動に伴う加速度を持続的に測定し,そこから睡眠・覚醒を判定するため,睡眠を過大評価する可能性があるとされている(尾崎,2016).本研究においても,アクティウォッチで算出した就床・起床時刻と睡眠日誌で把握した時刻は一致しなかった.これは,対象者の臥床や起床等に伴う活動量の変化をアクティウォッチが正確に検出し睡眠・覚醒を判定したため,対象者が眠り等を自覚し日誌に記入した睡眠・覚醒時刻とはずれが生じたと考えられる.また,看護系大学生は技術習得に向けた演習等も多く,本研究においても,演習等によるアクティウォッチの装着不可,多忙による日誌の記載漏れ等もあった.したがって,看護系大学生の特徴や生活状況を踏まえ,かつ睡眠を正確に把握するためには,客観的評価と主観的評価を併用しメリット・デメリットを相互に補うことが望ましいと考えられた.

2. 1年生の睡眠変数の経時的変化

実習時の看護系大学生の睡眠について松中ら(2017)は,平均就床時刻が25時13分,起床時刻が5時45分,睡眠時間は概ね4時間半であり,同じ時期の講義時より就床時刻は30分後退し,起床時刻は概ね1時間前進したことを示している.また,平常時と実習中の睡眠について,3年生は睡眠時間と就床時間にそれぞれ有意差があったとの報告もある(粕谷・須田,2016).しかし本研究では,実習のない1年生の睡眠の起床時刻に有意差があり,9か月は3か月より概ね1時間,起床が遅くなっていた.また,有意差はなかったが,同時期で就床時刻も概ね40分遅くなっていた.大学生は午前中に授業がない等の理由から,学年や学期が進むにつれ起床時刻や就床時刻は後退するとの報告がある(福田・浅岡,2012).今回,調査期間は定期試験や実習がなく,朝から講義がある日は1~2回/週であったことから,対象者は起床時刻や就床時刻を調整し,結果,時刻が徐々に遅くなった可能性がある.また,起床時刻は光環境等の季節変化により冬が遅く夏が早くなるとの報告があり(白川,1998),今回3か月は春~夏季,9か月は冬季であったことから,本研究においても季節変化による時刻の位相が考えられた.ただし今回,季節に伴う環境変化の詳細は調査できていない.今後は就寝時の温湿度や照度等ついても確認し,看護系大学生の睡眠との関連を検討したいと考える.

本研究では,実習のない1年生においても起床時刻等の後退が確認されたことから,入学後早い段階で規則的な生活リズムの獲得を目指し,実習や講義等で睡眠不足等に陥ることがないよう関わる必要があると考えられた.

3. 1年生の睡眠変数と眠気との関連

実習時の看護系大学生において,眠気高群は眠気低群と比較し就床時刻が有意に遅かったとの報告がある(三橋ら,2010).今回,3か月,9か月の比較に限定した結果であるが,9か月において「眠気あり」は「眠気なし」より総睡眠時間が有意に長かった.眠気と睡眠の関連について一般的には,眠気の原因に短時間睡眠(睡眠不足)があるとされている(Carskadon & Dement, 1982).ただし,眠気は生じる時間が午前か午後かによって原因が異なるとされ,大学生の場合,午後の眠気は睡眠の影響はなかったが,午前の眠気は起床時間が影響していたとの報告がある(吉本ら,2019).今回,9か月の「眠気あり」は,全時期の「眠気あり」「眠気なし」の中で平均起床時刻が最も遅く,概ね9時であった.平均就床時刻は各時期と同程度,概ね1時であったことから,9か月の「眠気あり」の有意に長い睡眠時間は,起床時刻の後退が影響している可能性が推測された.したがって,看護系大学生の眠気の有無と睡眠との関連を検討する際は,睡眠時間の長短だけでなく,起床や就床時刻の位相についても確認すべきであると考えられた.

眠気の変化について,獣医学生等を対象とした調査であるが,1年生の時点でESS得点は一般学生より高く,その得点は経時的に上昇していたことが報告されている(Michael et al., 2019).今回,対象者の約半数は既にJESS得点11点以上の「眠気あり」であったことから,学年進行に伴う「眠気あり」の人数の増減や眠気の程度は,今後も継続的に確認する必要があると考えられた.

4. 睡眠時間と対象者の属性との関連

今回,対象者の通学時間は平均20分,5~40分の範囲内にあり,データのばらつきもなかった.よって本研究では,「自宅」か「自宅外」で通学時間に極端な違いはなく,住まいと睡眠変数に有意差がなかったと考えられた.ただし,家族と同居する学生は一人暮らしの学生より通学時間が有意に長く,それが睡眠相の前進に関連するとの報告がある(Asaoka et al., 2004).看護系大学生の場合,実習施設等に合わせ住まいや通学時間が変更する可能性があることから,住まい等の変化による睡眠への影響については,今回の結果を踏まえ継続的に確認する必要があると考えられた.

5. 本研究の限界と課題

今回,看護系大学生の不眠の原因や対策を検討する一助とするため,実習のない看護系大学1年生の睡眠や眠気を客観的・主観的に把握し,経時的に確認した.研究結果から睡眠変数の変化を確認できたが,性別の限定,対象者数の不足等から,分析に偏りが生じた可能性がある.今後,一般化と睡眠改善の支援方法検討にむけては,性周期等の影響も考慮しつつ,対象者数や範囲を広げた調査が必要である.本研究は対象者数が少ないものの,連続1週間アクティウォッチと睡眠日誌を用いることで各評価方法の利点・欠点を確認し,睡眠データの精度を高める必要性を示唆することができた.一方,睡眠の位相を含むリズム等は調査しておらず,眠気は睡眠の質も含めて再検討することを今後の課題としたい.さらに,本研究では,睡眠時間や眠気の有無に就床や起床時刻が影響すると推測された.そしてこれらには,講義に係わるスケジュールや対象者の暮らし方等が大きく関係する可能性が考えられたが,本研究ではその詳細を検討するには至らなかった.そのため,看護系大学生,各学年の睡眠と大学スケジュールや生活習慣等については更に調査し,その関連を検討する必要があると考える.

Ⅴ. 結論

本研究は,実習のない看護系大学1年生の睡眠や眠気を客観的・主観的指標から経時的に把握し,その特徴を明らかにすることを目的とした.結果,アクティウォッチで算出した就床・起床時刻と睡眠日誌で把握した時刻は一致しなかった.アクティウォッチで測定した睡眠変数の経時的変化について入学後3か月,半年,9か月で比較した結果,9か月が3か月より起床時刻が有意に遅かった.また,各時期,対象者の1/3~半数がJESS 11点以上の「眠気あり」で,9か月に「眠気あり」の者は「眠気なし」の者より総睡眠時間が有意に長かった.これらから,看護系大学生の特徴や生活状況を踏まえ,かつ睡眠を正確に把握するためには,客観的評価と主観的評価の併用が望まれると考えられた.また,看護系大学生の眠気の有無と睡眠との関連を検討する際は,睡眠時間の長短だけでなく,起床や就床時刻の位相についても確認すべきであると考えられた.そのうえで実習のない1年生から睡眠時間や時刻,眠気等を継続的に把握し,規則的な生活リズムの獲得に向けた支援の必要性が考えられた.

付記:本研究の一部は,日本看護学教育学会第32回学術集会および日本看護研究学会第48回学術集会において発表した.

謝辞:本研究の趣旨に賛同し,調査にご協力いただいた学生の皆様に心より感謝申し上げます.また,本研究を進めるにあたりデータ収集等に協力いただいた聖カタリナ大学の玉井寿枝先生,上田裕子先生に深謝申し上げます.なお本研究は,令和3年度聖カタリナ大学学長裁量事業の承認を受け実施した.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:MKは研究の着想,デザイン,データ収集と分析,原稿作成の全プロセスに貢献した.RNはデータ収集と分析,原稿作成に貢献した.CKは研究の着想とデータ収集,原稿作成に貢献し,KNは研究着想およびデザインと最終確認に貢献した.全ての著者は最終原稿を読み,承諾した.

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