日本看護科学会誌
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原著
循環器の専門的知識を有した看護師による外来通院中の心筋梗塞患者へのセルフケア教育の実践の実態と関連要因
中道 朝香竹原 君江
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2023 年 43 巻 p. 529-537

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Abstract

目的:循環器看護スペシャリスト(SP)による外来通院中の心筋梗塞患者へのセルフケア教育の実践の実態と関連要因を検討する.

方法:慢性心不全看護認定看護師と慢性疾患看護専門看護師を対象とした無記名自記式質問紙を用いた横断的観察研究を行った.セルフケア教育の実践の有無と実践の程度に関連する要因を検討した.

結果:149名のうち95%以上がセルフケア教育は重要だと回答したが,約半数は教育を実践していなかった.教育の実践の有無と関連する要因は,外来心リハの設置,外来関連の部門へのSPの所属であった.教育の実践の程度は,セルフケア教育の重要性の認識が高いこと,医師・栄養士との協力体制と有意に関連していた.

結論:SPのセルフケア教育の実践率は約半数であった.実践率上昇には環境要因が重要である可能性が示唆された.実践の程度を上げるには,医師・栄養士との協力体制が効果的である可能性が考えられた.

Translated Abstract

Purpose: This study aimed to assess the quality of self-care education provided by cardiovascular nursing specialists (SPs) to outpatients with myocardial infarction (MI), and elucidated the factors associated with its implementation.

Methods: A cross-sectional observational study was conducted using a questionnaire consisting of questions probing the SP’s practice of self-care education. Factors associated with the implementation of self-care education were assessed.

Results: Responses from 149 SPs were analyzed. More than 95% of SPs answered that self-care is important. Approximately half of the SPs reported that they did not offer self-care education to their patients. Factors associated with the implementation of self-care education included the presence of an outpatient cardiac rehabilitation center and working in the outpatient department. The extent of self-care education practice was positively correlated with the total recognition score, cooperation with doctors, and cooperation with dietitians.

Conclusion: Approximately half of the SPs did not offer self-care education to patients with MI. Installation of cardiac rehabilitation centers in hospitals, and assigning cardiovascular SPs to outpatient departments, are essential to ensure that self-care education is offered. Moreover, cooperation with doctors and dietitians influences the extent of self-care education practice.

Ⅰ. はじめに

心筋梗塞は,冠動脈の閉塞により血流が途絶し心筋が壊死する疾患であり,発症時は緊急の治療が必要となる.心筋梗塞の治療成績は向上し(Cui et al., 2017),院内死亡率は低下している.一方で,心不全発症の原因疾患の一位は虚血性心疾患であり,長期的には心不全患者の増加につながっている(Shiba et al., 2011).再梗塞や心機能低下により心不全を発症すると,増悪と寛解を繰り返しながら徐々に悪化していくという経過を辿る.心不全発症後の生活の質(QOL)は,心不全の進行による身体機能の低下と共に低下していくことが報告されており(Izawa et al., 2005),そのQOLは慢性疾患の中でも低いことが示されている(Juenger et al., 2002).そのため,心筋梗塞患者に対して再梗塞予防を行い,心不全発症を予防するための介入が重要といえる.

心不全患者に対しては既に,適切なセルフケアの実施,および入院中の多職種からのセルフケア教育による心不全再発予防効果が示されている.Kato et al.(2013)の報告によると,適切なセルフケアが実施できたグループは,心不全再入院・心臓死のイベント発生率が12.4%低かったことが示されている.また,多職種からのセルフケア教育による心不全再発予防効果については,入院中の心不全患者に対し,看護師・栄養士・薬剤師が教育を行ったグループと教育を実施しなかったグループの比較で,全死亡・心不全再入院の減少に関連があることをKinugasa et al.(2014)が報告している.このように心不全患者へのセルフケアに関しては多くの報告があり,心不全患者へのセルフケア教育は必須事項としてガイドラインに示されている(日本循環器学会,2018).

心筋梗塞患者において再梗塞予防のエビデンスのある介入は,抗血小板薬・スタチンなどによる薬物治療,血圧・脂質・血糖の目標管理達成,運動・食事・喫煙に関する生活習慣の適正化である(Yusuf et al., 2004).したがって,これらの報告に基づいて患者が適切なセルフケアを行うことができれば,リスク因子の改善につながり,最終的には心不全患者の減少に寄与可能であると考えられる.現在実施されている心筋梗塞患者に対する主な介入には,入院中に実施される心臓リハビリテーション(入院心リハ)と外来通院型の心臓リハビリテーション(外来心リハ)がある.ここでは運動療法と再梗塞予防のためのセルフケア教育が実施されており,参加により死亡率の低下,血圧やコレステロール値の改善,喫煙率の低下が報告されている(Taylor et al., 2004).しかし,日本の外来心リハ普及率は43%と低く(後藤,2017),多くの心筋梗塞患者が外来心リハに参加できていない可能性がある.その場合,患者は外来やクリニックでの定期受診による体調チェックと薬物療法のみとなると考えられる.心筋梗塞後の生存者の20%に心血管イベントが発生した(Jernberg et al., 2015)一方で,42%の心筋梗塞患者は自分の病気は治癒したと思っており,健康管理に注意を払っていなかったという報告がある(Campbell & Torrance, 2005).これらのことから,外来通院中の心筋梗塞患者に継続的にセルフケア教育ができることが望ましいが,その実態は不明である.

現在,日本では循環器看護のスペシャリストとして慢性疾患看護専門看護師(慢性CNS)・慢性心不全看護認定看護師(CHFCN)が臨床で働いている.心不全患者が増加しつつある現在,増加を食い止めるために予防ケアは欠かすことができず,彼らは心筋梗塞患者へのセルフケア教育を促進させるために必要不可欠である.スペシャリストは病院横断的に看護実践を行うことを期待されており,まずは彼らの外来でのセルフケア教育の実態を明らかにする必要がある.そこで,循環器看護のスペシャリストによる心不全発症前の心筋梗塞患者へのセルフケア教育実践の実態を明らかにし,セルフケア教育の実践に関連する因子を明らかにすることで,今後の心筋梗塞患者の二次予防・心不全予防への示唆が得られるのではないかと考えた.

Ⅱ. 目的

本研究では,全国の循環器看護のスペシャリストを対象に,①心筋梗塞患者への外来でのセルフケア教育の重要度の認識と看護実践の有無と程度の実態を明らかにすること,②心筋梗塞患者に対する外来でのセルフケア教育の実践の有無に関連する因子を明らかにすること,③心筋梗塞患者に対する外来でのセルフケア教育の実践の程度に関連する因子を明らかにすることを目的とした.

Ⅲ. 方法

1. 対象と調査方法

全国の循環器看護のスペシャリストとして,慢性CNSとCHFCNを対象とした.CHFCNは,日本看護協会でCHFCNの資格を取得し,協会のホームページで情報公開している357名を対象とした.慢性CNSは,日本看護協会で慢性CNSの資格を取得し,情報公開している116名のうち,循環器をサブスペシャリティとしている22名を対象とした.合計でCHFCN 357名と慢性CNS 22名の379名であった.除外基準は,調査票の研究参加同意欄にチェックのない者,患者ケアに携わっていない可能性がある管理職の者(看護師長,看護部所属の者)とした.

研究デザインは無記名自記式質問紙を用いた横断的観察研究であり,データ収集期間は2021年9月3日~10月31日だった.研究説明書,調査票および返信用封筒を対象者宛てに郵送した.研究参加に同意した対象者には調査票に必要事項を記入し,無記名のまま返信用封筒に入れ投函してもらった.

2. 調査項目

1) 個人属性,所属施設

個人属性として,年齢,性別,看護師経験年数,資格取得後経験年数,資格の種類(慢性CNS,CHFCN),役職(スタッフ,主任・副看護師長),最終学歴(専門・短大,学士以上),所属部署について情報収集した.所属施設の情報として,所属施設の機能(高度急性期病院,急性期病院,慢性期病院,クリニック,訪問看護ステーション),病床数,外来心リハの有無,入院心リハの有無を調査した.

菊池は,専門看護師の自立性は経験年数により差があり(菊池,2013),職位が影響を及ぼす(菊池,2014)と報告している.スペシャリストとしての実践に影響があると考え,看護師経験や役職を調査した.また,数間ら(2003b)は,外来での患者相談・指導の実施に最も関連が強かったのは1日平均外来患者数であったと報告していたため,所属施設の詳細を調査項目とした.そして,心筋梗塞患者の心リハはセルフケア教育と運動療法によるエビデンスが蓄積されており(Taylor et al., 2004),施設における心リハの有無が,外来でのセルフケア教育の実践と関連があるかを調査する必要があり調査項目とした.

2) 外来でのセルフケア教育における労働環境

外来での労働環境として,セルフケア教育のための個室の有無,多職種での症例カンファレンスの有無,スペシャリストとしての外来での活動時間の有無を調査した.

数間ら(2003a)の研究において,外来で患者相談・指導を実施していない理由として上位であり,かつ今回の研究に関連がある,個室の有無・活動時間の有無を調査した.症例カンファレンスの有無については,多職種連携の一環として調査項目とした.

3) 協力体制

協力体制の調査については,心不全患者のセルフケア教育には多職種介入が有効とされている(Kinugasa et al., 2014)ことから,心筋梗塞患者のセルフケア教育に影響を与える項目であると考え調査項目とした.職種の選定においてはガイドライン(日本循環器学会,2018)を参考にした.また,日本看護協会(2013, 2020)の報告では,困難が生じた際に相談する相手として,専門看護師は上司が最も多くなっていた.そのため,上司の協力体制を調査項目とした.認定看護師は,同分野の認定看護師に相談することが多いとの報告から,施設における循環器看護のスペシャリストの人数を調査した.

心筋梗塞患者への介入において,他職種(医師・理学療法士・栄養士・薬剤師・心理士・医療ソーシャルワーカー),および,上司との協力体制がとれているかを4段階で評価した.項目は,「1.全く協力していない」から「4.いつも協力している」の4段階とした.「1.全く協力していない」「2.ほとんど協力していない」と答えたものを協力体制が低いとし,「3.たまに協力している」「4.いつも協力している」と答えたものを協力体制が高いとした.

4) セルフケア教育の重要度の認識

セルフケア教育項目は,心臓リハビリテーション標準プログラム(日本心臓リハビリテーション学会,2013)の必須到達目標から抽出して作成した.セルフケア項目は,「目標降圧レベルを長期間にわたり維持できるよう介入する」などの全17項目とした.セルフケア項目に対して,「1.全く重要だと思わない」から「4.非常に重要だと思う」の4段階評価とし,1から4点に点数化した.重要度の認識の総合得点は17のセルフケア項目の合計得点とした.

小倉ら(2009)の研究によると,患者指導に対する重要性の認識が高まるほど,考えていることが行動化されることが示されている.セルフケア教育の重要度の認識が実践に関連すると考え調査項目とした.

5) セルフケア教育の実践の有無と実践の程度

調査用紙配布時より以前の,外来通院中の心筋梗塞患者に対するセルフケア教育の実践経験の有無について,「あり」「なし」の2項目で質問した.

セルフケア教育の実践の程度については,4)で作成したセルフケア教育項目を使用した.セルフケア項目に対して,「1.全く実践していない」から「4.いつも実践している」の4段階評価とし,1から4点に点数化した.セルフケア教育の実践の程度は17のセルフケア項目の合計得点とした.

3. 解析方法

セルフケア教育の実践の有無に関連する因子を明らかにするため,個人属性・施設属性・セルフケアの重要度の認識との関連を二変量解析で検討した.次に,セルフケア教育の実践の有無との関連がp < 0.25の変数を独立変数とし,多重ロジスティック回帰分析を行った.そして,HosmerとLemeshowの検定にて適合度を確認した.

セルフケア教育の実践の程度に関連する因子を明らかにするため,個人属性・施設属性・労働環境・協力体制・セルフケアの重要度の認識との関連をSpearmanの順位相関係数にて検討した.セルフケア教育の実践の程度との関連がp < 0.25の変数を独立変数として採用し,重回帰分析を行った.また,多重共線性がないことを確認するために,分散拡大係数(VIF)が2以下であることを確認した.

解析ソフトはSPSS Ver28(IBM)を使用し,有意水準は5%とした.

4. 倫理的配慮

本研究は,名古屋大学保健学科倫理審査委員会の承認を得た上で実施した(承認番号21-114).質問紙への回答は任意であり,その旨を文書にて説明した.回収した質問紙のうち,研究の同意欄にチェックが入っていたもののみを分析対象とした.

Ⅳ. 結果

1. 個人属性・所属施設および労働環境とセルフケア教育の実践の有無

全国のCHFCNと循環器をサブスペシャリティとする慢性CNS 379名に調査用紙を郵送し,170名(回収率44.8%)より回答を得た.除外基準に当てはまった21名(管理職の者17名,データ欠損4名)を除き,149名(有効回答率39.3%)を分析対象とした.対象者の平均年齢は41.7 ± 5.6歳,資格取得後の経験年数の平均は5.3 ± 2.5年であった.高度急性期・急性期病院に属するものは140名(96.5%),外来心リハがある施設に属していたのは92名(62.2%),入院関連の部署に所属している者が111名(77.6%)であった.入院関連の部署に所属している者の所属先は,自由記載のため欠損値42名と多かったが,回答のあった69名のうち循環器センター・循環器内科病棟・心臓外科病棟が57名(82.6%)を占めていた.セルフケア教育の実践経験がある者が88名(59.0%),ない者が61名(41.0%)であった(表1).

表1 

対象者および対象者の所属施設の概要(N = 149)

年齢(歳)(n = 146) 41.7 ± 5.6
性別 男性 26(17.4)
女性 123(82.6)
看護師経験年数(n = 148) 19.2 ± 5.7
資格取得後経験年数(n = 146) 5.3 ± 2.5
資格の種類 慢性疾患看護専門看護師 9(6.0)
慢性心不全看護認定看護師 140(94.0)
役職 スタッフ 94(63.1)
副看護師長・主任 55(36.9)
最終学歴 専門・短大 102(68.5)
学士以上 46(30.8)
その他 1(0.7)
病床数(n = 147) 入院施設なし 5(3.4)
100床未満 3(2.0)
100~300床 23(15.6)
301~500床 39(26.5)
501~800床 54(36.7)
801床以上 23(15.6)
所属施設(n = 145) 高度急性期病院 65(44.8)
急性期病院 75(51.7)
慢性期病院 1(0.7)
クリニック 2(1.4)
訪問看護ステーション 2(1.4)
外来通院型心リハ(n = 148) あり 92(62.2)
なし 56(37.8)
入院心リハ(n = 148) あり 134(90.5)
なし 14(9.5)
所属部署(n = 143) 外来関連 32(22.4)
入院関連 111(77.6)
セルフケア教育の実践 あり 88(59.0)
なし 61(41.0)

度数(%) 平均年数±標準偏差

セルフケア教育の実践経験がある者のうち,セルフケア教育のための個室がある者が34名(38.6%),外来患者に対応するための活動時間が確保されている者が36名(40.9%),多職種との症例カンファレンスを実施している者が57名(64.8%)であった(表2).

表2 

外来でのセルフケア教育における労働環境(N = 88)

度数(%)
セルフケア教育のための個室 あり 34(38.6)
なし 54(61.4)
スペシャリストとして外来患者に対応可能な活動時間 あり 36(40.9)
なし 52(59.1)
多職種との症例カンファレンス あり 57(64.8)
なし 31(35.2)

2. 心筋梗塞患者へのセルフケア項目ごとの教育の実践度と重要度の認識

セルフケア教育の実践度は,17のセルフケア項目全てにおいて約半数の看護師(43~57.3%)が「全く実践していない」と返答していた.「いつも実践している」,「概ね実践している」,「少し実践している」と回答した看護師の割合が多かった項目は,「減塩の重要性の理解と関心の促進」(85名,57.0%),「体重管理に必要なライフスタイルの改善」(85名,57.0%)であった(図1).

図1 

循環器看護スペシャリストによる心筋梗塞患者へのセルフケア項目ごとの教育の実践度

セルフケア教育の重要度の認識については,95%以上の看護師が17項目全てにおいて,「非常に重要だと思う」または「かなり重要だと思う」と返答していた.

3. 心筋梗塞患者へのセルフケア教育の実践の有無と関連する要因

セルフケア教育の実践の有無と各項目を二変量解析で検討した.p < 0.25だった項目は,資格取得後経験年数,最終学歴,所属施設,所属部署,外来心リハの有無であった.所属施設については,クリニック・訪問看護所属の人数が少ないことから比較が困難であり変数から除外した.最終的に,資格取得後経験年数,最終学歴,所属部署,外来心リハの有無の4項目を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行った.その結果,セルフケア教育を実践していることと,外来関連の部署に所属していること(β = –3.791, p < .001),外来心リハを実施している施設であること(β = 1.106, p = .009)に有意な関連が見られた.(表3

表3 

セルフケア教育の実践を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析(N = 149)

β OR 95%CI p
資格取得後経験年数 0.146 1.157 0.982~1.363 .081
所属部署(0:外来関連 1:入院関連) –3.791 0.023 0.003~0.185 <.001*
最終学歴(0:専門・短大 1:学士以上) 0.706 2.025 0.838~4.896 .117
外来心リハ(0:なし 1:あり) 1.106 3.023 1.320~6.924 .009*

β:標準回帰係数 * p:有意確率(両側)<.05

HosmerとLemeshowの検定:p = .26

4. 心筋梗塞患者へのセルフケア教育の実践の程度と関連する要因

セルフケア教育の実践の程度と各項目をSpearmanの順位相関係数にて検討した.p < .25だった項目は,最終学歴,外来心リハの有無,重要度の認識 総合点,個室の有無,活動時間の有無,医師・理学療法士・栄養士・薬剤師との協力体制であった.最終学歴は調整因子として採用し,全8項目を独立変数とした.重回帰分析を行った結果,セルフケア教育の重要度の認識 総合得点が高いこと(p = .005),医師との協力体制が高いこと(p < .001),栄養士との協力体制が高いこと(p = .024)が有意に実践の程度が高いことと関連していた(表4).

表4 

セルフケア教育の実践の程度を従属変数とした重回帰分析(N = 88)

β p VIF
【個人属性・所属施設】
最終学歴(専門・短大=0 学士以上=1) .271 .009* 1.183
外来心リハ(無=0 有=1) .194 .073 1.327
【セルフケア教育の重要度の認識】
認識 総合得点 .284 .005* 1.129
【労働環境】
セルフケア教育のための個室(無=0 有=1) .047 .660 1.324
外来患者に対応可能な活動時間(無=0有=1) .111 .290 1.267
【協力体制】
協力体制 医師(低い=0 高い=1) .381 <.001* 1.355
協力体制 理学療法士(低い=0 高い=1) –.199 .109 1.748
協力体制 栄養士(低い=0 高い=1) .263 .024* 1.523
協力体制 薬剤師(低い=0 高い=1) .113 .240 1.476
調整済みR2 .320

β:標準回帰係数 * p:有意確率(両側)<.05

Ⅴ. 考察

1. 対象者の属性・所属施設・所属部署・労働環境の特徴

循環器看護のスペシャリストが所属している施設は,96.5%が高度急性期・急性期病院であり,外来心リハ実施施設に所属する者は62.2%であった.設備の整っている施設で働いているスペシャリストが多い理由は,高度急性期・急性期病院の多くは規模が大きく,資格を取るための制度が整っていることが一因である可能性が考えられた.

入院関連の部署に所属している者が111名(74.5%)であり,循環器内科や心臓外科を中心とした循環器疾患に関連した病棟に所属していた.病棟では専門的治療を受ける患者が多く,循環器のスペシャリストとしての技術や,スタッフへの専門的知識や技術の教育が期待されている可能性が考えられた.

2. 心筋梗塞患者へのセルフケア教育の実践度と重要度の認識

スペシャリストのうち,心筋梗塞患者への外来でのセルフケア教育の実践経験がある者は59%であり,セルフケア項目ごとの実践度は約半数であった.先行研究では,ほとんどが心不全悪化予防のためのセルフケア教育を取り扱っており,心不全になる前のリスクのある患者を対象とした,外来で予防的に看護師がセルフケア教育を行うことについての研究はみあたらなかった.そのため,心不全リスク患者への関心は低く,セルフケア教育はほとんど実践されていないと推測していた.ところが本研究の結果,臨床においてスペシャリストの約6割が心筋梗塞患者に教育介入を行った経験があることが初めて明らかになった.

専門看護師・認定看護師は,看護職等に対してコンサルテーションを行うという役割があり,コンサルテーションにより所属部署に関わらず患者に対応する機会を持つことができる.病棟所属のスペシャリストが約77%であったことから,所属部署に関わらず,コンサルテーションにより病院横断的な活動をしているスペシャリストがいたと考えられる.一方で,約4割のスペシャリストが外来での心筋梗塞患者へのセルフケア教育を実践していない実態が明らかとなった.日本では,これらの活動に特別な診療報酬の加算はなく,病院として積極的にスペシャリストを外来に派遣するメリットがないため,スペシャリストとしての活動が限られ実践度が低くなっている可能性も考えられる.

セルフケア教育の重要度の認識は非常に高いことが示された.心筋梗塞患者の多くは心臓カテーテル治療など高度な治療を受け,退院後は主にクリニックなどで定期診察をし,治療施設では定期的な治療箇所のチェックをするのみであることが多い.本研究の結果,スペシャリストは高度急性期・急性期病院に多く,クリニックなどにいるスペシャリストは限られていた.心不全発症予防を考えると,初期治療を実施した施設でのセルフケア教育の導入と外来での継続的な介入の重要性は高い.しかし,スペシャリストの多くが外来でのセルフケア教育の重要性を認識しているにも関わらず,定期診察の場で専門的なセルフケア教育が提供できる環境が整っていない現状が明らかとなった.

心筋梗塞は心血管イベント発生率が高く,心筋へのダメージが強い場合には心不全発症のリスクがあり,転帰の良い疾患とは言えない.そのため,本来であれば対象者全員に対してセルフケア教育を行うことが望ましい.しかし,外来で看護師が行う教育により得られる診療報酬加算は在宅療養指導料のみで,人的資源・場所・時間が確保できず,看護師の知識・技術不足により実践できていない現状がある(数間ら,2003a).今後は,ハイリスクな心筋梗塞患者をスクリーニングする方法や,看護師の知識・技術不足を補うための方法を検討する必要がある.

3. 心筋梗塞患者へのセルフケア教育の実践の有無と関連要因について

外来通院中の心筋梗塞患者にスペシャリストがセルフケア教育を実践していることと,外来心リハの実施施設であることに有意に関連があった.外来心リハにおける心筋梗塞患者への介入効果についてはエビデンスが構築されており,総死亡・心血管疾患死亡の有意な減少,総コレステロール・中性脂肪・収縮期血圧・喫煙率に有意な改善が認められている(Taylor et al., 2004).外来心リハでは長期予後の改善を共通目標としており,セルフケア教育への意識も高いことが推察される.外来心リハがあることで,スペシャリストがセルフケア教育を行う機会が増加する可能性がある.

また,スペシャリストがセルフケア教育を実践していることと,外来関連部門に所属していることに有意な関連があった.外来部門に所属することで外来通院中の心筋梗塞患者に接する機会が増え,セルフケア教育の実践が増えたことが考えられる.スペシャリストを外来に配置することで,患者のセルフケア教育の機会を増やすことができ,心不全発予防につながる可能性がある.先行研究において,看護師主導の介入により,心筋梗塞患者の喫煙率の減少,コレステロール値の改善,体脂肪の減少,運動量の増加などの効果が見られている(Jiang et al., 2020).したがって,看護師としての実践力のあるスペシャリストを外来に配置することで,セルフケア教育の実施割合が上昇し,多くの患者のQOL向上につながる可能性がある.

4. 心筋梗塞患者へのセルフケア教育の実践の程度と関連要因について

心筋梗塞患者へのセルフケア教育の実践の程度が高いことと,スペシャリストと医師・栄養士の協力体制があることが有意に関連していた.日本では,外来心リハは最大150日間継続することができ,それ以降は心リハの効果が期待できる場合に延長が可能となっている.心筋梗塞患者に対しての疾病管理プログラムは各心リハで作成されており,外来心リハが終了した後の維持期においては医師による定期チェックのみになることが多いのが現状である.

スペシャリストと医師との協力体制があることでセルフケア実践の程度が上がると考えられるものとして,例えば,血圧のセルフケア教育の実践により,患者が血圧のセルフモニタリングができるようになれば,必要に応じて薬物療法の導入につなげられることなどがあげられる.先行研究では,心筋梗塞患者への医師と看護師の連携による薬物療法の最適化により脂質のデータが改善したとの報告がある(Ruiz-Bustillo et al., 2019).医師との協力により,薬物療法も含めたテーラーメイドなセルフケア教育が可能となり,セルフケア教育の実践度の向上,つまりセルフケア教育の質の向上につながる可能性がある.

また,虚血性心疾患のリスク因子は生活習慣と深く関わっている.食生活は生活習慣の一つであり,塩分や脂質制限,体重管理など,食生活の制限が必要な患者が多くいる.食生活教育のスペシャリストである栄養士による介入を望んでいるスペシャリストは多く,協力体制があることでセルフケア教育が実践しやすくなり,かつ教育の質の向上につながると考えられる.

心不全患者においては,入院中の心不全患者に対し教育的介入を行う職種が増えるほど,全死亡・心不全再入院が減少することが報告されている(Kinugasa et al., 2014).心筋梗塞患者は心不全患者とは重症度が違うため,スペシャリストが患者介入に必要だと考えている職種も異なる可能性がある.本研究では,特に重要と思われる職種に絞り,一職種ずつ検討したが,今後どのような職種との協力体制が必要なのか研究していく必要がある.

外来通院中の心筋梗塞患者へのセルフケア教育の重要度の認識が高いことと,セルフケア教育の実践度が高いことに有意な関連が見られたことについては,元々スペシャリストの重要度の認識が十分に高かったことから,本研究の結果からは他職種との協力体制の構築が重要であると考えられた.

5. 研究の限界

対象者の所属施設は,外来心リハを実施している施設が多かった(62.2%).これは日本の42%という普及率と比較して高いため,セルフケア教育の実践の程度が高い対象者からの回答が多かった可能性がある.また,本研究は情報公開しているスペシャリストのみを対象としており,集団に偏りがある可能性がある.また,セルフケア教育実践率や関連因子については先行研究がないことから,本研究ではまず,臨床で最も上記セルフケア教育に携わっていると考えられる専門的な看護師を対象に調査を実施した.そのため,専門的な看護師ならではの特徴を見出すことはできなかった.したがって,今後は一般の看護師や他職種などスペシャリスト以外を対象にした研究を進めていく必要がある.

本研究で使用したセルフケア教育項目および評価点は自作であり,評価尺度としての信頼性・妥当性が十分とはいえず結果の解釈には注意を要する.今後,心筋梗塞患者に必要なセルフケア教育項目を精選し,セルフケア教育評価尺度を開発する必要がある.

6. 看護実践への示唆

本研究の結果から,約4割のスペシャリストが外来通院中の心筋梗塞患者へのセルフケア教育を実践したことがないことが明らかとなった.実践環境としての外来心リハの増設およびスペシャリストの外来への配置が,セルフケア教育の実践の増加につながる可能性がある.外来心リハが設置できない施設においては,スペシャリストを外来に配置することがセルフケア教育の実践につながる可能性がある.また,実践の質の向上には,医師や栄養士との協力体制の構築が有効である可能性がある.スペシャリストが外来通院中の心筋梗塞患者へのセルフケア教育を積極的に実施し,医師・栄養士と協働していくことが心不全発症予防に効果的である可能性がある.

Ⅵ. 結論

全国の循環器看護のスペシャリストに,外来通院中の心筋梗塞患者に対するセルフケア教育について調査を行った.セルフケア教育の実践経験がある者は59%であった.心筋梗塞患者のセルフケア教育を実践していることは,外来心リハがあること,スペシャリストが外来関連の部署へ配置されていることと有意に関連していた.心筋梗塞患者のセルフケア教育の実践の程度が高いことは,セルフケア教育の重要性の認識が高いこと,医師・栄養士との協力体制があることと関連していた.

付記:本研究は,名古屋大学大学院医学系研究科に提出した修士論文に加筆・修正を加えたものである.本稿の一部は,第24回日本看護医療学会において口頭発表した.

謝辞:本研究の調査にご協力くださった,慢性心不全看護認定看護師・慢性疾患看護専門看護師の皆様に深く御礼申し上げます.また,折に触れ指導を賜りました本田育美教授,中西啓介講師に心より感謝申し上げます.なお,本研究は,日本看護医療学会第14回研究助成を受けて実施しました.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:ANは研究の着想,デザイン,データ収集,分析,解釈,原稿の作成を行った.KTはプロセス全体への助言,分析,解釈を行った.すべての著者は最終原稿を読み,承認した.

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